「ユーザー体験を根本的に変える」――iOS向けの公式YouTubeアプリが登場
iPhoneとiPod touch向けのYouTube公式アプリが提供された。より使いやすいUIに変更したほか、アーティストの公式ミュージックビデオの視聴も可能になった。YouTubeの利用者のうち50%がモバイル端末から動画を視聴しているという日本では、さらなる利用シーンの拡大が期待される。
Googleが9月11日、iPhoneとiPod touch向けの公式YouTubeアプリをApp Storeで公開した。利用料金は無料。
YouTube公式アプリ(以下、公式アプリ)では、これまでAppleがiPhoneにプリインストールしていたYouTubeアプリ(以下、従来アプリ)と比べて、いくつかの機能向上が図られている。公式アプリを起動すると「ホームフィード」と呼ばれる画面が現れ、ここにおすすめの動画が表示される。画面左上の設定ボタンをタップするか、画面左端から右へスワイプすると、登録中のチャンネル一覧や、YouTube動画のカテゴリー一覧などが表示される。チャンネルの追加もここから行える。さらに、従来アプリでは対応していなかった、公式ミュージックビデオを視聴できるようになった。
検索方法も改善し、単語の入力中に、該当する動画やチャンネルの候補を提案してくれるようになった。例えば「ジョジョ」と入力すると「ジョジョの奇妙な冒険」「ジョジョ芸人」「ジョジョ立ち」といったキーワードが候補に出るので、1つのキーワードからさまざまな動画を探しやすくなった。動画の再生中にTwitter、Facebook、Google+に共有することも可能だ(従来アプリもTwitterへの投稿はできた)。
YouTube公式アプリはiPhoneとiPod touch向けだが、iPad向けに最適化したアプリもリリースする予定だ。公式アプリのダウンロードは以下から。
まもなく発表予定の新しい「iOS 6」では、従来のYouTubeアプリがプリインストールされなくなる見込み。「従来のYouTubeアプリはAppleが開発したもので、(AppleとGoogleが)5年の契約を結んでいた。(2012年は)契約が終了するタイミングでもあった」と、YouTube プロダクト アジア太平洋統括本部長のアダム・スミス氏は話す。今回の公式アプリは、iOS 6や新型iPhoneの登場を見据えての発表だと思われる。ただ、現在のところ公式アプリと従来アプリは共存し、どちらも利用できる。
日本では50%のYouTubeユーザーが携帯端末から利用している
公式アプリの発表に伴い、スミス氏が、モバイル環境におけるYouTubeの利用動向について説明した。
YouTubeのサービスが提供されたのは2005年だが、当時はデスクトップPC向けのビデオサービスという位置づけだった。「当時はビデオの解像度が240pと低かったが、ビデオを電話から見ることは簡単なことではなかった。携帯電話の画面も小さく、ネットワークも2Gか、せいぜい3Gだった。当時は動画を携帯電話からストリーミングするというのは、将来の夢のような話だった」とスミス氏は振り返る。
2007年からはiOSとAndroid向けアプリの提供を開始したほか、Googleはモバイルブラウザ向けのYouTubeサービス(http://m.youtube.com)を開発し、2008年から提供している。「2010年から提供しているHTML5を活用したサービスでは、高速体験をもたらし、多くの携帯電話のブラウザで一貫性(のあるUI)を実現している」(スミス氏)
スマートフォンが普及している現在は、「Android 4.0/4.1など高度なOSにより、デスクトップPCで楽しまれていたYouTubeの体験が、モバイル端末上で実現できるようになった。GALAXY NEXUSなどのスマートフォンでは720pの動画を視聴できる」とスミス氏は胸を張る。
GoogleはYouTube上で「TrueView」という広告モデルを提供しており、PCやAndroidアプリなどのほか、今回リリースされたiPhone向け公式アプリにも導入されている。TrueViewでは、動画再生前に広告が再生されるが、視聴者が見たくなければスキップできるのが特徴。スキップされた動画広告に対しては広告料金は発生しないので、広告主にとっては効果的に収益を上げられる。
2012年初めには、1日あたりのモバイル端末でのYouTube動画の視聴数が1日6億に達し、9月にはYouTubeのモバイルビューが1日あたり10億に達したという。スミス氏によると、世界では25%のユーザーがモバイル端末からYouTubeの動画を視聴しているそうだが、日本ではこの比率が約2倍の50%にも及ぶという。スミス氏は「日本では新しい製品を早いタイミングで取り入れるユーザーが多く、携帯電話の浸透も早かった。また日本人は外で過ごすことが多いので、時間をつぶすために動画を見る人も多かったのではないか」とみている。
YouTubeの動画はニュースのソースとして使われることも多いという。スミス氏は日本での例として、東日本大震災発生後に、震災や津波の様子を記録した動画が多数アップされたことを挙げ、「市民によるジャーナリズムが実現された」と説明。「モバイル機器で動画をアップできることで、視聴されるコンテンツの質が変わり、さらなる付加価値が生まれる」(同氏)
今回提供されたYouTube公式アプリについてスミス氏は、「iPhoneが2007年に発売されて以来、YouTubeのエンジニアが主導で開発した最初のiOS向けアプリ。ユーザー体験を根本的に変えるもの。ぜひ今日から使ってほしい」と話した。モバイル端末でもPC並みのユーザー体験を得られるようになったYouTube。同氏は「デバイスを問わず一貫的な体験ができること」を重要視するとともに、「モバイル環境でビデオを作成、視聴するというトレンドを、iOSがさらに加速すると考えている」と期待を寄せた。
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