デル製品のデザインを手がけるのは、世界に3カ所あるExperience デザインセンターだ。今回訪れたオースティン郊外にあるデザインセンターのほかに、シンガポールと台湾に設置されており、デザインの中心となるコンセプトはオースティンが手がけている。ただ、今後は地域に特化したデザインを取り入れた製品を、特に日本や中国、インド向けに出していこうと考えているという。
オースティンでは約75名のデザイナーが働いており、ここ1年で人数が倍増したそうだ。また、いずれのデザイナーもIT以外の他業種経験者ばかりだという。ちなみに、デザイン以外を手がける製造開発センターでは約1000人が勤務している。デザイン部隊はマイケル・デルCEOの直属で、コンシューマー向けPCもビジネス向けPCのデザインも共通のチームが手がけているが、デルCEOへのリポートラインはコンシューマー向けPCとビジネス向けPCで分かれている。
ビジネス向け製品のデザインを担当するエクスペリエンス デザイン グループ ディレクターのケン・マスグレーブ(Ken Musgrave)氏は、「Dellの売り上げの8割は企業向けであり、ビジネス製品に多くのデザイナーを割くなど企業向けに力を入れているのは事実。しかし、ユーザーの多くはデルのコンシューマー向けPCのデザインを見て判断してしまうのが残念だね」と語る。とはいえ「ビジネス向けPCのトレンドも、コンシューマー向けPCに近く、軽量で薄い製品に移っている」とし、12.1インチワイド液晶ディスプレイを搭載した次世代のLatitudeを手にしながら、「液晶ディスプレイの天板にカラーパネルを使うなど、デザイン的にはコンシューマー向けを意識しているが、使いやすさや堅牢性、ドッキングステーションの接続性にはこだわっている」と主張した。
一方、同社のオフィシャルブログ「DIRECT2DELL日本語版」などでも公開されている、この夏にも発売する予定のミニノートPC(俗称はInspiron miniで製品名は未定)について、「DellのミニPCは他社よりも遅れて発売されるが、それはキーボードに時間をかけてかなりの工夫を凝らしたからだ」と述べた。残念ながら写真撮影が禁止だったので実物をお見せできないが、英語キーボードを搭載した試作機では、ファンクションキーを省くことで17ミリピッチ前後を確保したアルファベットキーを備えていた。Fnキーを組み合わせたメディア操作ボタンを数多く配置していたのも目を引くところだ。ただ、ミニサイズゆえキーの詰め込みは否めず、好みが分かれるところだろう。実際に製品が登場するのは先だが、日本語キーボードが採用されるのかを含め、要注目であるのは間違いない。
また、ミニノートPCと同様に撮影はできなかったが、グリーンPCと呼ばれる超小型デスクトップPCも今夏に登場する。静かでエコロジー、かつ机の上に置けるデスクトップPCが欲しいというユーザーの声に応えたプロダクトで、従来のデスクトップPCに比べてボディサイズが7割も小さく、消費電力も驚くほど低いという。外観は縦横両置きに対応した奥行き約20センチのカマボコのような形状で、外側のカバーをユーザーの好みに応じて着せ替えることができる予定(試作機では竹製や半透明のプラスチックカバーが用意されていた)だ。リサイクル可能な部品で作られ、製造工程から環境にも配慮した製品だという。
デザインセンターの一角には、Dellデザインの現在/過去/未来をまとめて確認できるスペースがあり、デザインコンペの結果や現行製品の展示だけでなく、日の目を見なかった過去のプロトタイプ機が山のように置かれていた。ここでは、それらの細かく見ていこう。
次のページでは、「ReGeneration」がテーマのコンペで入賞したコンセプトPCや、秘蔵モックアップの数々を見ていこう。
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