どちらも期待を裏切らない“正統進化”――林信行の「iPhone 5c/5s」徹底レビューライフスタイルを彩る「5c」、未来を映す「5s」(2/4 ページ)

» 2013年09月18日 10時01分 公開
[林信行,ITmedia]

よりファッショナブルに楽しく使う人の「iPhone 5c」

 iPhone 5cは、より親しみやすくフレンドリーなiPhoneだ。2010年、iPhone 4が発表された時、どこか一線を越えてしまった感のある精巧な美しさが世界中から高い評価を受ける一方で、親しみやすい丸みを帯びたプラスチック素材の背面に親しみを持っていた女性のあいだからは「なにか急に男っぽくなってしまった」「可愛くなくなった」という声を聞くことも多かった。そうした人々の中には「可愛いから」という理由でiPhone 3Gや3GSを使い続ける人も少なからずいた。

 実は今回、iPhone 5cで、アップルが一番応えたかったのが、こうした層の要望ではないかと思う。残念ながら今となっては、世の中のトレンド的にも3Gや3GSのような分厚い本体にするわけにもいかず、少なくとも9ミリ以下の薄さの中に10時間以上は動作をするバッテリーを搭載しなければならない。

iPhone 5cの厚みは、iPhone 3GSのプラスチック背面程度。この薄さの中に画面も音量スイッチもすべておさまり、それでいて処理性能も通信速度も数十倍よくなり、画面解像度やカメラの解像度も劇的にあがっている

 このためiPhone 5cの背面は、3GSなどと比べるとやや角張った形状になっている。というよりはボリュームボタンなどがついた側面をしっかり面として残しながら、その面と背面の境界線が分からないくらいに角を丸めた形状になっている(3GSでは丸みの一番外側の出っ張った部分にボタンが用意されていた)。本体を握ったとき、手の腹に感じる側面のソフトな面がiPhone 5cの触り心地におけるたのしみの1つだ。

 iPhone 5cでは、この触っても楽しいiPhoneに5色のカラーバリエーションを用意した。グリーン、ブルー、イエロー、ピンクそしてホワイト。なんと初期化してもiPhone本体が、自分が何色だか認識しており、きちんと本体色にあわせた壁紙が表示されるなど、細かいこだわりはさすがアップルらしい。

 さて、色合いはホワイトモデルも含めて、どの色も「鮮烈」な印象の色彩で、若くて自分の個性を確立している人なら、迷わず選べる色であり、逆にやや歳を取ってきた人にとっては若さが試される色合いかもしれない。

 私などはシンプル好みなのでホワイトの美しさに惚れ込んでしまっているが、もっと若々しくグリーンにしようかなどと悩んでいる部分もある。Twitterでの評判を見ていると定番のブルーやピンクはもちろん、スマートフォンの色としてはかなり珍しいイエローも人気が高いようだ。

 iPhoneが発売されたとき、電車などで誰かが使っていると、すぐに「あれiPhoneだ!」と分かる存在感を示していた。この5年の間に、アップルのシンプルなデザインが勝利した結果、今ではどの会社のスマートフォンもちょっとずつ似てきてしまっているが、今回のiPhone 5cに関しては、少なくともあと1〜2シーズンは他社のスマートフォンに見間違えられることはないだろう。

5色の本体と6色の専用カバーで多彩なカラバリが楽しめる

 本体色との色の掛け合いを楽しめる純正ケースを使えばなおさらだ。アップルはiPad 2でスマートカバーという、カバーを本体のハードウェアと完全に一体化するカバーを開発して以来、本体と純正アクセサリーの組み合わせで製品を彩る技を覚えた。これまではiPadシリーズだけだったが、今回のiPhone 5cでそれがiPhoneにも広がった。なんと6色の純正ケースが用意されている。これにケースなしのパターンを加えると、本体色5色×彩り方7パターンの合計35種類のカラーバリエーションが楽しめる。1週間毎日違ったケースを装着する、といった楽しみ方もできるのがiPhone 5cなのだ。

ビデオ通話や自分撮りに使うFaceTime HDカメラ、画素数は同じだが、センサーの画素サイズが大きくなったことでより色の表現がリッチになった。室内でのビデオ通話でも相手の細かな表情まで楽しめる(モデル/女子高生起業家、椎木里佳)

 もちろん、iPhone 4sの上位機種だけあって、性能などもかなりよくなっている。基本の性能はiPhone 5とほぼ同じ(つまり4s以前からは劇的に向上した)。それでいて自分撮り用のFaceTime HDカメラが画素数こそ同じ120万画素ながら、より大きなセンサーを搭載し、より豊かな色彩を捉えてくれる(つまり、きれいに写真が撮れる)ようになったり、バッテリー寿命が延び、iPhone 5では通話時間8時間だったものが、5cでは10時間になっている。

 このように本体の魅力だけでも、十分素晴らしいiPhone 5cだが、それに加えてOSが最初から最新のiOS 7になっている点も魅力だろう。iOS 7というと、どうしても見た目の違いばかりが話題になりがちだ。確かに最初はこの見た目の違いに喜び、そして時にはとまどうかもしれないが、使い慣れれてくるとものすごく細かいところにiPhoneライフを楽しむためのさまざまな工夫が凝らされていて驚く。

 例えばこの記事を書いている間も、音楽再生機能に驚いたところだ。筆者はすでにiTunes Store経由で、かなりたくさん曲を購入している。iPhone 5cに購入済みの曲をダウンロードして再生しようとしていたら、なんとわざわざダウンロード(インターネットから転送を)しなくても、iTunes in the Cloudにある曲を、そのまま再生できることに気がついた。残念ながら映画はそういうわけにはいかなかったが、音楽ビデオに関しても同様で、ストリーミングで再生できてしまう。これは筆者のような、iPhoneのストレージのかなり大きな部分を曲や音楽ビデオが占めているユーザーにはかなりの容量節約になる。人によっては、これでどの容量のiPhoneを買うかの基準が変わってくる人がいるかもしれない。

 またカメラ機能にもinstagramを思わせる正方形写真を撮る機能もあれば8種類のフィルターエフェクトをリアルタイムで楽しめる機能も追加されている。大量に撮り貯めた写真を、いつ撮ったか、どこで撮ったかの情報を元に自動的に仕分けしてくれる「コレクション」機能など、一度、撮った写真を見つけやすくする機能も充実している。まさに、思い出を記録する最良の1台であると同時に、思い出を再生する最良の1台にも仕上がっているのだ。

iPhoneに撮り貯めた写真は、撮影した日時や場所に応じて勝手にコレクションと言う形でまとめられる。あの時、あのパーティーで撮った写真といったものを後から探すとき、自動的に整理されているのでとても便利だ

iTunes Storeで購入済みの曲は飛行機内やトンネルの中でもない限りインターネットからストリーミングで再生できるため、iPhoneの容量に負担がかからない

 iOS 7が使えるのはiPhone 4からなので、iPhone 3Gや3GSの利用者にとっては、このOSが使えるというだけでも機種変更の大きなメリットになる。しかも、この最新鋭のiPhoneが、2年契約を結べば、どのキャリアのモデルでも実質無料で手に入ることを考えると、これは相当魅力的な選択肢になるだろう。

 米国の「iPhone 5c」の広告の最後は「For the colorful」という言葉で締めくくっている。日本語に意訳すれば「個性の際立った方々へ」だろうか。まさに細かいテクノロジーよりも、自分のライフスタイルを彩るアイテムとしてのiPhoneに魅力を感じる人には理想のiPhoneに仕上がっているはずだ。

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