主力機能となるデジタル放送機能は「番組を視聴する/録る/残す/編集する/配信する」が行える、昨今望まれる機能をほぼすべて網羅する。
まずは地上/BS/110度CSデジタル放送(プラスひかりTV)に対応するダブルテレビチューナーとハードウェアトランスコードチップでの最大12倍の長時間(AVC)録画機能により、裏番組録画も含めた番組視聴とHDD録画環境をひととおり整える。長時間録画機能は、今回の2011年夏モデルより2番組同時に処理(これまでは同時1番組のみ)できるようになり、さらに使い勝手が増した。
番組録画(やPCデータの保存)は2Tバイトの大容量HDDにTSモード(約17Mbps)で地デジ番組を最大約254時間、スーパーロングモード(約1.2Mbps)で最大約3600時間分保存できる。加えて、USB外付けHDDを別途用意するだけで録画時間を手軽に拡充できるのもPCならではのメリットだ。
テレビ機能は統合アプリケーション「SmartVision」で利用する。リモコンの「テレビ」ボタンよりワンタッチで起動できるのはもちろん、Windows Media Centerのメニューからでもテレビ系機能を呼び出せる。チャンネル切り替えは秒針読みで2秒ほど。体感値はよくある家庭用テレビと同等で、可もなく不可もない印象だ。番組は全画面表示のほか、子画面表示にしてPC作業をしながら視聴することもごく普通に行える。
番組表はフルHDのディスプレイを生かした高精細な構成となっている。最大9チャンネル/約4時間分の番組表を一挙に表示でき、番組を選ぶだけで番組内容の詳細表示や録画予約が行える点を含めて家庭用テレビやレコーダーに劣らないキビキビした操作性を実現する。操作はリモコンの十字キーで行うAV機器と同じ方法以外に、マウスやキーボード操作でもさっと直接選択できるのはPCならではだ。
予約録画は番組表より選ぶ基本スタイル以外に、カテゴリ/キーワード検索、そして「新番組おまかせ」の便利な自動録画機能も備える。新番組を時間帯別に監視してくれるので、昼ドラや深夜アニメの新番組も初回から見逃さないよう工夫できる。
地デジPCが家庭用AV機器に対する弱点として、テレビ機能の操作はPC/Windowsが起動してからとなる点、つまり「いつでも、即時にパッとテレビが起動できない」ことが挙げられる。他社の地デジPC(例えば、ソニー「VAIO L」)にはWindowsから独立したプラス1基の地デジチューナーも内蔵し、視聴だけなら即起動を実現するモデルも存在するので、こちらはニーズ次第で今後の課題の1つとなる。
もっとも、本機は秒針読み約58秒でWindows 7が起動し、スリープ状態からであればほぼ一瞬で復帰する。また、録画予約した時間までにスリープ/休止状態/シャットダウン状態から自動復帰→録画終了後に自動スリープ/シャットダウンするといった、メーカー製PCならではの高度な電源制御はあたり前のように行ってくれる。
番組の録画は、放送波をそのまま記録するTSモード(ダイレクトモード 地デジハイビジョン放送は約17Mbps、BSデジタルハイビジョン放送は約24Mbps)のほか、MPEG-4 AVC/H.264形式で録画する長時間モードを選択できる。前述の通り、今回の夏モデルよりダブルチューナーで2番組同時に長時間AVC録画が行えるようになり、録画予約時にユーザーがあれこれ悩まなければならない機会はかなり減った。長時間録画モードは、ビットレート約8Mbpsのファインモード、同約4Mbpsのファインロングモード、同約2Mbpsのセミファインロングモード、同約2Mbps/720×480ドットのロングモード、同約1.2Mbps/720×480ドットのスーパーロングモードを用意する。モードの変換は録画後でも個別に行える。
ちなみに専用チップによりトランスコード処理を行うため、長時間録画モードでの録画中もCPU使用率はほとんど上昇せず、PC動作にもあまり影響がない。録画中にPC作業する場合も安心だ。
録画した番組は、本編とCM部分を判別し、本編部分のみを再生(再生時に本編以外を自動スキップする)「見たいとこ再生/オートチャプター」や音声付きで1.2倍速再生する「お急ぎモード」といった便利再生機能のほか、携帯電話やポータブルプレーヤー用に解像度を落としつつSDメモリーカードへダビングする「外でもVIDEO」、Blu-ray Disc/DVDメディアへの記録、家庭ネットワーク内で録画番組を共有/配信できるDLNAサーバ機能など、“録画したその後”も番組をしっかり楽しめる。
サウンド面についても良好で、特に低音再生のためのウーファーを別途搭載する効果が大きいと感じる。普段のよくあるPC標準搭載スピーカーで再生する音とは奥行き/広がり感が相当異なり、あるBlu-ray映画での“ズドーン”“ズシーン”音をかなり強烈に再現したのは驚いた。暗くしたプライベートルームで1人じっくり映画に没頭したい人にはお勧めだ。音質調整ソフトウェアの「MAXX Audio」により、低音/高音/ステレオ感の効き具合を調整することもできる。
このPCとしてかなり上々のYAMAHAスピーカーシステムは、テレビや映画だけでなく音楽プレーヤーとして活用できるクオリティでもある。音楽CDや圧縮音楽をWindows Media Centerなどを用いて再生する使い方以外に、外部RCA入力も含めた音声入力端子を利用し、iPodやウォークマンなどを接続する使い方もアリだろう。
搭載するBlu-ray Discドライブは、今回の新モデルよりBlu-ray Discの拡張規格「BDXL」に対応のものに刷新された。Blu-ray/BD-AV形式の記録においては、最大100Gバイトの3層BD-R TLメディアまでをサポートする。
DTCP-IPによるホームネットワーク配信機能(DTCI-IPサーバ機能)は、SmartVisionのユーザーインタフェースと共通する「ホームネットワークサーバー」で設定する。これにより、本機で録画した番組は同一ネットワークにあるDLNAクライアント機能を搭載するテレビやAV機器、ゲーム機、PCなどで再生できるようになる。
ネットワーク配信機能は今回のモデルで初搭載というわけではなく、PCだけの機能でもないのだが、家庭内のどの部屋でも録画したハイビジョン番組を共有して楽しめるようになる、新たなテレビの使い方を実現するのが魅力だ。この機能は“これができるなら/これがやりたいので”と、昨今の地デジPCにおける購入動機の高い順位に上ってきているという。
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