アニル・ダッシュ氏は、わたしにとってシェークスピアのようなブロガーだ。同氏の記事は面白くて有益で、示唆に満ちている。
ダッシュ氏は1990年代からブログをやっており、このインターネット新時代にあって同氏は時代を超越した16世紀の古典小説家のように思えてくる。少し大げさになってしまったが、いずれにせよ、わたしは同氏の「作品」が気に入っている。
わたしが前回、同氏の記事について論評したのはかなり前のことだが、米Facebookと同社のマーク・ザッカーバーグCEOに関する同氏の今日(9月13日)の記事は、ザック(ザッカーバーグ氏)と同社幹部が非常にごう慢になり、人々のプライバシーを軽視しているように思える理由を知りたがっている人には必読だ。
Facebookはこの3年間、同SNSの5億人余りのユーザーの間のつながりを積極的に公開することによって、多くのプライバシー擁護主義者と一部のユーザーに不快感を与えてきた。Beaconから始まったこの動きは、先月のFacebook Placesまで一貫して続いている。Facebookは「情報共有の過激派」の集団だとダッシュ氏は指摘する。
わたしの見るところでは、ユーザーのプライバシーに対する配慮の欠如の背景には、ザッカーバーグ氏の若さ、実務経験の不足、強欲さがあるようだ。ダッシュ氏が指摘したほかの理由が、New Yorkerの記事で紹介されている。
何不自由なく育ち、常に富と特権に囲まれ、ずっと成功してきた26歳の若者であれば当然、人に隠さなければならないような秘密は誰も持っていないはずだと思うだろう。
New Yorkerの記事をまだ全部読んでいないので、まだほかにも心理分析の手掛かりが記されているかもしれないが、ダッシュ氏の指摘のおかげで、わたしは新たな視点からザッカーバーグ氏を見ることができるようになった。
わたしはダッシュ氏が挙げた最高の境遇とは無縁の人間だ。母は元看護師のセラピスト、父はブルーカラーの労働者という中流階級の家庭で育った。
そんなわけで、人に知られると恥ずかしい秘密を持っている人々がいるという現実がザックとその仲間には見えないのだということに、わたしは思い至らなかった。
品行方正な人がまゆをひそめるような犯罪歴や職歴、病歴などは、誰しも人に知られたくないはずだ。
早い話、わたしは彼らの集団的無知に対して無知だったのだ。彼らの幼稚な考え方をザックの恵まれた生い立ちに結び付けることができなかった。
これはまさに社会文化的なジレンマではないだろうか。特権階級の家庭で育った人は大きな影響力を持った事業を築くかもしれないが、隠さなければならない秘密を持った人々を傷つける可能性があることを彼らがうっかりと見過ごすことは十分あり得る。
そんな映画を以前見たことがある。特権階級の人々が上流社会の立場と権力を利用して貧しい人々を虐げるという内容だ。とはいえ、これは人々を政治的にも経済的にもおとしめるというもので、やや極端な例えかもしれない。
Facebookは人々のデータを収集し、それを通貨として扱っている。通貨というのは、人々が“無料の”サービスを利用するのに支払う価格なのだ。
ユーザーのプライバシーに対するザッカーバーグ氏の無関心な態度は無知に起因するものであり、確かにそれは、悪意を持ったCEOがアイスクリームをあげるからと言って子どもをおびき寄せ、彼らの個人データを聞き出すという行為よりはましだ。
おっと、それは別の会社、米Googleのことだった。
GoogleにもFacebookと似たような話があった。Googleのエリック・シュミットCEOは、同社のデータ収集手法について質問されたとき、有名なせりふを吐いた。
他人に知られたくないようなことは、そもそもすべきではない。
ごう慢さに満ちたこのコメントは、Googleのごう慢な姿勢に対するマイク・エルガン氏の非難の炎に油を注ぐことになった。
GoogleとFacebookが互いに相手を倒そうとしているのも当然だ。両社は同じイデオロギーを抱いた企業なのだ。そして両社を率いているのは、人々のデータを収集することに血眼になっているリーダーだ。
両社は、われわれの個人データをビジネスの中心に据え、イノベーションという名の下でそのデータを繰り返し利用することによって繁栄を築いてきた。
わたし自身はプライバシーをあまり気にしない性格でよかったと思う。そうでなければ、中流階級の市民として怒りが収まらないことだろう。
そんなわけで、ダッシュ氏のようなメディア監視人たちがFacebookやGoogleについて、彼らの方針がイノベーションの名の下に人権に重大な影響を及ぼすだけでなく、彼らは人々に危害を与えようという意図なしにそうしているのだと指摘しているのには大賛成だ。
もし彼らが悪意を抱くようになったら、一体どうなるのだろうか。
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