スマホカメラは「スペック」から「体験」へ 外付けレンズやブランド協業に活路を見いだす中国メーカー(2/2 ページ)

» 2026年05月07日 10時46分 公開
[佐藤颯ITmedia]
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撮影体験の差別化で工夫を凝らす中堅勢にも注目

 一方で、中小メーカーの動きも面白い。ミッドレンジ帯を主戦場とするTECNOは、新機種の「CAMON 50 Ultra 5G」を引っ提げてMWCに乗り込んできた。評価機関のDXOMARKの協力を仰ぎ(※)、600ドル以下のスマートフォンとして最高スコアとなる146点を獲得。コスパ路線でも画質を追求していることを示した。

 TECNOは撮影体験の向上に際し、カメラ性能を点数化し、ベンチマーク結果として公表するDXOMARKの協力を仰いだ。発表の場には同社CEO Frederic GUICHARD氏が登壇し、CAMON 50シリーズの画像処理で重視したポイントを説明した。

※DXOMARKではベンチマークによる定量評価だけでなく、カメラ性能や撮影体験向上を目的としたコンサル業務も実施している。

CAMON 50 Ultra CAMON 50 Ultraはミッドレンジのスマートフォン

 AI Auto ZoomをはじめとするAI技術をソフトウェア面で磨き上げ、ハードウェアの限界をカバーする発想は、コストの制約でハードウェアの強化が難しいことを踏まえると、理にかなっている。

 その一方で、画像処理のノウハウで他社に劣る部分を、外部の評価機関から助言を得て改善させることは、ユーザー体験向上の近道ではあるものの、自社ブランディングを向上させる点ではマイナスに働くだろう。直近2世代で外部機関の協力を受けたので、そろそろ自社ブランディングやカメラブランドとの共創にも力を入れてほしいところだ。

DXO 発表会で登壇したDXO MARK CEO Frederic GUICHARD氏。CAMON 50 Ultraは色表現でiPhone 17 Proよりも優れるとした

 また、TECNOでは磁力で最大10種類のモジュールを取り付けられるモジュール式スマートフォンのコンセプトも展示。3つ折りスマホや薄型スマホなどのコンセプトも多く展示するなど、将来への技術投資の姿勢はしかと感じられた。

モジュール式スマホ ブース内に展示してあったモジュール式のスマホのコンセプトには、スチルカメラのような見た目のモジュールも用意されていた

 さらにユニークな存在だったのがUlefoneだ。上位ブランドRugOneの新機種「Xsnap 7 Pro」は、Insta360 GOシリーズにインスパイアされた、取り外し可能なアクションカメラモジュールを内蔵した世界初のスマートフォンとして注目を集めた。

 取り外したカメラはWi-Fi通信にて動作する。ヘルメットや自転車に取り付けて単体撮影ができ、本体に戻すと充電しながら撮影した映像の転送もできる仕組みだ。大手とは全く異なる路線で高付加価値を狙う姿勢に、したたかな生存戦略を感じた。

Xsnap 7 Pro カメラがスマートフォン本体から物理的に分離するXsnap 7 Pro

 この他にもLAGINIOからは「アクションカメラ」にスマートフォンの機能を組み込んだ「Eagle 1」という商品も登場。こちらはコンパクトな本体に三脚用のネジ穴を用意するなど、スマートフォンよりもカメラに近い使い方を想定している。

 メーカーもあくまでスマートフォンよりは「5G通信機能を備えたアクションカメラ」という立ち位置で、既存のスマートフォンとの2台持ちなども視野に入れているとした。

LAGINO Eagle 1 LAGINIO Eagle 1はアクションカメラの要素を備える個性的なスマートフォンだ

カメラの性能だけでなく「撮影体験」を重視した製品が主流になるか

 現地を歩いて感じたのは、カメラを巡る競争が「カタログの数値」から「撮影体験」へと明確に移行しつつある、ということだ。Xiaomiにはライカ、vivoにはZeiss、OPPOにはハッセルブラッドという具合に、大手各社がカメラの名門ブランドと組み、単なるスペックではなく「このメーカーで撮ると、こういう絵が出来上がる」というブランディングで撮影体験をアピールしていた。

 アクセサリーのエコシステム充実も大きな流れで、スマホが「カメラシステムの中核」として機能し始めている様子は、スチルカメラを使ってきた身としても新鮮だった。XiaomiのPhotography Kitというアプローチに始まり、今ではvivo、OPPO、Huawei、HONORもアクセサリーメーカーと提携してカメラグリップなどの製品を用意している。

 一方で、vivoやOPPOが注力する外付けのテレコンバーターレンズによる望遠性能向上は、スマートフォンで重要な可搬性とトレードオフの関係になる。画質はよくなっても、レンズが大きく持ち運びが面倒となれば、スマホカメラの最大の利点である「手軽さ」は失われる。

 スマートフォンの限界を拡張させるアイテムとして、望遠レンズを組み合わせるカメラのような体験は面白いが、恒常的なトレンドになるかどうかは今後の動向や消費者ニーズ次第になるかと考える。

 また、中堅メーカーはTECNOのようにAIを取り入れつつ、外部機関のアドバイスを受けて改善する、Ulefoneのように個性的なハードウェアで勝負するなど、大手勢とは異なる手法で撮影体験の向上を図った製品が印象的だった。

 スマホのカメラはもはや単なる記録ツールではない。各社がどんな「撮る体験」を届けようとしているのか。その問いへの答えが、これからの製品選びの軸になっていくのだろうと、肌身で感じた取材だった。

著者プロフィール

佐藤颯

生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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