「ANAモバイル」誕生の舞台裏 「マイル20%還元」に振り切った料金設計、自社MVNOにこだわった理由MVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2026年05月07日 12時11分 公開
[石野純也ITmedia]

 旅行や出張でフライトを利用する機会が多い人がこぞってためているのが、航空会社のマイレージだ。マイルはフライトの距離や運賃に応じて加算される他、クレジットカードの利用やショッピングモール利用などでも入手できる。そんなマイルが毎月の料金に応じてたまる、新たなMVNOが誕生した。全日本空輸(ANA)傘下のANA Xが手掛ける、「ANAモバイル」がそれだ。

 インパクトが大きいのは、その還元率の高さ。MVNOなので通信料は安いものの、基本料や音声通話オプションの料金に対して、20%ものマイルが加算される。料金プランもきめ細かで、1GBから100GBまで、全20プランを用意。最大の100GBプランを音声、SMS対応にすると、基本料だけで毎月1380マイルもたまる。1年で1万6560マイルたまるため、これだけでアジア圏への往復特典航空券も視野に入る。

ANAモバイル 新たなMVNOサービス「ANAモバイル」。基本料金や音声オプションなどの利用料金に対して20%のマイルを還元する

 ビジネス面では、先に参入した競合のJALモバイルがIIJのホワイトレーベルだったのに対し、ANAモバイルは自らがMVNOとしてサービスを提供している点が大きな特徴になる。とはいえ、ホワイトレーベルと比べると、技術的なハードルは一気に高まる。ANA Xは、なぜこの形態でMVNOに参入したのか。同社に、ANAモバイルを立ち上げた狙いやその経緯を聞いた。

 インタビューには、ANA Xのライフバリュー事業部 新規事業開発チーム リーダーの樋口義洋氏と、同部同チーム マネジャーの倉重千春氏、同部同チームの村瀬浩司氏、片野瑶子氏がこたえた。

MVNOになることで、全ての顧客体験を自社で構築できる

ANAモバイル 樋口義洋氏

―― まず、MVNO参入の経緯を教えてください。

樋口氏 通信サービスは、24時間つながっている究極の顧客接点です。飛行機にたくさん乗っている方でも、実際に乗っている時間は人生全体の中では1%未満といわれています。残りの99%以上の時間に、ANAグループとして価値を提供したいという思いがありました。ANA Xは、ANAモバイル以外にも「ANA Pocket」や「ANA Pay」「ANAでんき」「ANAガス」といった日常サービスを展開しています。その中でも24時間つながれるモバイルサービスは、究極の顧客接点と言えます。

―― タイミングとして、3月開始になった理由はありますか。

樋口氏 やはり、3月は新生活を迎えるにあたって需要が高まります。そのため、何とか3月には出したいという思いがありました。MVNOに参入しているので、システムからお客さまサービスの設計まで、あらゆるところをやっているので、サービス開始には時間がかかってしまいました。本当はもっと早くお客さまにお届けしたかったのですが、出したかった時期に出すことができました。

―― 99%を機会損失と捉えてそこで収益を出したいのか、1%のフライトをもっと増やすようにしたいのか、どちらの方がモチベーションとして強いのでしょうか。

樋口氏 後者の方が、より強いですね。航空サービスを磨き上げるのは当然ですが、さらに日常の中でも関わりを持つことで航空サービスを選んでいただけます。マイルがたまっているから、もしくはマイルをためたいからという理由で選んでいただけます。

―― ―そのマイルですが、大盤振る舞いぶりにビックリしました。これは期間限定のキャンペーンではないですよね。

樋口氏 これは、相当の顧客アンケートや顧客調査を分析した結果です。今回、MVNOになったのは、大きな判断だったと思っています。既存の通信サービスをANAモバイルと銘打って展開するホワイトレーベルも当然検討しましたが、サービス設計全体がその会社(ホワイトレーベル提供元)のものになってしまう。これだと、目指す形ができませんでした。逆に、MVNOになることで全ての顧客体験をわれわれが構築できるようになりました。

 サービス構築には時間がかかりましたが、3月24日にリリースしてからは、「20%還元はすごい」「料金プランが豊富で助かる」「申し込みもスムーズで世界観やこだわりを感じる」「カスタマーサポートが丁寧で親切」と、目指していたことに対するお褒めの言葉をいただけています。

SIMカードのパッケージや郵便物にもANAの世界観を反映

―― ホワイトレーベルだと、ここまでプランや還元に自由度を出せなかったということでしょうか。

樋口氏 始めるにあたって、いろいろな事業者と協議はしましたが、ホワイトレーベルは基本的にその会社の料金プランになりますし、お客さまに届くSIMカードのパッケージも全てその会社のものになります。そういう意味だと、自由度はかなり低いですよね。

ANAモバイル
ANAモバイル 契約者に送付されるANAモバイルのパッケージ。これは自社でMVNOとして展開しているからこそ、できる取り組みだ

―― 逆に言えば、ANAモバイルはパッケージも含めて自社でやっているということですね。

片野氏 プロジェクトを進めるうえで大事にしたのは、お客さま視点です。かつ、ANAグループのサービスになるので、その世界観を忘れずにサービスを作っていきました。Webサイトの分かりやすさやデザイン性も、プロジェクトメンバーで話し合いながら、何がいいのかを決めていきました。

村瀬氏 郵便受けを開けたときに、青いANAの色が目立つ配色にしたというのが、1つの大きなこだわりです。

樋口氏 SIMカード自体は真っ白なMVNO用のものですが、お客さまにお届けする封筒や中に入れたご案内の紙は作っています。さらに今回はステッカーも入れさせていただきました。残念ながらeSIMのお客さまにはありませんが、物理SIMだとステッカーも一緒に届きます。Webもそうですし、ANAモバイルというロゴもこだわって作りました。

ANAモバイル 物理SIMの契約者には、オリジナルのステッカーも送付される

―― ロゴは、飛行機の窓がモチーフでしょうか。

片野氏 そうです。窓から見た水平線をデザインしています。

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