では実際に稼働させ、交換前の状態であるリテールクーラー+静音電源と、冷却効果や動作音がどう違うかチェックしてみよう。本機設置前の構成を“A構成”、本機設置後の構成を“B構成”とする。
ちなみに“A構成”の電源は1、2年前に購入したTORICA「SEIII」で、超静音仕様を謳っていたものだ。ケースには背面のファン取り付け部と側面のパッシブダクトをガムテープで塞ぎ、基本的に排気は電源のファンだけ、吸気はケース前面と背面下部からのみ(背面下部を開けたのはTVキャプチャーカードの冷却を考慮して)に絞り込み、できるだけ前面から背面に綺麗に空気が流れ、音漏れも最小限で済むように簡単に加工してある。
騒音レベルと温度変化 | A構成 | B構成(本機搭載) | |
---|---|---|---|
騒音レベル | アイドリング時 | 42〜43デシベル | 45デシベル (+3デシベル) |
高負荷時 | 57〜58デシベル | 45〜46デシベル (−12デシベル) |
|
CPU温度 | アイドリング時 | 43度 | 33度 (−10度) |
高負荷時 | 58度 | 46度 (−12度) |
|
ケース内温度 | アイドリング時 | 38度 | 31度 (−7度) |
高負荷時 | 44度 | 34度 (−10度) |
|
HDD温度 | アイドリング時 | 42度 | 34度 (−8度) |
高負荷時 | 44度 | 38度 (−6度) |
|
動作音は、いちばん音が漏れ聞こえてくる前面ダクトの中心から1センチ離れた場所に、騒音計をケースと垂直に設置して計測した。数値はあくまで相対比較用の参考にして欲しい。
まず“A構成”で、起動してから10分ほどアイドリング状態にしておいた状態で計測する。騒音レベルは42〜43デシベル。SpeedFanで測定したCPU温度は43度、ケース内温度(システム温度)は38度、HDD温度は43度となった。Cool'n QuitによりCPUが省電力モードで動作していることもあり、電源部のファンやCPUファンの回転数も低く、ともに動作音はほぼ気にならない。
この状態からCPUを高負荷に、かつHDDもそこそこ駆使する動画エンコード作業を開始する。CPU温度は一気に58度まで上昇し、ケース内温度もじりじりと44度まで上昇した。動作音も気になるほどとなり、騒音レベルは57〜58デシベルに達していた。ちなみにCPUクーラーのファン回転速度は4000rpmを超えていた。
では本機を搭載した“B構成”で計測してみよう。
アイドルリング中の騒音レベルは45デシベル。“A構成”よりやや大きい値だ。本機は電源ユニットの12センチファン1つでCPUも電源内部も冷却する役割を担うため、しっかりと回っているからだろう。ただしファンの風切り音が気になるほどではない。数センチまで耳を近づけると気になるかな、というレベルであり、“A構成”と比べてうるさくなったという印象はない。
ちなみに温度は、CPUが33度、ケース内が31度、HDDが34度と“A構成”より低い。CPUクーラーのようにCPUの熱をケース内にばらまかないので、これがシステム温度やHDD温度にもよい影響を与えていると思われる。
高負荷状態にするとCPU温度は滑らかに上昇してくるが、46度程度でおおむね安定した。ケース内温度も3度ほどの上昇に留まる34度程度で安定した。同じくHDD温度は38度。それにも関わらず気になる動作音は45デシベル前後で、アイドリング時とほぼ同じなのである。なかなか優秀ではないか。
本機で気になるところとしては、複合製品ゆえのデメリットだろうか。電源部とCPU冷却機能、どちらが壊れてしまっても単機能での利用が難しい。また、一度組み込み作業をしてしまうと電源ユニットとCPU冷却ユニットを原則として切り離せないので、今後のマシンアップグレード時には本機を流用できない可能性もある。
ただし、これらデメリットはほぼ気にしなくてもいいほどのメリットを本機は備えているといえるだろう。一部の特殊なレイアウトを採用するケース(例えば電源ユニットをケース最下段に設置するタイプなど)を除けばチューブはCPUと最短距離で結ばれるので、ケース内部のケーブル配線などに影響を与えにくいし、小型のMiro ATXケースでもスマートに内蔵できる特徴がある。
筆者のようにエンコード作業が多く(しかも寝ている間に、とか)、CPUのみにハイスペックを求めるようなユーザーにとって小型ケースでも手軽に、しかも高負荷時も静かに使えるのはとにかく魅力だ。財布の中身さえ許せば自宅のデスクトップPCの電源全部をこれに替えたい、そんな衝動に駆られた製品である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.