EIZO(旧社名:ナナオ)といえば、さまざまな用途向けの液晶ディスプレイで知られる国内老舗メーカーだ。写真家やデザイナー御用達のカラーマネジメント対応機種「ColorEdge」、ゲームや映像鑑賞に最適な「FORIS」、医療現場に特化した「RadiForce」、産業用の「DuraVision」、航空管制市場向けの「Raptor」など、ディスプレイだけで実に幅広いラインアップを持つ。
その中にあって、「FlexScan」はビジネスからプライベートユースまで幅広い用途を想定した汎用(はんよう)性の高いスタンダードディスプレイだ。昨今は疲れ目対策や節電にも注力した「FlexScan EV」シリーズを積極的に製品展開しており、秋冬商戦に向けて5機種を新たに投入している。
5機種の画面サイズは22型/23型/24.1型と細かく分かれており、シリーズの中堅クラスを補強するとともに、新たに22型モデルを追加することで、より細かなニーズへの対応が可能になった。ここでは、最上位機にあたる「FlexScan EV2436W-Z」の性能を探る。
EV2436W-Zは、その型番が示すように24.1型ワイドの液晶パネル(1920×1200ドット表示)を搭載している。2012年8月に発売された「FlexScan EV2436W-FS」の後継機にあたるが、カタログスペックにはさほど違いはないマイナーアップモデルだ。
とはいえ、IPS方式のノングレア液晶パネルにより、水平/垂直とも178度の広視野角を確保しつつ、輝度は300カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1、応答速度は6ms(中間階調域)と、汎用ディスプレイとして十分な基本性能を備えている。輝度は調整幅が広く取られているため、明るすぎてあるいは暗すぎて困ることはない。最大表示色は1677万色(10ビットLUT)、色域は後述の測定結果からsRGB相当だ。
画面のアスペクト比は現在主流の16:9ではなく、16:10と縦に少し長い。1920×1080ドットのフルHD表示より縦が120ドット長いだけなのだが、実際に使ってみるとこの差は意外に大きい。24.1型ワイドと大きめの画面も合わせて、A4見開き(420×297ミリ)を実寸表示したうえで、ツールバーを周辺に配置できる広い作業領域が得られる。
EV2436W-Z最大の特徴は、「EV」シリーズという名称の元にもなった「EcoView」機能にある。これはユーザーに負担をかけることなく、疲れ目対策と消費電力の抑制を自動的に行う機能群のことだ。
具体的にEcoView機能は、使用環境の明るさを検知してバックライト輝度を自動調整する「Auto EcoView」、画面全体の明るさやコンテンツの視認性が保持されるようリアルタイムで補正しながら、入力した映像に連動した輝度抑制を自動で行う「EcoView Optimizer 2」、ユーザーの離着席を人感センサーが自動的に検知して省電力モードの移行/復帰を制御する「EcoView Sense」の3つから成り立っている。前の2つは節電と疲れ目対策の両方に、後の1つは節電に有効だ。
節電と疲れ目対策には、液晶ディスプレイの輝度を視認性が確保できる範囲内で下げることが重要だが、細かい輝度管理を長期間に渡って継続するのはユーザーの負担が大きく、実践していくのが難しい。外光が窓から入ってくる昼間と、照明だけの夜間では室内の明るさがかなり変わり、当然ディスプレイ表示に最適な輝度も異なるが、イチイチ輝度調整するのは手間がかかる。こうした部分をディスプレイ側が担当してくれるのは非常にありがたい。ちなみに消費電力は最大で60ワット、標準時で19ワット、節電時と待機時で0.3ワット以下となる。
疲れ目対策としては、色温度を下げることでブルーライトを抑制し、紙のような柔らかな表示とする「Paper」モード、そして独自の「EyeCare調光方式」を採用しているのも強みだ。EyeCare調光方式はLEDバックライトのちらつきが気になるという一部ユーザーの要望に応えたもので、LEDバックライトの点滅時間で明るさを制御するPWM調光と、電流を増減させることで明るさを制御するDC調光方式を併用し、それぞれの長所を用いることでチラツキを低減している(EyeCare調光方式の詳細はこちら)。
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