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» 2007年01月23日 12時00分 公開

中国で日本メーカーのノートPCが販売中止に──そのとき“人民”の反応は?山谷剛史の「アジアン・アイティー」

2006年の末、中国の浙江省工商局は日本のノートPCメーカーに中国における一部機種の販売停止を求めた。この事態はなぜ起きたのか?そして中国人民の反応はいかに?

[山谷剛史,ITmedia]

また起こった日本メーカーの販売停止処分にメディアや現地の反応は?

 2006年の12月14日、中国の浙江省工商局は、東芝、富士通、NEC、ヒューレット・パッカードのノートPC計5機種が中国の品質基準を満たしてないとして、4社に販売停止を求めた。問題発覚から1カ月が経過した今、中国人や中国メディアの反応を紹介しよう。

 問題のあった機種はHP「V2626AU」、東芝「Satellite L100」「Satellite A80」、富士通「LBP7120-AC011S0A1」、NEC「VERSA S3100」の5機種。V2626AUは瞬間的に大きな電流を流したときにハングアップすることとバッテリー容量の説明がないこと(以下これを「バッテリー問題」と呼ぶ)、Satellite L100とLBP7120-AC011S0A1、VERSA S3100は静電気の放電を受けたときにハングアップすること(以下これは「静電気問題」と呼ぶ)とバッテリー問題で、そしてSatellite A80は本体からの電磁波が規定以上であることと静電気問題でそれぞれNGとなった。

 これを受けてNEC、富士通、東芝はプレスリリースを出している。その内容はいずれも商工局の検査結果を厳粛に受け止めるという消費者への「おわび」の内容であるが、発生している症状については各社とも「現在検討中」というもの。

 NEC広報は今回の件について、メールでの取材に応じてくれた。そのなかで「当社としては、中国工商局の品質チェック項目を把握しておりました。しかし、今回不合格になった機種は、当社のチェックが行き届いておりませんでした」とコメントし、今後の対策について「今回の不合格通知を受けて、改めて品質基準の確認を行っております。また、品質チェック体制も漏れがないように見直しております」と述べている。

 なお、今回販売停止となったノートPCのうち、NEC、東芝、HPの製品は日本で販売されていないモデルで、富士通のLBP7120-AC011S0A1が日本で販売されている「FMV-BIBLO LOOX T70」の2006年秋冬モデルに相当する。この件について富士通広報は「今回、中国で不合格になった基準は中国独自基準で、国内及び他国への影響はないものと認識しております」というコメントをよせている。

中国の電脳街にある日本のノートPC売り場。左からNEC、富士通、東芝

 浙江省工商局と聞いて、中国のIT事情に詳しいユーザーならば「どっかで聞いた名前では」と思ったかもしれない。浙江省工商局といえば、2005年末にソニーのサイバーショット数機種を品質基準を満たしていないことを理由に販売停止の決定をした政府機関である。こういう事情を邪推して、浙江省工商局イコール、ソニーのデジカメや日本メーカーを中心としたノートPCなど、日本叩きをしている部署と思われるかもしれないので、簡単に補足するが、IT関連以外でも中国の品質基準をパスしなかったイタリアやスペイン製の靴を燃やすパフォーマンスをしたり、また中国製品についても浙江省内で流通するニセモノを取り締まるなど、浙江省工商局は「厳格」にその任務を行っている役所といえる。

 今回のノートPC販売停止に関して、中国のメディアは浙江省工商局の発表時点から現在に至るまで、たびたび報道している。極端な例ではHPも品質検査でひっかかっているにも関わらず「日本企業はよくない」と叫ぶメディアがあったり「2006年は日本企業よりもHPのトラブルが多かったからHPのほうが問題だ」と主張するメディアが少数派ではあるが存在するものの、報道の多くは「現在のメーカーの対応状況」(編集部のある都市における)「現在の問題の機種の販売状況」「過去に起こったIT関連のリコール問題」「ほかの地域における工商局の反応」「市民の反応」について客観的に分析しているようだ。

