円安を機に年末から続いているPCパーツの値上がりは、街全体で年末年始セールの在庫が薄くなり、流通が通常運転に戻ったことで、より顕著になっている。パーツショップに張り出されたCPUやメモリ、HDD、SSDの価格表は頻繁に更新されており、「仕入れ値ベースの値上げだけでなく、他店の価格による調整も頻繁に入るようになったので、年明け早々店外の価格表は張り替えを諦めました」(パソコンハウス東映)という声も聞かれる。
特に、年明けから激しく値上がりしているのがメモリだ。「売れ筋のDDR3-1600の8Gバイト2枚セットは、11月末ごろ最安クラスが5000円を切っていましたが、いまでは7000円を切るのがやっとという状況です。それでも安いと認識されています」(PC DIY SHOP FreeT)。
メモリがほかのパーツよりも目立って高騰しているのは、毎年恒例のチップ高の影響が出始めているためだ。メモリの主要生産地である東アジアは、旧正月(1月後半〜2月中旬ごろ)に大型連休を設ける国や地域が多く、この時期は生産ペースが落ちるため価格が上昇する。旧正月明けには再び元に戻るのが恒例だが、今年はここに円安が重なるため、2月後半以降にも元の水準に戻るのは厳しいという見方が大半だ。加えて、メモリの高騰自体が過去数年よりも大きく響くという声もある。PC DIY SHOP SHOPは「最後の国内DRAMメーカーだったエルピーダメモリがなくなったのも無視できません。円安と旧正月の両方のクッションがなくなったようなものです」と語る。
メモリほど顕著ではないものの、CPUとHDD、SSDの値上がりも止まらない。「HDDはここ3カ月の値下がりが半月で“なかったこと”になるくらいです。CPUも主力のIvy Bridgeは昨年4月の発売時の水準になっています」(TSUKUMO eX)といった状況だ。
それでも、円安の動きが止む気配がないため、複数のショップでは駆け込み需要が発生している様子だ。
某ショップは「メモリあたりはちょっと様子見する向きもありますが、HDDやSSDは複数台購入する人が年明けから明らかに増えています。すると商品の回転率がどんどん上がり、最新の円安の影響をモロに受けたものがどんどん入ってくるようになります。そこに店舗間の価格競争やマージンを稼ぐための便乗値上げなどの動きも加わって、円相場以上のペースで価格が上昇する可能性もあります」と話していた。
一方で、「タイ洪水のときのようにモノの生産がストップしたわけではないので、パニックにならずに、必要なら数百円高くなっていても買うくらいの感覚で見守るのがいいんじゃないでしょうか」(別のショップ)といった声もある。実際、主力モデルが軒並み品薄になっているパーツはまだみられない。
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