IBMの伝統を守る「ThinkPad X200 Tablet」は何が変わったのか元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年02月25日 11時11分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

長い歴史を誇るThinkPadの手書き入力対応

「ThinkPad X200 Tablet」

 Tablet PCという言葉が世の中に広まったのは、2002年11月にマイクロソフトがWindows XP Tablet PC Editionをリリース、同OSをプリインストールしたいわゆるTablet PCが登場してからだ。しかし、Tablet PCが登場する以前にも、ペンによる手書き入力をサポートしたPCは存在した。ただ、それらの多くは企業の特定業務向けの性格が強く、幅広く市販されていたわけではない。

 実際、ThinkPadは手書き入力をサポートしたノートPCとして、先駆け的な存在であった。1992年に発売されたThinkPadの前身である「PS/55 T22sx」を皮切りに、コンスタントに製品をリリースしている。ノートPC本体でペン入力をサポートするだけでなく、PenDOSやOS/2 Warpによる手書き入力のサポートなど、ソフトウェア面についても多大な投資を行ってきた。

 それだけに、2002年にマイクロソフトがWindows XP Tablet PC Editionをリリースした際に、直ちに搭載マシンの製品化を行わなかったことは意外だった。しかし、2005年のThinkPad X41 Tablet以降は、モデルごとにタブレット機能を備えたマシンをリリースし続けている。Windows XP Tablet PC Editionのリリース時に参入した多くのベンダーが、現在は手書き機能を備えたマシンの供給を止めてしまったのとは対照的である。

ThinkPad X200 Tabletでは従来モデルより軽量化を実現

液晶ディスプレイを反転・回転させたピュアタブレット状態

 こういった手書き入力サポートの伝統を受け継ぐ最新モデルが、ThinkPad X200 Tabletだ。時間軸的にはThinkPad X61 Tabletの後継ということになる。非Tabletモデルと同様、ディスプレイのワイド化(XGAからWXGAへ)により、縦横比は変わっているものの、底面積はほぼ同等、ボディの厚みも変わっていないが、標準構成時の平均重量は約1.85キロ(X61 Tablet、4セルバッテリー込み)から約1.61キロ(X200 Tablet、4セルバッテリー込み)へと軽量化されている。

 今回試用したモデルも前回取り上げたX200のときと同様、製品番号7448F5Jで示されるトップセラーモデル(レノボの標準構成カタログモデル)だが、この評価機の実測値でも、1.675キロ(本体が1430グラム、4セルバッテリーが245グラム)であり、200グラム前後の軽量化が図られていることが確認できた。その理由の1つは、X61 Tabletで使われていた冷陰極管(CCFL)バックライトに代わり、X200 TabletではLEDバックライトが液晶ディスプレイに採用されたことだろう。BTOモデルではCCFLバックライトパネルも選択可能だが、その場合は100グラム近く重くなると考えられる。

 今回試用したThinkPad X200 Tablet(7448F5J)の構成は下記の通りだ。HDDのベンダー/モデルは個々の製品によって異なると思われるが、重量の実測値を示した関係上、評価機に採用されていたモデル名を明記することにした。なお、直販サイトの価格はキャンペーン適用済みで18万6900円だった(2月25日現在)。

評価機の主なスペック
CPU Core 2 Duo SL9300(1.6GHz)
チップセット Intel GS45 Express
メモリ 1Gバイト×1(PC3-8500)
グラフィックス Intel GMA 4500MHD
液晶ディスプレイ 12.1型マルチタッチ/マルチビュー LEDバックライト
画面解像度 1280×800ドット
HDD 160Gバイト(HGST Travelstar 5K320)
無線LAN Intel WiFi Link 5100(IEEE802.11a/b/g/n)
Bluetooth あり
指紋センサー あり
バッテリー 4セルリチウムイオン
OS Windows XP Tablet PC Edition 2005(32ビット版Windows Vista Business SP1 ダウングレード)

