AMDは、開発コード名“Kaveri”(カヴェリ)で知られる新しいAMD AシリーズAPUを発売した。同製品は、CPUとGPUの連係を実現するHSA(Heterogenious System Architecture)に対応した初のAPUであり、同社のAPU計画においても重要な役割を担う製品となる。
AMDは、Kaveriの製造にあたって半導体製造プロセスを含めた最適化を行なうことで、デスクトップPC向けの95ワットから薄型ノートPCや高密度サーバ向けの15ワットまで、幅広いTDPレンジの製品を実現するという。
同社が採用したGLOBAL FOUNDRIESの28ナノメートルSHPは、GPUの高集積化を可能にすべくカスタム設計された製造プロセスで、これによりKaveriでは245平方ミリのダイサイズに24億1千万トランジスタを集積し、このうちの約半分(47%)をGPUに割り当てている。
AMDで製品開発を指揮するジョー・マクリCTOは、この28ナノメートルSHPプロセスを「CPUとGPUの集積やパフォーマンスアップをバランスよく実現できるAPUに最適化された半導体製造プロセス」と位置づけるが、その一方で「このカスタムプロセスの採用で、CPUの動作周波数によっては消費電力が高くなる傾向が生じたため、その分はCPUアーキテクチャを刷新することで対応した」ことも明らかにしている。
Kaveriに統合されたCPUは、同社のBulldozerアーキテクチャとしては3世代目となる“Steamroller”(スチームローラー)で、キャッシュやスケジューリングの効率を高めるとともに、分岐予測の精度を上げることで、シングルコア性能を引き上げている。
Kaveriには、x86 CPUコアを2基収めるSteamrollerモジュールを2つ搭載することで、クアッドコアCPU構成をとる。一方、GPUには2013年末に市場投入されたRadeon R9 290Xと同じGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを採用し、64基のRadeonコアを1クラスタとしたCU(Compute Unit)を8基搭載する。
なお、AMDはKaveriのGPUコアを「8基」としているが、これはCUの数を示したもので、従来の手法でRadeonコアを数えた場合は512コアということになる。また、KaveriにもRadeon R9 290Xに採用されたオーディオDSP機能「AMD TrueAudio」がサポートされる。
Kaveri最大の特徴はHSAをハードウェアレベルでサポートした初のAPUということだ。そのアーキテクチャの特徴やHSAに関する詳細は別稿に譲るが、KaveriではCPUとGPUが同じメモリアドレス空間を共有できるようにすることで、データ移動などのボトルネックを排し、よりシームレスな連係が取れるようになる。
その一例として、CollaboraのLibreOfficeでは、表計算ソフトの演算にHSAアクセラレーションを採用。これにより、一部の計算ではCPUだけで処理するよりも7倍のパフォーマンスアップを実現する。
同社でオフィスソフトビジネスを統括するマイケル・ミークス副社長によれば、LibreOfficeの表計算では、100以上の計算にGPUアクセラレーションを採用する予定だという。
AMDは、KaveriをデスクトップPC市場から展開し、2014年前半の主要メーカーの製品入れ替え期にあわせてモバイル版を投入、同年末までにはサーバ市場向け製品も追加する意向だ。そのKaveri最初のラインアップは下の図の通り。
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