80点の考えでもすぐに行動するのがレノボが求めるスピードですレノボ・ジャパンのトップに聞く(1/2 ページ)

» 2012年09月28日 19時19分 公開
[長浜和也,ITmedia]

微妙な立場に見えるレノボ・ジャパンのトップは日々何を考える

 レノボ・ジャパンのトップは、本国本社との関係に加えて、国内でもNEC・レノボグループが上に立ち、NECパーソナルコンピュータとの連携が求められる。一方、ノートPC、デスクトップPCという“商材”は、市場の動きが速く、決断のタイミングは切れ目ない。関係各部署との連携と調整を重ねながら、日々刻々と決断をしなくてはならないという、日本で活動するPCメーカーのトップで、最も難しい立ち位置にいるといえるのではないだろうか。

 その、難しいトップに2012年4月から就任したのが渡辺朱美氏だ。それまで、日本IBMの執行役員を歴任してシステム事業という「重厚長大」なビジネスを経験してきた渡辺氏が、ノートPCや液晶一体型PCが主力のクライアントPCといった「軽薄短小」ビジネスのトップとして難しい立ち位置で日々の決断を下している。さぞ尾長が痛い毎日のでは……、と、外にいる人間は思ってしまう。

 はたして、悩みの多い毎日なのか、それとも、意気揚々と自由自在にレノボ・ジャパンを成功に導く毎日なのか、その“本心”を聞いてみた。

レノボ・ジャパン代表取締役社長の渡辺朱美氏

日本で攻めるはコンシューマーユーザーの市場なり

──グローバル市場では、競合するPCメーカーを上回る成長率を長期に渡って維持していますが、その要因はどこにあるのでしょうか。

渡辺氏 レノボはグローバルの市場で11四半期連続で成長を続けていて、現在コンシューマーPCメーカーのシェアでは15パーセントで2番手に位置しています。さらに、トップとのシェアギャップも0.7ポイントまで縮めました。

 この要因は、レノボがグローバルで実行している「守りと攻め」戦略です。これは、レノボ本社が世界規模で大きな“守り”と“攻め”を設定し、それを各国のレノボが、それぞれの国の市場にあわせた強みと挑戦する特性にあわせた守りと攻めのポイントを設定して実行します。各国とも、守るポイントは、すでに強みを発揮している領域であったり得意とするカテゴリーの市場であったりします。そして、攻めるのは、十分に強さを発揮できず、“伸び代”が残っている領域になります。そこに投資するのが、レノボの“攻め”です。

 日本市場でレノボ・ジャパンが守るのは、ThinkPadシリーズでシェアのトップを確保している法人ビジネスです。一方、攻めるのは、中小規模の事業所ユーザーとコンシューマーユーサーです。そのため、どちらのユーザーに対しても、販売をお願いする企業との関係構築と支援を重視しています。以前は、Webページによるダイレクト販売を中心にしていましたが、複雑で購入するユーザーを混乱させている面もありました。この反省から、ダイレクト販売主体から販売パートナー主体にシフトしています。

 日本の流通では量販店の対応が重要になりますが、そのための人材はレノボ・ジャパンにそろっています。それより、これから重要になるのは、レノボ・ジャパンというブランドをコンシューマーユーザーに認知して信頼してもらうことです。ThinkPadのブランドは、日本の個人ユーザーに対しても知名度も高く信頼されています。“Lenovo”というブランドも同じように認識してもらいたいですね。そのために、2011年は宣伝にも力を入れ、中田英寿氏を起用した「FOR THOSE WHO DO」キャンペーンを実施し、これは、2012年も継続して行っています。

 さらに、これからは、店頭におけるプロモーションも強化します。これまで、四半期に5回程度だったのを10回まで増やす予定です。実際に製品を触っていただき、IdeaシリーズだけでなくThinkシリーズのCTOの対応もできるリアルショップも現在の6店舗から年度末までに二桁まで増やします。

世界市場で11四半期連続で成長を続け(写真=左)、現在シェア15%を確保して第2のPCメーカーになった(写真=中央)。その成長を実現したのが「守りと攻め」の事業戦略だ(写真=右)

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