Macに足りない3つのポイント元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2008年01月31日 11時11分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

ソフトウェアの問題は事実上解消されたが……

 前回はプラットフォームとしてのMac、あるいはMac OS X Leopardとして筆者が優れていると考える部分について触れた。しかし、残念ながらMacも優れたところばかりではない。今回は筆者がMacに足りないと思っている部分(見方を変えれば過多な部分)について取り上げたいと思う。

LeopardでのBoot Campの正式リリースにより、Windows用ソフトウェアが快適に利用できるようになった(インテル製CPU搭載モデルに限定されるが)

 Macに不足しているものとして、多くの人がまず考えるであろうことは、ソフトウェアのバリエーションだろう。大型の家電量販店に行ってみれば、Windowsアプリケーションの豊富さに圧倒される一方で、Macアプリケーションの種類が限られることに誰しもが気づく。これは間違いない事実だ。

 しかし、同時にこのことはもはや問題にならなくなりつつもある。それはMacの上でWindowsとそのアプリケーションを動かすソリューションが提供されているからだ。以前取り上げたParallelsやVMwareといった仮想化ソフトウェアは、Mac OS Xのデスクトップ上でWindowsアプリケーションを利用できるようにする。量販店の店頭にあふれるアプリケーションをMac上で利用可能になったわけだ。

 逆にMacにおいて、今も大きな制約が存在するのはハードウェア面である。基本的にコンシューマー向けのMacは、ユーザーが内部にアクセスすることを想定していない。唯一の例外がメモリの増設で、一般のユーザーが自らの手で増設を行うことが想定されている(Mac miniを除く)。だからこそオンラインのApple Storeで、Mac用の増設メモリが単体で販売されている。

 MacBookは、Macとしては例外的にHDDの交換が容易だが、アップルがユーザーの手によるHDD交換を認めているわけではない。だからApple Storeのストレージの項を見ても、MacBook用の交換HDDは掲載されていない。メモリの増設や交換を除き、ユーザーがハードウェアにアクセスすることは、メーカー保証を損なう行為となる。これまで、いわゆるWindowsベースの「自作PC」を使ってきたユーザーにとって、こうした「縛り」はさぞや窮屈に違いない。

MacBookは底面のバッテリーを取り外して3本のネジを回すだけでメモリスロットとHDDベイにアクセスできる(写真=左)。Apple Storeでは増設用のメモリやMac Pro用のHDDが販売されている(写真=中央と右)

プロシューマー向けのMac ProではHDDやメモリ、グラフィックスカードなどの交換やメンテナンス作業が容易に行える

 筆者が使っている初代MacBook(Black)が搭載するDVDスーパーマルチドライブ(SuperDrive)は、2層メディアの記録に対応していない。これは妥協できるのだが、記録型2層メディアの読み出しにも対応していない(プレスメディアの読み出しは可能)。もしWindowsのノートPCなら、筆者はドライブを交換してしまったと思うが、MacBookでは、交換作業が困難(傷をつけずに開くことが難しそう)な筐体、交換用ドライブの入手性(薄型スロットイン方式の光学ドライブ、アップル製ファームウェア)などの点からあきらめてしまった。

 Macの世界は、ハードウェア、ファームウェア、OS(ドライバサポート)が三位一体となって1つの世界を形成している。本体のファームウェア、周辺機器側のファームウェアが合致したうえで、この組み合せをサポートするドライバが必要になる。Mac OS XではWindowsをサポートする環境(Boot Camp)もサポートされるようになったから、Mac OS Xのネイティブ動作用のドライバと、Boot Camp環境用のドライバの双方が必要だ。これらの多くはアップルだけが提供するモジュールであり、ユーザーが気に入らないからといって、勝手にハードウェアの構成を変えるのは難しい。これはMac Proのようなワークステーションにおいても、ある程度当てはまる。

 アップルがワークステーションとして販売するMac Proは、ハードウェア内部への高いアクセス性も1つのウリとなっている。メモリの増設、HDDの増設、光学ドライブの増設、グラフィックスカードやRAIDカードのインストールなどが容易にできる。しかし、だからといってハードウェア構成を自由に選べるかというと、必ずしもそうではない。アップルがサポートする組み合わせ、言い換えればOSサポートが行われるハードウェアの構成には一定の制約がある。例えばRAIDカードがサポートするのはMac OS Xのみで、Boot Campではサポートされない。

議論を呼ぶグラフィックスカードの互換性

 この種の問題で最も議論になりそうなのが、Mac Proにおけるグラフィックスカードの互換性だ。アップルの公式見解というのはもう出ていて、同社が提供するグラフィックスカードは、そのカードが提供された世代のMac Proのみでのサポートとなる。先日、新しいMac Proと同時に、ATI Radeon HD 2600 XT、NVIDIA GeForce 8800 GT、NVIDIA Quadro FX 5600の3種類が登場したが、これらのカードは2006年にリリースされた初代Mac Proではサポートされない。

 中でも特にユーザーの注目度が高いのは、NVIDIAのGeForce 8800 GTだ。すでにWindows PCで高い性能評価を得ているこのカードがあれば、もう少し手持ちのMac Proを使い続けられると思っているユーザーは少なくない。だが、新しいMac Proに提供される純正のGeForce 8800 GTカードは、新しいMac Proで採用された新しいファームウェア(EFI64)に対応しており、EFI32をサポートした従来のMac Proでは動作しないと言われている。一部報道では、NVIDIAはGeForce 8800 GTカード用のEFI32ファームウェア提供を示唆しているとされるが、いくらNVIDIAといえども、アップル純正品のファームウェアを勝手に更新してよいはずがない。

 さらにこの組み合せはアップルのラインアップには存在しないから、アップルが提供するドライバが使える保証はない。利用可能なプラットフォームが高価なMac Proに限定される現状で、サードパーティがMac Pro向けにEFI32をサポートしたGeForce 8800 GTベースのカード、EFI32のファームウェアに対応したMac OS X対応のドライバ、Boot Camp環境用のWindowsドライバの3点をセットにして売り出す可能性はどれくらいあるのだろうか。筆者が実現性に疑問を持つのはこのあたりだ。

2008年1月に登場した新Mac Proで採用されたグラフィックスカード。左からATI Radeon HD 2600 XT、GeForce 8800 GT、Quadro FX 5600を搭載する。ただし、2006年に発売されたインテルCPU搭載の初代Mac Proとの互換性は保証されない

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