前回「へクスとターンというボードの世界からウォーゲームに入ってきた私」は、国産PCウォーゲームに違和感を感じて海外PCウォーゲームにのめりこんだ、と書いてはいるのだが、そんな私が最初に入手した「PCウォーゲーム」は、バリバリのリアルタイムシステムを採用した「Harpoon」であった。Harpoonといえば、
「ヒゲの大佐」である。いや、艦船シミュレータなら主役は「艦長=Captain=海軍大佐」(潜水艦シムなら艦長=Commander=海軍中佐)であるが、作戦級というHarpoonのゲームスケールからすれば、主役は「司令官クラス=admiral(もしくはcommodore)=提督」である。きっと「ヒゲの彼」の階級もそうなのだろう。しかし、日本人ウォーゲーマーならば「ヒゲ」とくれば、これはもう「大佐」なのである。
……というような、たぶん一部のロートルウォーゲーマーにしか分かってもらえないエピソードはどうでもいい。1989年、日本が平成の世になって間もないころに、PC版Harpoonは登場した。「PC版」がある、ということは「ボード版」がある、というわけで、1981年に紙ベースのHarpoonが出版されている。
このHarpoonは1987年に(その業界では大手の)GDWからルール改定を経て出版され、日本でもホビージャパンが日本語版を発売した。「レットオクトーバーを追え」の作者、トム・クランシーが軍事設定の一次資料として利用し、そして「レッド・ストーム作戦発動」執筆のきっかけが、彼とこのゲームのデザイナーであるラリー・ボンドと行ったHarpoonのプレイであったことは、有名な逸話だ。
しかし、Harpoonはそういったエピソードを抜きにしても、そのユニークなデザインゆえに多くのゲーマーから注目されていた。GDWからHarpoonが出版された当時、現代海戦を扱ったゲームタイトルとしてSPI「TaskForce」とVictory Games「SIXTH FLEET」が知られていたが(S&T誌のSIXTH FLEETは一般的とはいえなかった)、これらは「ヘクスとターン」を採用し、艦船データを簡単な相対値に置き換えたユニットを用いる、オーソドックスなウォーゲームとしてデザインされていた。
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