1月31日に突然閉店した高速電脳のニュースは、1日経ってアキバ電気街全体に広がった。各ショップの店員さんが閉店の原因をそれぞれ想像する中で、高速電脳への恨み節は聞かれない。むしろ、「明日は我が身」と気を引きしめる教訓として受け止める声が多かった。
「1月末と9月末はPCパーツショップにとって、ちょっとしたハードルなんです」。PCパーツショップ密集地で働くある店員さんは語る。「1月末は年末に、9月末はお盆に仕入れた商品の支払いが集中するので、予想を下回る売り上げだと資金繰りが厳しくなる。ただ、今回の年末商戦はGeForce 8800 GTなどがヒットしたこともあって全体的に好調だったはず。やはり、高速電脳は立地面での不利が響いたのだと思います」。
高速電脳はPCパーツショップ密集地から少し離れた場所にあるため、ユーザーの回遊ルートから外れやすいという。実際、1月初旬に高速電脳を取材した際、年末商戦で好調な結果を残したという感想は聞かれなかった。
しかし、それらは最終的な引き金に過ぎないとのコメントもいくつかあった。某ショップは「高速電脳が本当に“小さなショップ”だったら、きっといまも普通に営業しているでしょう」と意味深に語る。
曰く、「高速電脳は店舗こそ小さいですが、クーラーマスターの一次代理店であったり、ファンメーカーと共同で製品を開発するなど、比較的大規模な事業も行っていました。小売業だけにとどまらない戦略が高速電脳の強みであり、業界の活性化にも一役買っていたのですが、その半面リスクも大きかった。よく自作PC業界は淘汰(とうた)の時代に入っていると言われますが、そういう時勢ゆえに事業が失敗する危険も高くなっています。守りに入らず、攻めを続けたことでショートしてしまったのでしょう」とのことだ。
単に事業を縮小して営業すれば業界を停滞させて自身の首を絞めかねないが、大きな事業を展開していくとハードルがどんどん高くなる。このジレンマを抱えつつ、業界や街の発展を模索しているのが、現在の秋葉原電気街の姿といえるのかもしれない。
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