11月10日、ついに「ポメラ」が発売された。「パソコン? いいえメモ帳です」というキャッチコピーのとおり、「メモ帳」のデジタル化として登場したポメラについては、ITmedia Biz.IDの連載にも詳しい。
ただしポメラは、非常に「とんがった」製品なので、話題にひきずられて製品の性質を誤解したまま購入すると「こんなはずではなかった」と思う人がいるかもしれない。この記事では20日以上に渡り実際に使用したうえで「がっかりしないため」の心得をお伝えしたい。決して安い買い物ではないので、購入前の検討の材料となれば幸いだ。
小型ガジェットといえば、半導体の集積技術の向上に比例するように、小型化・高機能・多機能化していくのが常だが、ポメラは決して高機能ではない。ディスプレイはモノクロだし、なにより機能としてはテキストエディタしかない。だが、それでも非常に注目を集めるガジェットとして登場した。多くのニュースサイトでレビューやインタビューが組まれ、それらの記事が軒並み人気記事となっていることからもその注目度の高さはうかがえる。
かくいう筆者もポメラの情報に心躍らせたひとりだ。ライターという職業柄、ちょっとした移動の時間などを有効活用できる執筆環境がほしかったことは言うまでもない。その理想を具体的に言うと、「瞬間起動」「長時間駆動」「タッチタイピングが可能なフルキーボード」「小型軽量」となるだろう。
これを実現するために、過去にはUMPCを検討したこともあったが、小型軽量を考えるとキーボードのタッチタイピングが難しい。また、薄く、軽いノートPCは確かに存在するが、バッグから取り出す/しまう、という動作には多少厚みが増してもフットプリントが小さい方が有利だ。電車で利用する場合、ノートPCだと駅に到着する多少前から準備をしなければならない。たかが数十秒のことと思われるかもしれないが、その数十秒は一行を書くのに十分な時間だ。
そこにきてポメラが登場した。ポメラは片手で取り扱うことができるため、駅に到着し、ドアが開いてからバッグにしまっても十分間に合う。しかも折りたたみキーボードにより、小型軽量とフルキーボードの両立を実現している。これはひょっとしてすごい製品が登場したのではないか? さっそく評価機を確保し、ポメラの到着を待ちわびた。
ポメラの最初の感想は「ごてごてしてるな」というものだった。ディスプレイがついている天板側は折りたたまれたキーボードよりも一回り小さく、閉じたときのフォルムも非常に複雑になっている。これはキーボード下部の蝶番(ちょうつがい)が干渉するのを避けるためだろう。
上部側の蝶番はディスプレイ周囲の一段へこんでいる部分に収まる。同じ手法で下部の蝶番を収めることも可能だっただろうが、そうすると額縁がかなり広い印象になったはずだ。また、ディスプレイ部にはノッチがなく、閉じた状態を固定するようにはなっていない。もっとも、ディスプレイ部はキーボード部よりもひとまわり小さいため、バッグに入れていたら知らないあいだにディスプレイが開いていた、ということはまずないだろう。
さて、実際にポメラを持ってみた感想は、非常に小さい、異常に質感がよい、そして意外に重たい、ということだ。質感に関してはこれは実に驚きだった。ポメラの定価は2万7300円(実売ではすでに1万7000円台のところも見受けられる)。比較対象とすべきカテゴリが難しいが、テキスト編集のみの機器に対してちょっと割高感があるのは確かだ。だが、実物を目にすると持っていてうれしくなる、まさしく「手を抜いていない、ちょっと値の張る文房具」の印象がある。
ラバー塗装なので“高級感”とはちょっと違うような気がするが、質の良さを感じさせる。一方、その質感を高める原因の1つでもあるのだが、持ったときにずっしりとした重量感がある。ところが、実際に測ってみると電池込みでもわずか360グラムしかない。構造上、基板のほとんどの部分は左側にあると思われるのに重心がほぼ中央であることを考えると、筐体(ケース)自体の重さが大部分を占めているのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.