平成記録本の元になる北野天神縁起絵巻自体もオリジナルは現存せず、国宝の承久本も1219年(承久元年)に藤原信實によって描かれたとされる“複製品”だ。それを2008年(平成20年)の技術で、忠実に再現したものが北野天神縁起絵巻「平成記録本」である。今回のアーカイブプロジェクトが始動する以前、北野天満宮ではご神体の複製制作の是非について半年ほど議論が交わされたという。この点について、前述の松川氏は「高精細な複製は学術的にも意義深いもので、美術研究だけでなく、絵画史の研究をする人たちにも貴重な財産です。複製作業の過程で、実物の保存状態を目視できるのも見逃せません。また、オリジナルとは異なる再現文化財として、現在持ちうる技術や素材のこだわりをもって、まずは現状あるものを形として残していくのが大切です」と語る。
実は、九州国立博物館の3階で開催中の「国宝 天神さま −菅原道真の時代と天満宮の至宝−」展では、国宝の北野天神縁起絵巻(承久本)が展示されている。ただし、4巻と6巻、3巻と5巻がそれぞれセットになり、期間内で交互に展示されるもので、しかも巻物のごく一部分を見ることしかできない。その点、1階で行われている国宝 北野天神縁起絵巻 平成記録本展では、日本HPが複製した全9巻がすべてあますところなく展示されている。両者の違いを見比べるのも一興だが、松川氏は「部分展示ではなく、全巻一斉展示の感動は何物にも代えられないもので、作品から発するエネルギーが明らかに違います。この取り組みによって、普段はなじみのない国宝に対する意識改革が行なわれるのもポイントです」とイベントの重要性を指摘した。


こちらは3階で展示されている国宝 北野天神縁起絵巻(承久本)の様子(写真=左)。ガラスを隔てているとはいえ、1階の平成記録本に比べて明るい場所で展示されており、より鮮やかな色調を体験できる(写真=中央と右)
「国宝 天神さま −菅原道真の時代と天満宮の至宝−」展では、北野天神縁起絵巻(承久本)のほかに、米メトロポリタン美術館所蔵の北野天神縁起絵巻(写真=左)や、北野天満宮所蔵の北野天神縁起絵巻(弘安本)、荏柄天神縁起絵巻(写真=右)も展示中だ。描かれている内容が微妙に異なっているのが興味深いThe Metropolitan Museum of Art,Fletcher Fund,1925.(25.224a-e)Photograph©1999 The Metropolitan Museum of Art.
名称 国宝 北野天神縁起絵巻 平成記録本展
会期 10月21日〜11月3日
会場 九州国立博物館 1階ミュージアムホール
所在地 福岡県太宰府市石坂4-7-2
料金 無料(特別展「国宝 天神さま- 菅原道真の時代と天満宮の至宝 - 」は有料)
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