いよいよ自作PC派にも地上波デジタル放送を視聴・録画する道がひらけた。規制緩和によって、機器として完結しない地デジチューナーボードに対してもARIBの認可が下りるようになったことは素直に喜ばしい。しかし、“やりたいこと”は本当にできるのだろうか。ユーザーが頭に思い描くすてきな未来は、本当にやってくるのだろうか。
今回は解禁とほぼ同時に登場した地上波デジタル専用内蔵カードの2製品、アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/HS」と、バッファローの「DT-H50/PCI」を横並びで評価していく。
バッファローのDT-H50/PCIは、PCIバス接続の地デジチューナーカードだ。基板上に「ViXS Xcode-2111」が実装されているのと、チューナー部分のグランドが分離されているように見えるのが特徴。このViXS Xcode-2111は、HD対応のMPEG-2エンコードチップで、MPEG-2の動画を異なるサイズ、ビットレートに変換するトランスコード機能をハードウェアで実現する。
過去、アナログキャプチャカードはハードウェア/ソフトウェアによってアナログ入力をMPEG-2などのデジタルフォーマットにエンコードする部分がメインの機能と言っても過言ではなかった。これに対し、地デジチューナーカードはそもそも最大16.8MbpsのMPEG-2で入力されるため、それをそのまま流すだけでMPEG-2フォーマットでの記録が可能になる。
この場合、MPEG-2の記録(録画)自体はそれほど大きな負荷にはならないが、MPEG-2のデコード処理を行わなければならない再生のほうがより負荷の高い処理となる。また、実際にはMPEG-2 TSをそのまま録画することは無制限の無劣化コピーを可能にしてしまうため、再度ローカル暗号化処理を施すことになる。これもCPUの負荷を上げる要因だ。
DT-H50/PCIにはリアルタイム再エンコードとも言うべきトランスコード機能が搭載されている。これはソースの解像度とビットレートを(リアルタイムで)落とすことにより、再生/録画時の負荷を下げるというものだ。オリジナルそのものの画質であるDPモード(1440×1080i/最大16.8Mbps)、横方向とビットレートを半分に減らしたHPモード(720×1080/8Mbps)、DVD相当の解像度のSPモード(720×480/6Mbps)とLPモード(720×480/4Mbps)の4つの視聴モードを選択できる。
録画した映像は、BD-RE/DVD-RW/DVD-RAM(CPRM対応)メディアへのムーブも行える。DVD-RW/DVD-RAMにムーブした場合はSD画質になるが、BD-REではハイビジョン画質のままのムーブが可能だ(初版のマニュアルではハイビジョン画質でのムーブはできないとの記載があるが、実際はできるという回答だった)。DVDへのムーブでは高画質、標準、長時間、自動から画質を指定できる。
番組視聴/録画ソフトウェアとしては、「PCastTV for 地デジ」が付属する。このソフトはどちらかというと録画よりも視聴向けにデザインされており、フルスクリーン表示向きのWindows Media Centerに似たフィーリングのUIになっている。逆にウィンドウモードで利用した場合は、操作パネルなどが映像表示部に重なって表示されるため、うっとうしく感じる人がいるかもしれない。機能面でも視聴と同時に自動的に録画が始まるので、いつでもタイムシフト視聴が可能であるなど、TVとしての使い勝手のよさが光る。
その半面、録画に関してはやや使いづらさを感じた。例えば録画したファイルは「ファイル一覧」で表示されるが、1ページ中に表示されるファイル数が7ファイルと少なく、一覧性があまりよくない。ファイルの並び替えは、タイトル順、日付順、ジャンル順の3パターンで、降順、昇順は選択できない。一覧画面にはタイトルとジャンル、録画時間しか表示されていないため、同一番組を毎週録画している場合などは、ファイル一覧で表示される番組がどの回なのか見分けがつきにくい。
そのほか、放送開始後の番組表からの録画予約はできず、手動録画のみになる。また、手動録画開始後に録画時間を指定したり、現番組終了時に自動的に録画停止するなどの機能はなく、放送が終了するのを待って、手動で停止しなくてはならない。このへんはやや気になる点だ。
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