ジャストシステムのMac OS X向け日本語入力プログラム「ATOK 2010 for Mac」(以下、ATOK)がいよいよ店頭に登場する(7月16日発売、ラインアップや価格は「変換精度向上+高速化した「ATOK 2010 for Mac」を参照)。
Macの日本語入力プログラムと言えば、何の疑問も持たずにMac OS Xに付属する「ことえり」を使っている人が相当数いると思われる。標準ソフトではなく、あえて有料のATOKを購入するメリットはどの辺りにあるのか? 両者の差を振り返りながらその意義を探ってみよう。
ことえりというと、古くからのMacユーザーなら「おバカ」というイメージを持っている人も多いはずだ。筆者はMacをなるべくデフォルトで使う主義のため、日本語入力プログラムにもことえりを使っていた。これがMac OS Xの初期まではなかなか「残念な子」だった。長文を打ち込んで変換すると「お前は何を言っているんだ」とツッコミたくなるような的外れな誤変換を連発することも珍しくない。
笑って流せるほどの余裕のあるときならまだしも、校了間際など、切羽詰まった状況で立て続けに誤変換を出されるとたまったものではない。少しでもストレスを減らすために、単語ごとにちまちま文を入力していくスタイルに自分を最適化する必要があったのだ。
しかし、Mac OSがバージョンを重ねるのにともなって、この状況が変わってくる。筆者の感覚では「ことえり3」あたりから少しずつよくなってきて、割と普通に使えるようになった。よく使う言葉を自分で単語登録してきたこともあり、Mac OS X 10.6に付属する最新の「ことえり4」ではかなり不満が減った印象だ。日本語の解析も進化していて、長文を打ち込んでも割と的確なところで文を分けて、そこそこの精度で変換候補を出してくれる。
学習機能も備えており、よく使う語句を優先して候補に出してくれるのはもちろん、最近使った言葉なら冒頭の数文字を入力するだけで別枠で候補として出す機能も備えた。さらに、一度確定した漢字をひらがなや別の漢字に再変換する、部首となる語を元に漢字を探すといった気のきいた小技を使えるまでに成長したのだ。
とはいえ、人間は贅沢を言ってしまうもので、現状のことえりで十分かと聞かれたら「NO」と答えざるを得ない。極論を言えば、絶対に変換を間違えない日本語入力プログラムは存在しないものの、意図した言葉を一発で入力できるコマンドがあらかじめ用意されていたり、誤りをリカバーする手段が多ければ日本語入力はより快適になる。
長年日本語入力に取り組んできたジャストシステムの「ATOK」は、快適さを求める多くのWindowsユーザーに支持されてきた。その事情はMacも同じで、ことえりはシンプルな作りのため、機能面で比べるとやはりATOKに軍配が上がる。これまでことえりユーザーだった筆者から見て、例えば次の5点が「うらやましい」と感じるところだ。
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