 各メディアに書かれている内容をまとめてみると、おおよそ以下のような論調になる。

現在のメーカーの対応状況 社内で対策を講じ、その結果、謝罪と撤収を行っているが、今のところ購入者に対してのアフターケアに対応する動きがみえない。NECは(中国全土レベルでなく)「浙江省では製品を撤収する」と発言している。

問題となった機種の販売状況 普通に売っているところがほとんど。店員はニュースで事件を知ったがメーカーや工商局から何の通知もない。「工商局の人が見回りに来たけど、問題の製品があっても素通り」とメディアに語る店員も紹介されている。

ほかの地域における工商局の反応 北京市工商局と江蘇省工商局で「そんな話は聞いていないし、浙江省工商局の発表を認めてもいない」とコメントしている。

市民の反応 「これから問題のあった会社のノートPCを買いたくなくなった」という声が紹介されている。

 ちなみに、Webページに掲載されている上記ニュースを読んだ中国人民の感想掲示板は、サイバーショットが販売中止になったときと同様に「日本メーカーはいいものは日本国内や欧米市場に流して、品質の悪いものは中国に流している」とか「中国メーカーをサポートしよう!」という論調の書き込みであふれている。

 今回の騒動は、浙江省工商局の発表を受けて、対象となったメーカーが対策を講じているものの、中国全土レベルでは販売店や工商局の足並みがそろっていないようだ。2005年のサイバーショット騒動では中国全土レベルで問題製品の撤収が行われていたのと対照的である。

日本企業の信頼は品質問題で失墜したか

 今回の問題で、結果的には多くの日本企業の製品が販売停止となった。そして中国メディアには問題を起こした企業の製品が信じられなくなった」という消費者の声が掲載された。はたして、中国人民の意識の中で「品質不祥事」は企業イメージを大きく失墜させるものなのだろうか。

 中国のリサーチ企業による四半期毎のノートPC出荷台数リポートはあと半年も待たなければならないので、代わりに中国のIT系ニュースサイトでは大手の「中関村在線」が毎週発表している、読者による「好きなノートPCメーカーランキング」を参考にしてみたい(ちなみに同サイトは、ノートPCだけでなくデスクトップPCからデジカメなどのデジタル家電、PCパーツまで多彩な人気ランキングを毎週更新している)。IT系ニュースサイトの読者アンケートということで、ややヘビーユーザー寄りかとは思う。

 その結果には、中国においてシェアがある程度ある東芝とHPの製品は載っているが、名前が出ていないNECと富士通は「その他」に含まれる。最新の結果では東芝の支持率は減ってHPはあがっている、という結果ではあるもののその違いはほんのわずかである。これをみる限りは今回の騒動の影響は軽微であるといえる。

 ちなみに、2005年末にサイバーショット品質問題が出た前後でのデジカメメーカーとしてのソニーの人気を同じ媒体から調べてみると、騒ぎが起きてからしばらく支持率がわずかに下がっているが、騒ぎが起きた3カ月後以降は支持率が元に戻っている。ちなみにソニーは上記の問題が出たにも関わらず、2006年の年間デジカメメーカー支持率では、2005年の支持率よりも3.3ポイントアップの16.4%となった。メーカーランキングでは、キヤノン(26.9%)に次いで第2位である。このソニーの統計からも、一度起きた品質問題が未来永劫足を引っ張るようではなさそうだ。

 NEC広報は現在の中国市場におけるNEC製ノートPCの販売数について訊ねたところ「特段変化はありません」とコメントしている。

中関村在線におけるHPと東芝のノートPC支持率の推移。その変化はほんのわずかだ
2005年に起こったサイバーショット販売停止騒動の前後におけるソニー製デジカメの支持率推移。このときは、人気が回復するまで3カ月かかった

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