iPhone 5sの特徴をもう1つ挙げるとしたらカメラ機能の改良だ。解像度は?と聞かれると前のiPhone 5と同じ800万画素。じゃあ、変わっていないのか、と言われると明らかに変わっている。スペック表上の数字勝負ではなく、生活の中、仕事の中で実際に使ってみたときのパフォーマンスで大きな差を生み出す実にアップル的な改良が施されているのだ。
百聞は一見にしかずで、いくつかiPhone 5とiPhone 5c、iPhone 5sで撮ったサンプル写真を見比べてみてほしい。
2012年までは、iPhone 5の写真でもデジカメ顔負けなくらいキレイだと思っていた人が多いはずだが、同じ800万画素でも、iPhone 5sでは1つ1つのCMOSセンサーを従来より15%大きくすることでノイズを低減し、より鮮明な写真を撮れるようにしている。
こうして比較してみると、実はiPhone 5cのカメラ性能もかなりあがっているように感じるが、それに加えてiPhone 5sは、f/2.2の明るいレンズを搭載することで、夜景撮影などにさらに強くなっている。
そしてなんといっても素晴らしいのが、新たに追加されたTrue Toneフラッシュ機能だ。フラッシュ撮影をすると、どうしても青みがかった平面的な光になってしまい、写真の雰囲気が台無しになってしまうことが多い。このため、筆者もそうだが、多少、暗くても手ブレしないように頑張ってフラッシュなしで撮影し、ノイズが多い写真でがまんしている人も多いと思う。
しかし、iPhone 5sは通常フラッシュに加えてアンバー色のフラッシュも搭載し、環境光の色温度などにあわせて2つのフラッシュの明るさを1000通りのコンビネーションから選んで調整して、極めて自然な写真が撮ってくれる。ロウソクの灯りを囲む写真なども驚くほどきれいに撮れるのだ。
iPhone 5sでは、これ以外にもマシンガンのような音を鳴らしながら秒速10枚で連射し、それらの写真を瞬時に分析して、ぶれが少ない写真や人々が笑顔で写っている写真など、条件がもっともよい最適な1枚を選び出して提示してくれる。もちろん、その1枚が気に入らなければ「よく使う項目を選択…」という箇所をクリックすると、そのほかの候補が表示される(この部分の日本語が分かりにくいことはアップルに伝えた。近々、修正されることを期待している)。
カメラ関連ではこのほかにも、手ブレ補正機能やスローモーション撮影機能もある。スローモーション撮影は毎秒120フレームで動画を撮影し、撮影した動画の一部をスローモーション(最も遅くて4分の1のスピード)に指定できる機能だ。
iPhone 5sの販売が始まったらYouTubeはスローモーション動画であふれかえることが今から期待できそうだ。さらにiOS 7の新機能としてビデオの3倍デジタルズーム撮影や正方形写真の撮影、リアルタイムで効果のほどが分かる8種類の写真フィルタなども用意されている。画素数だけでいえば、iPhone 5sを上回る製品もあるが、何も考えずに楽しく美しい写真を残すのであれば、iPhone 5sはかなり魅力的といえる。
楽しい21世紀のライフスタイルのパートナーとしての側面を進化させたiPhone 5cと、新しい未来を切り開く革新性をさらに先へ進めたiPhone 5sは、どちらもこれまでのiPhoneの正統な進化形だ。
おそらくどの色を選ぶかで迷うことはあっても、どちらの機種を選ぶかは、人それぞれで最初から答えが決まっており、迷う人はほとんどいないだろう。どちらを選択しても、これまでのiPhoneがそうだったように、高い満足度が得られることは間違いない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.