これぞ真の“ド級”GPU──GeForce 8800 GTで「Crysis」ベンチマークを動かすイマドキのイタモノ(2/5 ページ)

» 2007年10月30日 07時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

DirectX 10時代に合わせてベンチマークを一新

 GeForce 8800 GTではプロセスルールが縮小したことによる消費電力の変化や、スペックの比較で微妙な関係にあるGeForce 8800 GTSとのパフォーマンスの違いが気になる。すでに海外のWebニュースでは、上位モデルのGeForce 8800 GTXにも匹敵するベンチマークの結果が報じているが、その真偽も含めて、多くのユーザーがGeForce 8800 GTのパフォーマンスに注目している。

 これまで、一連の「イマイタ」レビューでは、過去記事で紹介したレビュー結果と比較を容易にするため、テスト環境と使用するベンチマークテストの種類、そして設定内容を固定してきたが、今回から、「DirectX 10」環境に対応するため、主に、OS環境とベンチマークで利用するゲームタイトルを変更した。

 PCゲームユーザーの現状とドライバの開発状況、DirectX 9とDirectX 10におけるパフォーマンスの違い(これについては、この記事でもデータを示したい)などを考えると、ベンチマーク環境をDirectX 10に移行するのは時期尚早という意見もある。しかし、これからのGPUはDirectX 10をどうしても意識しなければならない。また、開発段階から注目されていたゲームタイトルがDirextX 10対応となって次々と登場していることも今となっては無視できない、偶然にも(いや、予定されていたのかもしれないが)次世代3D FPSとして期待されている「Crysis」のデモがGeForce 8800 GTの発表に合わせて公開された。PCゲームもいよいよDirectX 10時代が本格的に始まろうとしている。

 このような状況から、今回からベンチマークテストとして、従来の「3DMark06」「F.E.A.R.」に加えて、パッチプログラムVer.1.7.1からDirectX 10対応になった「Company of Heros」と、2007年にリリースされた、またはリリースされる予定のゲームタイトルから「LOST PLANET EXTRME CONDITION」「World in Conflict」「Enemy Territory: Quake Wars」「Unreal Tournament 3」「PT Boats: Knights of the Sea」「Crysis」を使うことにした。

 「F.E.A.R.」「LOST PLANET EXTRME CONDITION」「World in Conflict」「PT Boats: Knights of the Sea」「Company of Heros」「Crysis」は、それぞれのプログラムが組み込んでいるベンチマークテストを利用している。ちなみに、「PT Boats: Knights of the Sea」はプレイアブルデモではなく、DirectX 10に対応したベンチマーク専用ツールだ。このうち、「LOST PLANET EXTRME CONDITION」、「World in Conflict」、「Unreal Tournament 3」、「PT Boats: Knights of the Sea」、「Company of Heros」、「Crysis」は、DirectX 10に対応したベンチマークプログラム機能、もしくはバッチファイルが用意されている。

 なお、「Unreal Tournament 3」「PT Boats: Knights of the Sea」「Crysis」は製品版がまだ出荷されていないが、デモ版に組み込まれたベンチマーク機能を利用した。また、「World in Conflict」「Enemy Territory: Quake Wars」はすでに製品版が出荷されているが、デモ版でもベンチマークを行うことができるため、この記事ではそちらを用いた。

 「Unreal Tournament 3」のデモ版には、ベンチマークで使えるプレイデータが収録されており、それをコマンドラインから呼び出すことで、ベンチマークテストを行える。関連するWebサイトではTweakコードが公開されていて、実行ファイルの起動オプションでかなり細かい環境設定が行えるが、今回は、そのサイトで「ベンチマーク用の起動オプション」として紹介されていた設定に、解像度設定のオプション「RevX」「RevY」を加え、ベンチマークテストの実行時間を60秒に変更した状態で測定を行った。また、Unreal Tournament 3では、設定ファイル「UT3Engine.ini」の[Engine.GameEngine]で“bSmoothFrameRate=TRUE”という設定があるが、これをbSmoothFrameRate=FALSEに変更しておく。これがTRUEになっているとフレームレートの上限が有効になってしまうためだ。

 これまでのUnreal系ベンチマークと同様、プレイデータは、“Flyby”と“Bot”の2系統それぞれで3つのファイルが用意されている。今回はこの中から、負荷が最も重かった「VCTF-Suspense」(Flyby)と「DM-ShangriLa」(bot)を使って測定したデータを掲載している。

 「Enemy Territory: Quake Wars」のデモ版では、コンソールを開いて、そこから「TimeNetDemo」コマンドでプレイデータを呼び出せば、ベンチマークテストが行える。解像度の設定やアンチエイリアス、異方性フィルタリングの設定で使えるコンソールコマンドはDOOM 3やQuake 4と同じだ。

