前編に続きポメラの使用感について触れていく前に、まずはこの記事のスタンスを明らかにしておきたい。ポメラの記事はITmedia Biz.IDでも連載記事や、販売元のキングジムへの開発インタビューなどの記事を掲載している。だが、この記事はPC USERという、主にPC関連商品のレビューを中心としたチャンネルのものであり、Biz.IDとは必ずしも評価が一致しない。
端的に言えば、評価するポイントが異なるため、企業として賞賛に値する深い理念がポメラにあったとしても、使い勝手が悪ければPC USERでは否定的な記事になる。あくまでも当記事は購入者、ユーザーの視点で書かれたものであり、ほかのチャンネルとの調整はせいぜい相互リンク程度であることをご理解いただきたい。
正直なところ、このサイズ、重量、キーボードを実現している時点で、予算さえ許せばポメラは文句なく「買い」の製品だ。しかし、随所に「もう一声」という点が見受けられるのも確かである。
例えば、電源スイッチはキーボード右上にあるが、電源を投入するためには長押ししなければならない。メーカーサイトには「パッと開いて2秒で起動!!」とあるし、実際、その程度だと思われるが、キーボードを開くだけで起動するようにしてほしかった。この点については、Engadget Japaneseによる開発者インタビュー記事で、
「電源をいれるという行為をさせたかった。(中略)電池駆動であるために、勝手に電源を入れられてしまうと困る。意識して使うんだぞ、というところで初めて消費が始まるようにしたかった」(Engadget Japaneseから引用/「デジタルメモ「ポメラ」開発者インタビュー 第二部 仕様編」)
という開発者の意向が語られている。だが、ほかに解決策はなかったのだろうか。電源スイッチをキーボード上ではなく、例えばディスプレイの横やキーボードの横や裏など、キーボードを広げる前に操作可能なところにあれば、キーボードを開きながら電源を入れることができたのではないかと、まだ釈然としないところは残る。
かな漢字変換のATOKも変換精度はいまひとつだ。これは「変な変換をする」のではなく「変換できない」というもので、辞書の語い数が少ないことが影響しているように思える。例えば「きょうたい(筐体)」「・・・(…/3点リーダ)」などが変換できなかった。もちろん、単語登録することで変換は可能になるが、最近のIMEに慣れていると人名以外の単語登録はほとんど行ったことがないユーザーも多いだろう。
ATOKはフラッグシップとなるPC用のものと、組み込み用のものがあり、PC用では潤沢なリソースを生かして高性能・高機能を実現しているが、組み込み用では限られたメモリと限られたCPUパワーという制限が課せられている。携帯電話よりもさらに厳しい制限のあるポメラでは、変換時に一瞬つまるようなこともある。ついついPCの環境と比較してしまうが、やはり日本語環境というのはリソース食いなのだと再認識させられた次第だ。
そのほか、変換候補のウィンドウサイズが常に固定で、横幅すべてを覆いつくす割に候補数は6つしか同時表示されないのも不満を感じたポイントだ。
ポメラでのファイルの扱いは、フォルダの概念を持たない簡易的なものだ。その一方でUSBでPC接続するとマスストレージとして認識されるため、PCから利用できる機能とポメラ単体での機能には違いがある。
ポメラ上では拡張子「.txt」のファイルのみが認識され、表示上は拡張子なしのファイル名になる。また、サブフォルダは認識しないし、POMERAフォルダより上にあるテキストファイルも扱うことができない。例外的に辞書をエクスポートするとPOMERAフォルダの上に「atok.dic」というファイルが作成されるが、これはPOMERAのテキスト編集機能では認識されない。
用意されているファイル操作は、ファイルコピー、移動、削除、名前変更など。ファイルコピーは同名のファイルがあっても確認せずに、「コピー〜」というプリフィックスがファイル名につけられる。ファイル選択画面では、ファイルの並び順は生成日時順の固定ソートのみで、保存日時やファイルサイズから確認することはできない。ちなみに、ポメラで入力できるファイル名は半角36文字までだが、コピー時にプリフィックスがついて36文字を超えてしまう場合もある。この場合、コピーされたファイルは「不正文字使用・最大文字数超えです」というエラーメッセージが表示されて開くことができない(ファイル名の変更は可能)ので、ポメラで使うファイル名は短めなものを心がけておくほうがよさそうだ。
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