HDDの大容量化にともなうバイト単価の低下はとまらない。1996年頃にHDDの容量は1Gバイトを越え、それまでのMバイトからGバイトへと表記を変えた。それから11年。再び単位表記が変わり、Tバイト表記のドライブが次々と登場している。
このような大容量のHDDが登場した背景には、PCで動画などの大容量コンテンツを扱うケースが増えたためということもあるだろう。しかしその一方で「そんな大容量、いったい何に使うわけ?」と思っている人もいるはずだ。今回は1TバイトHDDの利用法について考えていく。
現在、1Tバイトの容量を持つSerial ATA HDDは、日立グローバルストレージテクノロジーズの「HUA721010KLA330」「HDS721010KLA330」や、シーゲイトの「ST31000340AS」「ST31000340NS」など、各社からいくつかのモデルが登場している。その中でも特に安いのが、ウエスタンデジタルの「WD Caviar GP」シリーズにラインアップされている「WD10EACS」だ。この製品は、3万円前後の低価格でありながら、回転速度などの調整機能(IntelliPower)による省電力稼働を実現したモデルで、この値段なら、と購入を考える人もいるだろう。
さて、HDDの容量は慣例的に1000Mバイト=1Gバイトと表記されるため、1Tバイトと表記されていても、Windowsのエクスプローラなどでは容量が異なって表示される。今回評価に使用したWD10EACSの正確な容量は1,000,204Mバイト、約931Gバイトだ。これだけあれば何ができるのか、そして何が変わるのかを考えてみよう。
いまや家庭に2台以上のPCがあることはめずらしくない。そして、それらが家庭内ネットワークで相互に接続されているのも、もはや一般的と言っていい。“一家に1台”から“一人1台”となった現在のPC環境では、HDD内のデータも個人が管理すべき情報と、家族みんなで共有したい情報に区別される。
例えば、メールやドキュメント、Webサイトのブックマークなどは、家族に見られたくないと感じる人が大半だろう。その一方で、録画したTV番組や音楽などのメディアファイルは、ネットワーク経由で共有するメリットが大きい。
こうした状況を整理するための王道的ソリューションは、企業でも利用されるNASを導入することだ。コスト面でハードルが高いなら、HDDを買ってきて内蔵するだけの低価格なNASキットを利用するのもいい。ただし、このようなNASキットにはLinuxが採用されていることが多く、空き容量を使い切ってしまったときの増設や交換がやや面倒な場合がある。また、USB接続で外付けHDDによる増設をサポートする製品もあるが、基本的には内蔵HDD1台のみという構成が多い。そう考えると、できるだけ大きな容量を持つHDDを使うのが望ましい。
また、PC中級者の中には、HDD容量が足りなくなってくるといらないデータを削除し、アクセス頻度の低いデータは光学メディアに退避するなど、HDDの整理を行ってなんとかやりくりする人もいるが(そして、そういった活用記事が意味を持つ時代もあったが)、現在の状況ではディスクフルになった時点でさらに大容量のHDDへ乗り替えていくほうが、バイト単価の低下を考えると効率的だ。
この定期的な交換は、「HDDは消耗品である」という観点からも理にかなっている。同じHDDを使い続ければ、当然ながら故障する確率は増加していく。NASに限らず、PCの内蔵HDDでも同様に、「HDDがいっぱいになったら大きなドライブに交換する」というのは、無計画な行き当たりばったりではなく、転ばぬ先の杖でもあるのだ。
ただし、以前より導入しやすくなったとはいえ、一般ホームユーザーにNASが浸透するには、いまだハードルの高い面もある。PC初心者が手っ取り早くHDD(内のファイル)を共有したいなら、最も簡単な方法の1つは「Windowsファイル共有」だ。これなら共有したいフォルダの右クリックメニューから「共有」を選択するだけで、既存のPCをファイルサーバ代わりに使うことができる。
ほかにもメディアファイルに限れば共有方法はある。Windows Media Player 11ではネットワーク上でライブラリを共有することができるし、iTunesにも共有機能がある。DiXiMなどDLNAサーバを使ってもいいだろう。1台のPCをファイル/メディアサーバ兼用にして、大容量HDDを搭載するという使い方は、家庭内では十分「アリ」だ。
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