Wi-Fi WALKER WiMAXは、前モデルより大容量のバッテリーを備え、長時間動作+共通ACアダプタ04利用で短時間充電もサポートするなど、基本性能としては正常進化したと評価できる。
ただ、使い勝手が悪くなった部分もある。
1つめは、WiMAX/3Gの接続モードを切り替えるボタンに「モード切り替え」に関する表記がアイコンのみとなり、一目では分かりにくくなってしまったこと。
本機はWPSボタンの長押しで「接続モード切り替え」が機能するが、このボタンのアイコンだけでは……マニュアル類を参照しなければとよほど慣れているヘビーユーザーでなければおそらく分からない(知れば、ああそれを示すアイコンなのかと分かるのだが)。Wi-Fi WALKER DATA08Wは切り替えを示す「文字列+アイコン表記」があったので、それだけで理解できたのだった。
前述した通り、WiMAXエリアが比較的整備されている都市部では、より高速なWiMAXに固定して使い、ダメだったら3G接続に切り替える──という使い方もありである。そういった意味でこの機能の利用頻度は意外と高い。もちろん1度やり方を覚えればよいだけではあるが、WiMAXと3Gを両方使える機能は本機の軸になるもの。リニューアル版の本機でわざわざわかりにくく変えてしまったのか、少し謎である。
また、Wi-Fi WALKER WiMAXは、固定回線と連携したアクセスポイントなどとして使用する有線LANポート付きクレードルは用意されない。クレードルがあれば自宅での充電作業がかなりラクになるし、旅行や出張時にホテルの固定回線を共有するシーンにも便利に使える。特にWiMAXは一般ユーザー(学生層など)における自宅用ブロードバンド回線としても使えるポテンシャルがあるので、こちらも新モデルでなぜなくしてしまったのか……かなり残念である。
最後に初期費用と月額利用額をチェックしよう。
Wi-Fi WALKER WiMAX用の料金プランはKDDI契約の場合、KDDI WINシングルフラットWiMAXの利用料5460円/月に、「WINシングルフラットおトク割」の割引額1580円を適用することで、3880円/月(2年単位の継続契約が条件)となり、これにISP利用料の525円(au.NETの場合)を加えた、計4405円/月が2013年5月現在の月額料金となる。
こちら、WiMAX単体でのUQ Flat 年間パスポートプラン(UQコミュニケーションズ契約の場合)の月額料金は3880円/月のため、これに525円/月を追加するだけでauの3Gデータ通信“も”利用できるという計算だ。auのWiMAX対応スマートフォンをご存じの人“は、+WiMAX”を思い浮かべていただくのもよさそうである。
なお本機はKDDI版とUQコミュニケーションズ版がそれぞれ販売されている。月の合計額は同じなので、同じに見える両者の販売内容も、細かく見ると内容が若干異なるので念のため紹介したい。
KDDI契約の場合は、新規契約時の端末価格が2万8560円(2013年4月末時点、以下同)。毎月の通信料からの割引額(毎月割)は1190円に設定されている。2年間利用時の端末割賦代金と毎月割の割引額が同額ということで、いわゆる「実質0円」の機種である。
一方UQコミュニケーションズのUQ Flatプラス契約は、端末価格1円(UQオンラインショップ価格の場合)が初期費として発生し、毎月割のような利用料からの割引はない。
一応、初期費と年間の合計コスト含めて考えるとわずかに異なる(なお、どちらも初期登録料3150円は発生)。ただ、UQ契約は新規契約時に端末代金を一括支払いしていると見なす買い方のため、仮に更新月以外で解約する場合でも契約解除料の9975円のみの支払いで済む。対してKDDI契約は同じく契約解除料9975円に加えて、分割支払いしている端末代金の残金もこの際にまとめて支払う必要が生じる。
LTEサービスも含めて進化が激しい昨今のモバイルデータ通信サービスにおいて、筆者としては率直なところ本機を2年使い続けるのは少々厳しいかなと思う。もし2年の契約期間中に解約する可能性があるならば、UQ契約のほうが結果として割安になるであろうと計算できる。初期コストとして発生する端末代金の差は、この点の違いと思うとよさそうだ。
もう1つ、So-netのモバイルデータ通信サービス「So-net モバイル WiMAX+au」などの一部MVNOでは、新規契約者向けにWi-Fi WALKER WiMAX本体と「共通ACアダプタ04」(auショップ価格は1575円)をセットにした機器代金が無料になるキャンペーンなども行われている。こういったキャンペーンをうまく活用することでトータルコストを抑えた運用も可能なので、端末導入の際は参考にしてほしい。
Wi-Fi WALKER WiMAXは、前モデルであるDATA08Wから“ハイブリッド”な機能や特徴を継承しつつも、WiMAXハイパワーは非対応、3Gの通信速度も高速化されていないなど、実は通信仕様の性能向上はない。ただ、DATA08W比で大容量のバッテリーを備え、連続通信時間が延長されたこと、そして高出力仕様となる共通ACアダプタ04の利用が正式にサポートされたことで、充電時間を短縮できる──という改善を行った正常進化形であることは高く評価したい。
やはり高速+通信量制限なしのWiMAXと、いざという時に安心の広エリアなau 3Gが両方使えること。WiMAXサービスに、サブ用途で使う3G通信機能をプラス525円で追加できる──とみなせること。これがポイントだろう。1台で高速+広エリアをカバーしたい人、特に「つながらなければ仕事にならない」と考えるビジネス層に向く。同様の使い勝手を実現できたauのWiMAX内蔵スマートフォンが現ラインアップからなくなってしまった今、この組み合わせのハイブリッドモデル……実は貴重なのかもしれない。
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