赤色バージョン(AXシリーズ)と金色バージョン(Pシリーズ)の違いはアクティブPFC(Power Factor Correction=力率の改善)の有無である。今回使用した380ワットの電源で、アクティブPFC対応のAXシリーズは1万5000円前後の実売価格であるのに対し、アクティブPFCなしのPシリーズは1万2000円前後。アクティブPFCによって3000円ほどの価格差があることになる。
PFC回路が搭載されると、その名のとおり力率が改善されるので、無効電力が減って供給された電力を有効に使えるようになる。これがPFCのメリットである。PFC回路を搭載していない電源の力率が60〜70%だとすると、アクティブPFC回路を搭載した電源では95%以上になるというから、かなりの改善である。実際、赤いAXシリーズも99%という高い値を示している。
しかし、力率が改善されても、それがユーザーのメリットに繋がるかというと、かなり微妙なようである。というのも、電気料金の計算に使われるのは有効電力の積算なので、無効電力についてはことユーザーの観点からすれば関係ないからだ。また、今回はアクティブPFCなので関係ないが、ノンアクティブな(パッシブともいう)PFC回路では、ノイズの発生も見られるとのこと。
ただし、送電する側から、あるいはグローバルな視点から見れば、PFC回路を搭載していれば省エネに繋がることは確かである。このため、ヨーロッパではPFC回路を搭載していないと規制にひっかかる場合もあるようだ。
我々にとってPFC回路を搭載することのメリットを探すとすれば、電源が不安定な場合でも、安定した出力が得られると言うことがある。ただ、途上国のように数十パーセントの電圧変動が当たり前の国ならいざ知らず、かなり安定した商用電源が得られる我が国では、この点でも訴求力はいまひとつというのが正直なところだ。
このほかにもCoolergiantには面白い機能がいろいろある。
PCをシャットダウンしたあとにクールダウンのために動作を続けるスマートファン(SFMA)もそのひとつ。電源を切った段階で筐体内温度が40度以下であれば、その後2分間の排気を行ってから停止する。もしもケース内の温度がそれ以上あるならば、40度以下になるまで排気を続け、温度が下がってから2分間排気を続けて停止するというものである。
はじめは電源が落ちるかどうか不安だったが、慣れてしまえばなんてことはないし、安心である。ただ、今年の夏のように気温が40度を突破するような外気温になったらどういう動作をするのか、少しばかり興味深いところでもある。
Coolergiantシリーズは+12ボルトを独立した2系統で持っている。そのため、それぞれマザーボードとHDDの給電を別系統にすることができる。下表にあるように、+3.3ボルトと+5ボルトの合計は240ワットで、+12Vは合計で27アンペアある(ただし380ワットモデルの場合)。
また、外部電源コネクタを必要とするハイエンドグラフィックスカードへ安定した電力を供給するための拡張4ピンコネクタも設けられている。これらは、単なる周辺機器用のコネクタと間違えやすいが「EXTRA」と刻印してあるケーブルで、周辺機器用の系統とは別のケーブルから出ている。おそらく別系統と考えていいだろう。
+3.3V | +5V | +12V(第1系統) | +12V(第2系統) | −12V | +5Vsb |
0.5A/30A | 0.3A/32A | 0.5A/14A | 0.5A/13A | 0A/0.8A | 0A/2.5 |
電源はこだわりだすとキリがなくなる。私もムキになって静音タイプの電源を海外から取り寄せたりしたこともあったが、いろいろな種類の電源が店頭で安価に入手できるようになった昨今ではその必要もない。いい時代になったものだ。
PCを組み立てようとしたときに、どうしてもCPUやメモリを重視して電源の予算配分はおろそかになりがちだ。しかし、世代交代の激しいCPUやマザーボードよりも、電源は長いつきあいになることが多い。そう考えると、ケースにオマケで付いてくる電源ではなく、Coolergiantのような「ちゃんとした」電源を使ってみても悪くはないのではなかろうか。
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