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Google対Appleのモバイル広告戦争、夏の陣へ

» 2010年05月31日 16時21分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米Googleは5月27日(現地時間)、米モバイル広告ネットワーク企業AdMobの買収を完了し、スマートフォン用アプリケーション内に表示されるデジタル広告の分野でAppleと戦う態勢を整えた。

 検索エンジン大手のGoogleは、モバイルアプリケーション用のAdSenseを、AdMobのモバイル広告ソフトウェアに連係する作業を開始する考えだ。GoogleはAdMobの開発チームも手に入れる。Appleも同チームの技術力を高く評価し、AdMobに対して6億ドルの買収額を提示したことがあった。その後、Googleが7億5000万ドルを提示して同社を獲得したのだ。

 Googleが最も欲しがっていたのは、アプリケーション内広告の分野におけるAdMobの支配的地位だ。これらの広告は、米AppleのiPhone向けApp StoreやGoogleのAndroid Marketなどのオンラインストアからユーザーが購入・ダウンロードするアプリケーションの中で表示される。

 AdMobはiPhoneとAndroidアプリケーション向けに、インタラクティブ動画広告ユニット(機能)や拡張型リッチメディア広告など多数の広告ユニットを開発した。

 Appleも、これと同じ手法を自社のモバイル広告プラットフォーム「iAd」で採用する方針だ。Appleは、AdMobのライバル企業のQuattro Wirelessの買収に伴いiAdを構築した。

 Appleは、Googleが昨年11月にAdMobに買収を仕掛けたのを受け、今年1月にQuattroを獲得した。iAdは6月7日に、AppleのWorldwide Developers Conference(WWDC)で「iPhone 4.0」とともに披露される見込みだ。

 しかしGoogleも、アプリ内広告向けの新機能を開発中だ。Googleの技術担当副社長ビック・ガンドトラ氏は5月20日、「Google I/O」カンファレンスにおいて、モバイルアプリ内でAdSenseを動作させる開発者が「クリックツーコール」という広告形式を利用できるようにすると語った

 広告主はクリックツーコール広告を利用することにより、ユーザーの地域あるいは国の電話番号を広告文中に直接含めることができる。ユーザーは携帯電話上でこの電話番号をクリックするだけで、その企業に電話をかけることができる。

 Googleの製品管理担当副社長スーザン・ウォジスキ氏は「当社の顧客およびパートナーの戦略においてモバイル広告の比重が非常に高まっているのは明らかだ。今回の買収により、モバイル広告は当社のビジネスの中心部分となった」と語る。

 「われわれは競争が激しいこの分野への投資を続ける中で、当社の技術、リソース、ノウハウを、モバイルWebサイト上およびモバイルアプリケーション内の広告におけるAdMobの斬新なソリューションと結合するつもりだ」(同氏)

 5月初めの時点では、GoogleによるAdMobの買収を実現するのは容易ではないように思われた。米連邦取引委員会(FTC)が買収阻止に向けてGoogleを提訴する構えを示したからだ。この買収によってモバイル広告市場でGoogleの力が強くなり過ぎるのをFTCは懸念したのだ。

 だがFTCがGoogleの競合企業やモバイル広告プロバイダー各社から話を聞いたところ、この市場はまだ生まれたばかりで細分化されており、GoogleがAdMobを獲得したとしても支配者にはなれないという意見が大勢を占めた。その結果、FTCは5月21日に買収を承認した。

 Appleがこの夏、新型iPhone上のiAdを通じて広告配信を始めるのに伴い、モバイル広告市場におけるGoogleとAppleの戦いが本格的に始まることになりそうだ。Appleは一部のiAd広告の料金を100万ドルに設定するというニュースも伝えられている。

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