過去最高益とジョブズ氏の不在――Appleのこれから:林信行はどう見る?(3/3 ページ)

» 2011年01月21日 15時26分 公開
[林信行,ITmedia]
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ジョブズ氏不在の影響は

2009年9月のスペシャルイベントで半年間の病気療養から復帰したスティーブ・ジョブズ氏。今回も長期の不在ではないといいが……

 こうした勢いを考えると、1〜2年といったスパンでは、あまり同社の動向に影響を与えないだろうことがお分かり頂けたのではないかと思う。

 もちろん、長期的な視点で見れば、ジョブズ氏が日々の業務に直接関わらないことによる影響はそれなりにあると考えられる。しかし今回はCEOの座を退かない形での病気療養とあり、そう遠くないタイミングで職場復帰ができる見込みがあるものと期待している。また、仮に万が一、ジョブズ氏の体力が回復するまで時期が長引いたとしても、まず「3年間」は安泰なはずだ(iPadが、実は日本での販売開始からまだ半年ほどしか経っていないということからも、IT業界における1年がどれだけ長い期間かは実感できると思う)。

 ここで3年といったのは、Appleが常に3年ほどの周期で新しい会社に生まれ変わり、それによって最先端のイメージを保ち続けていると筆者が考えているからだ。

初代iPhoneが登場した2007年、「Apple Computer」は「Apple」に生まれ変わった

 例えば、1998年のAppleはiMacによってPC作りにおけるデザインの重要性を訴え、モダンIOと呼ばれたUSBへの移行を一気に押し進めたメーカーだった。その3年後の2001年、同社は携帯型音楽プレーヤーのメーカーに転身した。次の3年が経過した2004年にはハードウェアの会社ではなく、音楽販売の会社として頭角を現し始めた。そうかと思ったら2007年にはiPhoneで携帯電話メーカーとして無視できない地位を確立し、一方でApple TVでリビングルームへの進出も始める。そして2010年、AppleはiPadを武器に、出版や映画、テレビ(米国での話)といったメディアを巻き込み、さらに大きな革命を巻き起こしている。このように、Appleはほぼ3年周期でそれまでとは違った新しいビジネスに参入している。

 この“3年周期説”は、ワールドワイドマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏には否定されたものの、これこそがAppleがいつまでも成功を続け、常に新鮮でいイノベーティブであり続けた最大の秘密の1つだと思っている。

 ジョブズ氏の代理を務めるティム・クック氏らは1年に満たない短期での会社運営では確かな実績を残しているが、Appleを新しいステージへと導く改革はまだ経験していない。仮にジョブズ氏の休養が長引いた場合、3年後をどう乗り切るかこそが、“ジョブズ不在のApple”が実力を試される本当の機会になるはずだ。


 最近ではAndroidのマーケットシェアがiPhoneを抜いたという話題がよく出るが、仮にそうだとしても、Androidのマーケットシェアが世界中の何十種類の端末によるものかを考えれば、1機種ごと、あるいは1メーカーごとでの比較ではiPhoneに遠く及ばない。日本でもすでに大量のAndroid端末が発売され、中には携帯電話の週間売り上げランキングで数週間トップを取る製品はあるものの、数週間もすると再びiPhoneに主役を奪われる状態だ。おまけに、現在のAndroidは、これまでの国産携帯電話同様に年に2度のペースで新製品発表が行われているが、Appleは1年間、同じ端末を売り続けながら、次の機種が出る直前まで現行モデルが魅力を放ち続けている。

 今回は「ホビー」ということで具体的な数値の発表がなかったApple TVを含め、Appleの多くの製品は、すべてiTunesのアカウントによるゆるやかな囲い込みが行われている。1度iPodを買った人は、携帯電話をiPhoneに、書籍や雑誌、映画を楽しむのにはiPadを、リビングでの楽しみにはApple TVを、というように次々と同社の製品で買いそろえたほうが便利に感じるだろう。

 これはまさに数年前に日本のメーカーが最も得意としていた戦略だ。しかし、家電製品の技術の核がハードウェアからソフトウェアに変わっていった時期にあわせて、家電メーカーの主役も交代してしまった。

 スティーブ・ジョブズCEO自身が、ソニー創業者の盛田昭夫氏らに敬意を払い、そのやり方を真似たように、今こそ日本の製造業もAppleの成功を真摯(しんし)に受け止め、それに学ぶ時期なのかもしれない。

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