SNSを巧みに使いこなしている若者ですが、実はスマホやSNSに疲れています。若者マーケティングの研究機関「SHIBUYA109 lab.」が2026年3月に発表した「アテンション・デトックスに関する調査」では、15〜24歳の半数以上が「スマホ疲れ」を自覚していました。さらに、「SNSの利用時間を減らしたい」と答えた人は67.6%。約7割が、自分から「減らしたい」と言っているのです。
疲れの理由としては、「気付いたらSNSで時間が消えている(43.1%)」「寝る前にだらだら見ちゃうせいで寝不足になる(36.4%)」「スクロールすると新しい情報が次々に更新される(26.3%)」など、大人でも心当たりがあるような要因が挙げられています。
調査のインタビューには、「自分に悪い影響があると思っているのに、ずっと開いてしまう。そんな自分にイライラして、イライラすることに疲れる」という声もありました。「使っている」というより「使わされている」状況に本人たちも気付いているのです。
SHIBUYA109 lab.は、SNS利用には、3つの「アテンション(注目)」によるストレスがあると分析しています。投稿に対する周囲の反応を気にしてしまい、不安や劣等感を抱く「自分に対するアテンション」、友人とのメッセージのやりとりに反応し続けなければならず、面倒に感じる「人に対するアテンション」、スクロールするたびに自動的に入ってくるニュースや炎上投稿などに触れ、自己肯定感が下がる「情報に対するアテンション」です。こうしたストレスを軽減するために、散歩や読書をしたり、映画館に行ったりしてスマホを手放す時間を作り、「アテンションデトックス」を実践しているのだそうです。
高校生向けの「高校生新聞」でも、高校生記者がスマホ断ちを支援するアプリ「StayFree」や、ユニークな集中タイマーアプリ「スマホをやめれば魚が育つ」を紹介しています。テスト前で勉強しなければならないと分かっていても、ついスマホを触ってしまう習慣を断ち切りたいと思っていることがうかがえます。
このように「気付いたら時間が消えている」という現象は、若者の自制心が足りないから起きているわけではありません。アプリ側が、ユーザーをスマホから離れさせない設計にしているのです。
例えば、無限スクロールです。XやInstagram、TikTokのように、ページの終わりがなく、スクロールしていけば永遠に新しい投稿が出てくるこの仕組みは、「区切り」をあえて消すために作られています。本を読んでいれば章の終わりで一息つけますが、無限スクロールには終わりがありません。やめどきを設計によって奪っているわけです。
動画の自動再生も同じ思想です。一本見終わるとすぐに次が始まり、「もう一本だけ」が積み重なって時間が失われていきます。引っ張って更新する「プルトゥリフレッシュ」の動作が、スロットマシンのレバーになぞらえられるのも有名な話です。いつ、当たり(自分にとって興味のある)の投稿が出るか分からないからこそ、人は何度も引いてしまいます。
これらに共通するのは、エンゲージメント、つまり「滞在時間」を最大化するように設計されている点です。サービスの多くは広告で成り立っていますから、ユーザーが長くとどまるほど収益が上がります。そのため、「そろそろやめよう」と思わせない方向に、UIは日々チューニングされています。
そして、この設計の効果は年齢を問いません。寝る前にベッドでスマホを握ったまま気付けば1時間が経過していた、という経験は大人にもあるのではないでしょうか。
最近は世界で未成年者のSNS規制が進んでいますが、欧州連合(EU)の欧州委員会は、TikTokの無限スクロールや動画の自動再生といった「中毒性のある設計」がデジタルサービス法(DSA)に違反するとの暫定見解を公表しています。もしこうした動きが強まり、設計の変更が全ユーザーに対して行われれば、未成年者だけでなく、大人も救われる可能性があります。
とはいえ、この状況はしばらく続きそうです。まずは大人も若者に倣ってアテンションデトックスを試してみると、ストレス軽減につながるかもしれません。
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