 ただ、デモ版にはプレイデータが収録されていないため、自分で作成しなければならない。今回は、デモ版をオフラインで起動したときに表示されるFlybyモードから、爆発シーンや(Enemy Territory:Quake Warsの特徴でもあるMegaEngineによる広大なマップを表示するために)空中から俯瞰したシーンを選んで記録したプレイデータを作成してTimeNetDemoから呼び出している。個人が作成したプレイデータを利用しているので、だれもが行える汎用性のある条件ではないが、今回評価するGPUの性能傾向を比べることはできるだろう。

 このプレイデータは、収録時間1分につき1Mバイト容量のファイルが作成されるが、筆者の環境では1.5Mバイトを超えるプレイデータをTimeNetDemoで呼び出すとハングアップする現象が見られた。自分でTimeNetDemo用のプレイデータを作成するなら、収録時間は1分程度で抑えておくのが無難だ。

 なお、今回のレビューから使うことになったゲームベンチの詳細(ベンチマークにおける設定や、各ゲームで採用されているゲームエンジンの解説、ゲームごとに利用しているグラフィックファンクションなど)は、後日掲載する別記事で紹介する。

チューニングが進むForceWare事情

 これまでの「イマイタ」におけるグラフィックスカードのレビューでは、軽負荷条件として「4Xアンチエイリアス」「8X異方性フィルタリング」を、重負荷条件として「8Xアンチエイリアス」「16X異方性フィルタリング」をそれぞれで設定していたが、ゲームベンチでDirectX 10を利用する設定にすると、今回取り上げるほとんどのゲームタイトルで挙動が非常に重くなり、ベンチマーク測定作業に支障が発生してしまった(要は、いつになってもベンチマークテストが終わらない)。

 そこで、アンチエイリアス設定と異方性フィルタリングの軽負荷重負荷設定は、ゲームタイトルごとに変えている。ただし、Crysisについては、フィルタリング条件を有効にすると、さすがのGeForce 8800シリーズでもフレームレートが1〜3という状況になってしまうため、こちらは、画質設定をDirectX 9対応の「High」とDirectX 10対応の「Very High」に切り替えて負荷条件を変えている。

 解像度の条件は、これまでと同じように「1600×1200ドット」「1920×1200ドット」「2560×1600ドット」の3パターンを用意した。「2560×1600ドット」では「非現実的な解像度に意味はあるのか」という意見もあるが、極限まで負荷を重くしたときのGPUの性能をみるという、実験データ的な意味合いでこの条件はこれからも残していく。

 ForceWareは、評価作業当初、NVIDIAから供給された「167.39」を適用していたが、その後、NVIDIA SLIにおけるパフォーマンスを改善し、Crysisに対応した「169.01β」が登場した。今回の記事では、作業時間の関係上、単体構成のベンチマークでは167.39を適用し、単体構成におけるCrysisのベンチマークとNVIDIA SLI構成のベンチマーク全般で、169.01βを適用した。

 GeForce 8800 GTの比較対象としては、GeForce 8800 GTXとGeForce 8800 GTS(320Mバイト)、そして、Radeon HD 2900 XTを用意した。当初、GeForce 8600 GTSを用意して、GeForce 8800 GTXは比較対象として想定していなかったが、リークされる海外Webサイトの「GeForce 8800 GTXを超えるようだ」という情報に接して急きょ追加した。なお、「GeForce 8600 GTS」のパフォーマンスも測定しているが、グラフの表示が煩雑になるため、あえて掲載していない。ただ、GeForce 8800 GTとGeForce 8600 GTSのパフォーマンスは「まったく次元が違う」ぐらい差があったことは報告しておきたい。

 Radeon HD 2900 XTのCrossFire構成におけるパフォーマンスの評価は、NVIDIA製GPUとプラットフォームが異なってしまうため、今回は比較対象としていない。ドライバは最新のCatalyst 7.10を適用した。これは、筆者の環境だけの問題かもしれないが、Radeon HD 2900 XTの測定において、ゲームタイトルによって設定できる解像度が「1280×800ドット」「2560×1600ドット」にしか選択できなかったり(LOST PLANET、World in Conflict、Crysis)、ベンチマークにおける挙動が明らかに不自然であったり(Unreal Tornament 3、Enemy Territory-QUAKE Wars)と、測定できないケースが確認された。このようなテストでは結果を掲載していない(単純な問題のようにも思えるのだが、時間がなく解決に至らなかった)。

 今回、評価に用いたグラフィックスカードは、「標準で」オーバークロックされているものが多々あった。GeForce 8800 GTに至っては、工場出荷状態で「コアクロック=650MHz」「メモリクロック=1GHz」(転送レートで2Gbps相当)に設定されていた。ただし、このレビューでは「NVIDIAの資料で提示されていたクロックで動作するGeForce 8800 GTを評価する」という観点から、「コアクロック=600MHz、メモリクロック900MHz」に変更している。GeForce 8800 GTにおけるオーバークロックのベンチマークの考察は、別な章を設けているので、そちらを参照していただきたい。

評価用のディスプレイは2560×1600ドット表示可能なデルの30インチワイド液晶ディスプレイ「3007WFP-HC」を使っている
評価作業には8ピンのPCI Express12ボルトコネクタを有するEnarmax(クーラージャイアント)の電源ユニットを使用した

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