キャリアのAndroidスマホが「ストレージ128GB」に固定されがちな理由(1/2 ページ)

» 2026年01月15日 06時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 通信キャリア(MNO)から販売されるAndroidスマートフォンは、ストレージ容量が「1択」しか用意されていないケースが多い。特にミッドレンジ帯では顕著で、128GBを超えるストレージを選べるモデルはほとんど見ない。

 一方で、iPhoneやPixelは128GB、256GB、512GBなど複数の容量を幅広く展開している。では、この“容量の選択肢格差”はどこから生まれるのか。背景には、キャリア特有の事情とユーザー需要のギャップが存在する。

 本稿では「AQUOS sense10」(2025年11月発売)を例に、キャリアスマホが128GBから抜け出せない理由を解説する。

キャリアの要望でミッドレンジは128GBが主流に

 キャリアモデルで128GB構成が主流になった理由には、キャリア側の強い要望がある。AQUOS sense10は、まさにその好例といえる。

 同機種の基本構成はメモリ8GB、ストレージ256GBだが、ドコモ、au、ソフトバンクが販売するモデルはメモリ6GB、ストレージ128GBとなっている。シャープによると、6GB+128GBの構成としたのは、キャリアの要望によるものだという。台湾などの海外では256GBモデルのみの地域が多いため、128GBモデルは明確に、日本キャリア向けのローカライズといえる。

 シャープ直販や楽天モバイル、IIJmioなどの販路では、8GB+256GBモデルを扱っている。楽天モバイルはミッドレンジの「Nothing Phone (3a)」も128GBと256GBの2モデルを扱っており、キャリアの中では1機種あたりのストレージの選択肢が充実している。

AQUOS sense10 AQUOS sense10は128GBと256GBのストレージを用意しているが、販路によっては128GBモデルしか購入できない

 さらに不可解なのが価格設定だ。ドコモとauの128GBモデルは7万円以上、ソフトバンクも6万9840円に設定されている。これはシャープ直販の256GBモデル(6万9300円)と同等か、むしろ高価だ。その分、端末の残価を高く設定して実質負担額を安くすることで、端末や回線を一定期間使ってほしいというキャリアの思惑が透けて見える。

 ミッドレンジ機は本来「低価格で十分な性能」が求められる領域だ。ストレージは増やせば増やすほど原価が上がるため、最も売れやすく、コストも抑えられる128GBが最適解とされる構造が出来上がっている。

マルチストレージ化はキャリアにとっては在庫リスクに

 しかし、今のユーザーにとって128GBの容量は必ずしも最適解ではない。6万〜7万円を支払う機種に対して「256GBが選べればよかった」「動画撮影やゲーム用には128GBでは足りない」「欲しい色が大容量モデルに設定されていない」といった意見が出ることもある。

 実際、ミッドレンジでも256GBの機種はモトローラやXiaomiなどのメーカーから登場しており、XiaomiのPOCOのように5万円台で512GBを選択できる例もある。

 そのような状況にもかかわらず、キャリアで容量の選択肢はほぼ増えない。その理由は、SKU(在庫管理の単位)を増やすことが、キャリアにとって最大のリスクになるからだ。

 キャリアの主軸はあくまで回線契約であり、端末販売は在庫を抱えた瞬間に赤字リスクが生まれる。キャリアでGalaxyの大容量モデルをオンライン限定としているのはその典型で、店頭在庫を持たないための施策となる。

 例えば、容量や色を増やすと、同じ機種でも多くのSKUを抱えることになる。例えば以下のパターンの場合、ストレージ容量やカラーごとに8つの種類が存在することになる。

  • 128GB:白、黒、青
  • 256GB:白、黒、青
  • 512GB:白、黒

 このように、複数のパターンを用意すると、同じ機種でも複数の在庫を抱える必要がある。すると当然、売れない構成が残ることが考えられる。キャリアのスマホに奇抜なカラーが少ない理由もこのような「偏り」を極力避けるためであり、ブラックやホワイト、グレーなどの無難な色が好まれる傾向にある。

AQUOS sense10 AQUOS sense10は6色で展開している。ドコモでも全色取り扱うが、ドコモショップや量販店などでの販売は3色に限られる

 そして、総務省の端末値引き規制の上限金額の設定もあり、以前のように大きな値引きを入れたり、定価を引き下げて売ったりすることもできない。売れない構成を抱えても値引きができないことも、キャリアが複数ストレージを採用したくない背景と考える。

 SKUが増えると、モックなどの店頭販促品の準備の他、店頭スタッフへの指導、在庫管理をはじめ、店舗での負担が増えることにもつながる。

 ストレージ容量が複数ある機種なら、構成ごとに価格も変わり、それに応じて毎月支払う金額や適用できる割引が変わってくることになる。この情報を新機種が出るたび、端末の価格改訂があるたびに店頭スタッフに周知していくのはかなり大変だ。

 128GBの単一構成なら、この手間はかなり削減される。販促品もオンライン専売構成分は店頭には不要となるため、店舗コストや周知コストの削減になる。

 一方、iPhoneは初期から複数のストレージを設けるスタイルを貫いており、キャリア側もiPhoneだけは別扱いで対応している。iPhoneに関しては、既存のキャリア向けAndroidスマホと販売構造が根本的に異なるわけだ。 

 PixelやGalaxyのハイエンドモデルは、一部機種がキャリアでも複数のストレージを選べるようになったが、iPhoneほど「店頭でも買える」状況は至っていない。このあたりは、在庫リスクやキャリアの方針による差があるものとみられる。

 それでも、iPhone Proシリーズの1TBといった大容量モデル、Pixel Foldなどの高額な端末は、リスクから店頭に在庫は置かず、取り寄せ対応を取る例も珍しくない。

iPhone iPhoneは発売当初から全ストレージを店頭で販売し、等しく値下げすることが多い
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年