エプソンが放つ新たな刺客――カラリオ・スキャナ「GT-F650」(2/2 ページ)

» 2006年07月27日 14時26分 公開
[榊信康,ITmedia]
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性能は十分、ユーティリティはさらに使いやすく

 品質を見るために、ざっとサンプルを取り込んだところ、一見して目立つ粗はない。反射原稿ならば、なんら問題のないクオリティを出せている。フィルムについては、ネガだとさすがにノイズが目立ち、高彩度で目立ちにくくしている印象を受けた。ただし、これはどのスキャナでも大なり小なり見られることなので、コンパクトCCDの影響とは決め付けられない。一方、ポジスキャンは逆にあっさりとした色彩で、素材の作成に向いている。汎用機のエンジンとして十分な性能は維持していると言ってよいだろう。

反射原稿 A4
200dpi21秒9
400dpi1分0秒9
800dpi3分32秒2
ポジ
プレビュー22秒5
800dpi33秒6
1200dpi42秒4
1600dpi49秒1
2400dpi1分05秒4
3200dpi1分19秒5
ネガ
プレビュー34秒2
800dpi48秒8
1200dpi1分5秒8
1600dpi1分21秒6
2400dpi1分51秒7
3200dpi1分52秒3

 スキャンスピードは、いつものGTスキャナレベルで、ストレス無く使用できる。光学系と駆動系の変更にもかかわらず、これだけの速度を出せたのは賞賛すべきだ。詳しいスコアは左表を参照していただきたい(設定はデフォルト、USMは中に設定)。

 次に新モデルの目玉機能であるEPSON Scan Ver.3.0を見ていこう。まずは格段に進歩したPDF生成機能だが、マルチページPDFの生成は当然として、透過テキストの貼り付けにも対応した。これにより単語検索が可能になり、資料性の高いデータが作成できる。透過テキストの作成に使用するOCRエンジンは、EPSON Scamに内包しているようで、別途OCRソフトをインストールする必要はない。ゴテゴテとした添付アプリケーションをインストールしたくない人にはありがたい。

 PDF作成時には、1ページスキャンするごとに次の作業を示すダイアログが表示される。原稿やデータの状況に応じて「ページ追加」「ページ編集」「ファイル保存」から選択する。ページ編集では、ページの入れ替えや左右の回転が行える。また、ページ単位での削除もできるので、連続した原稿の途中で失敗しても、一から作業をやり直す必要はない。

 従来のスキャンユーティリティは今ひとつ実用性に乏しかったが、Ver.3.0ならば大抵の作業に耐えるだろう。強いて言えば、編集画面から拡大プレビューが出せないことと、ページ編集画面からさらにページの追加できない点が気になった。前者については、ページのサムネイルにマウスポインタを合わせることで拡大表示は可能だが、内容を把握できるほどのサイズではない。確認用としては少々心もとないので、スキャンする度に注意する必要がある。

新たに逆光補正機能を実装したのもトピックだ。効果は弱、中、強の3段階で調節できる

 補正機能では、ホコリ除去機能を改良するとともに逆光補正機能を追加している。ホコリ除去機能は従来も搭載していたが、ホコリとともに原稿の一部分までも消してしまうなど、精度の面で信頼性に欠けた。今回は原稿を極力損ねないように、アルゴリズムを見直したという。実際に使用したところ、確かにその言葉に違わず、細部の消失が少なくなっている。これならば、スキャンをオン/オフの2回にわけて、両者を張り合わせるだけの作業ですむ。もちろんソフトウェア処理なので誤消去もあるが、労力を格段に軽減できるはずだ。

 次は新機能の逆光補正機能を見てみよう。カラリオプリンタのドライバにも搭載していたが、こちらはより自然な色合いで取り込まれる。入力機器、つまり素材を作成するためのものなので、派手かつ無理な補正はせずに、後工程で手を入れる余地を残したということなのだろう。

 上記2つの補正機能は弱、中、強の3段階で調節が可能だ。もちろん、従来からの退職補正機能も継承している。3機能ともフィルムだけでなく、反射原稿にも適用できるため、写真を紙焼きで保存している人でも問題ない。

実売1万8000円で本格的なスキャン性能と

 そのほかで従来と大きく異なるのはボディデザインだ。わざわざコンパクトCCDとモータを用意しただけあって、なかなかに洗練されている。また、横開きの圧板も特徴の1つといえるだろう。実際に使用すると分かるのだが、大量のドキュメントを次々にスキャンする場合は、圧板が横開きの方が使い勝手がよい。わずかな差異ではあるが、こうした細かな部分への配慮には好感が持てる。圧板の内側にはカバーがあり、透過原稿用ではこれを外して使用する。ここにはフィルムホルダが収納できるようになっているため、ホルダを損壊・紛失するリスクも軽減できる。

本体左側面(写真=左)。ボディはよりコンパクトになった。圧板は長辺側を開くようになっている(写真=中央)。圧板の内側にはフィルムホルダの収納スペースがある(写真=右)

 ボリュームゾーンにあたる製品だけあって、さすがにコストパフォーマンスは高い。3200dpiの解像度と、「おまけではない」フィルムスキャン機能を装備しながらも、実勢価格は1万8000円前後に抑えられている。何より、個人的には最大の弱点だと考えていたPDF生成機能が強化されたのはうれしい限りだ。利便性と設置性については、いまだプラグオンスキャンを売りにするCanoScan LIDEに及ばぬ部分もあるが、従来よりも格段に向上したことは間違いない。

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