2011年のタブレット端末を冷静に振り返る本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2011年12月28日 15時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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iPadの強さは今後も続くか

アップルの「iPad 2」は堅実なアップデートで広く受け入れられた

 一方、「iPad 2」はデュアルコアによる高速化、薄型化、軽量化と、ハードウェアの基礎体力が図られた堅実なアップデートが行われた。独立したコンピュータとしての色合いが濃いAndroidタブレットに対し、iPadはネットワークコンテンツを受け身で楽しむ要素が強いと感じるが、現時点で消費者は後者を選んでいる。

 何かしたいことがあるなら、適したアプリを捜してインストールしタップするだけ。多くの場合、設定なしで直接ネットワークサービスへとつながっていく。最もシンプルにネットワークサービスを活用する、その窓口として選ばれているのがiPadという印象だ。

 年末のこの時期、すでに解像度とパフォーマンスを大きく引き上げた次期モデルの登場が近いとうわされているが、おそらくiPadの強さは今後も続くと思う。

2011年7月に米国で発売されたwebOS搭載タブレット「HP TouchPad」

 Hewlett-PackardのwebOS搭載タブレットには大いに注目していたのだが、早々に市場から退場してしまった(商品そのものの問題よりも、事業計画の面での迷走が原因だけに実に残念だった)。単に1つのプラットフォームが消えてしまっただけでなく、独走するiPadが市場を占有する期間が、これによって大きく延びることになるだろう。

 もちろん、Android 4.x採用タブレットが大量に出てくれば、自然にAndroidのシェアが伸びていくとは思う。しかし、この1年を振り返ってGoogleは、Androidを巡るエコシステム全体の安定化にあまり関心を示してこなかった。iPadよりもシステム構成やアプリケーションの自由度が高いAndroidタブレットは改良次第で伸びる可能性は多いにあると思うが、一方で行き詰まり感もある。

 これはタブレットだけの問題ではなくAndroid採用端末一般に言えることだが、各種のマルウェアがアプリケーションの流通に大量に混入し、どんどん増え続けているというのに抜本的な対策は施されていない。最終製品の責任は、製品を販売するメーカーにあり、無償で基本ソフトを提供しているGoogleに直接的な責任はなく、法的な拘束力も存在しないだろう。しかし、プラットフォーマーとして尊敬できる立ち位置にあるかというと、筆者はそうは思えない。

 Androidを基礎に多くの情報機器が生まれ、世界中で使われているのだから、そのエコシステムの構築に対してGoogleはもっと責任を持つべきだろう。それができないなら、タイトなルールでエコシステムをコントロールしようとするアップルのほうが、ずっと意欲的だし利用者の混乱も少ない。Googleは携帯電話事業者やメーカーに寄せられている、さまざまな利用者からのヘルプメッセージに耳を傾けなければならない。

Googleが変わるか、あるいは……

 ということで、今年1年を振り返って最も強く思うのは、タブレット端末がもう一皮むけるためにGoogleが変わらねばならないということ。あるいは、Android以外の基本ソフトを構築する道を目指すのも悪くないのではないだろうか。

 スマートフォンでサムスンが独自OSの開発を決してやめないこと、「PlayStation Vita」が採用する独自の基本ソフトがなかなか高い完成度に仕上がっていること、利用されているスマートフォンのアプリケーションには偏りがあることなどを考えると、Androidを使うよりはよいのでは? と思うところもあるからだ。その意味でもwebOSの退場は、今年のIT業界における大きな事件だったと思う。

 2012年は……というと、そこはまた年初のコラムで話をしたい。来年、筆者はパーソナル情報ツールとしてパソコンへの揺り戻しがあると考えている。

 ではみなさん、よい年の瀬を!

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