 ちなみに、同じ4セルリチウムイオンバッテリーでも、X200のもの(約198グラム)に比べて重いのは、本機がコンバーチブル型のTablet PCであり、それに必要な回転式のヒンジを設ける都合上、異なる筐体を採用しており、バッテリーパックもそれに合わせてやや複雑な形状となっている(外装の重量が大きい)ためだろう。したがって、ほかのX200シリーズとバッテリーを共用できないが、ドッキングステーション(ウルトラベースX200)は共用することが可能だ。ディスプレイを回転あるいは反転させる回転ヒンジだが、このX200 Tabletから左右どちらにも回転できる、新開発のヒンジが採用されている。

2基のメモリスロットには底面からアクセス可能だ。独特な形状のバッテリーを採用する
液晶ディスプレイは中央の軸から左右どちら側からも回転できる
液晶ディスプレイ右上にある突起は、ワイヤレスWAN用のアンテナだ

直販モデルは液晶ディスプレイを3種類から選べる

 さて、Tablet PCにおいてディスプレイユニットは、単なる表示デバイスであるだけでなく、同時に入力デバイスでもある。当たり前のことだが、これがディスプレイユニットのデザインを困難にし、さまざまな問題をもたらす。2002年にWindows XP Tablet PC Editionがリリースされた際、各社から発売になったTablet PCを見て、ディスプレイの見栄えがよくない(ディスプレイが白っぽく見える)、ツルツルして書きにくい、など否定的な印象を受けた人も少なくないと思う。ディスプレイ表面にペンで直接入力するため、液晶表面にどうしても保護ガラスが必要になること、映り込み防止とペン先が滑らないようにするためのアンチグレア処理が画面のコントラストを下げ、画面に“ギラツブ感”を与えるスパークリングの要因となるからだ。

 しかし、6年あまりの技術進歩は決して小さくない。X200 Tabletには、ディスプレイデバイスとして3つのオプションが用意されている。評価機が採用するペン(デジタイザ)と指によるタッチ入力の両方に対応したLEDバックライト液晶に加え、デジタイザのみ対応のLEDバックライト液晶、デジタイザのみ対応の冷陰極管(CCFL)バックライト液晶の計3種類だ。BTOに対応する直販モデルではCCFL液晶が標準オプションで、デジタイザのみ対応のLEDバックライト液晶が7035円アップのオプション、ペンとタッチの両方に対応した評価機のパネルは2万7300円アップのオプションとなる。

 いずれも12.1型ワイドのWXGA解像度(1280×800ドット)の液晶だが、すべて視認性を改善すべく工夫が施されている。特に評価機に使われているペンとタッチの両方に対応したLEDバックライト液晶では、デジタイザのみに対応したパネルにも採用されている高精細のアンチグレア処理や低反射処理に加え、円偏光処理を行うことで反射を抑えコントラストを大幅に改善し、屋内はもちろん屋外でも高い視認性を獲得している。

12.1型ワイドの液晶ディスプレイを採用する。直販モデルでは3種類の液晶ディスプレイから選べる
マルチタッチ&デジタイザ両対応ディスプレイに採用された低反射技術(Tablet PCの機能と特徴に関するテクノロジーブリーフィングより)
円偏光処理をサポートしたタッチパネル(右)と通常の保護ガラス(左)。天井にある蛍光灯の映り込みの差だけでなく、円偏光処理をしたタッチパネルは高いコントラストが維持されており、画面が白っぽくならない

 一方、このディスプレイユニットは入力デバイスとしても優秀だ。アンチグレア処理が高精細になったせいか、付属デジタイザペンのペン先のひっかかりがよく、非常に書きやすい。XGAからWXGAになり解像度が上がったことも、書き味の改善につながっているのだろう。電磁誘導式のペンと、感圧式のタッチパネルを併用すると、ペンを持つ手の小指の付け根がパネルに触ることによる誤入力が問題になりがちだが、本機ではその対策(デジタイザペンを検出するとタッチパネルからの入力を無視する)が施されており、まったく気にならない。また、ディスプレイ部を回転させスレート型(ピュアタブレットモード)にした際、キーボードにあるトラックポイントが誤動作しないように工夫されている。Tablet PCが登場してからの6年間の技術進歩はあなどれないと痛感する。

液晶ディスプレイの左下に画面回転などのワンタッチボタンや電源ボタンが用意される
デジタイザペンは右側面に収納可能だ
ペン先が赤いのが心憎い。交換用のペン先は5本付属する

 次のページでは、内部のシステムやインタフェースをチェックする。

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