一方でデメリットとして挙げられるのは、ここまで述べてきたメリットの裏返しであることが多い。順に見ていくことにしよう。
まずはハードウェアの「キーボードがない」ことだ。もちろんキーボードがないからといって文字が入力できないわけではなく、画面上に表示されるソフトウェアキーボードを利用すれば済むわけだが、文字入力の機会が多ければ、ソフトウェアキーボードだけではどうしても力不足である。この点においてはノートPCのように、ハードウェアとしてのキーボードを備えているほうが有利だ。
もちろん、タブレットに対応した外付けタイプのキーボード(iPadやAndroidタブレットでは主にBluetooth接続)を利用する方法もあるが、多くのタブレット製品はタッチ操作を念頭に置いて設計されているので、外付けのキーボードによる文字入力の快適さは、やはりノートPCにはかなわないのが実情だ。また外付けキーボードの多くはそのタブレット専用に設計されているわけではないため、キーレイアウトは汎用的で、キーの配置に不満がたまる場合もある。
何より、外付けキーボードを購入することで費用も、そして重量も、ノートPCを超えてしまうのでは、タブレットにした意味がなくなってしまう。もっとも、外付けキーボードは必要な人だけ手を挙げさせるようにしてトータルでの出費を抑えたり、あるいは社員に自腹で購入させて負担を減らそうという、よからぬ考え方の法人も、もしかするとあるかもしれない。
また、タブレットの画面サイズは10型クラスが標準的(携帯向けに7〜8型クラスの製品もある)であり、モバイル向けならば11〜13型クラス、据え置きメインならば14〜15型クラスが主流となるノートPCより小さい。キーボードがないことに加えて、画面サイズの小ささが、業務効率の面で妨げになるケースは少なくないだろう。一般的な業務でも、特に表計算など複雑なビジネス文書の作成、写真や動画の編集などはPCが必須といえる。
周辺機器の少なさもネックとなりうる。タブレット用の周辺機器そのものが数が少ないうえ、汎用性は低く、ほとんどが専用に作られた機器だけに、どうしても価格面では割高になってしまう。最近では有線のキーボードやマウス、メモリカードリーダーのように汎用的に使える製品も増えつつあるが、コネクタの形状が合えばほぼ利用できるWindowsのノートPCなどと異なり、動作確認が必要であることも、注意すべき点ではある。
周辺機器と同様、拡張性の低さもマイナス要因だ。ノートPCであれば、将来的にスペックが物足りなくなった場合に、メモリの増設やHDDの増量、あるいはSSDへの換装など、さまざまな手段が用意されていることも少なくないが、タブレットではそうもいかない。まだ歴史が浅い製品ということで統計として見かけたことがないが、動作速度に不満なく第一線で使い続けられる年数は、おそらくノートPCよりも短いだろう。
アプリについては、一通りの業務用アプリはそろいつつあるものの、いまだiOS(iPad)やAndroidに未対応のものは少なくない。
最近はクラウドサービスの広がりとともに、OSを問わず、Webブラウザ上で動作する業務向けWebアプリも増えているが、現状ではタブレットに移行したくても、根本的にファイルが開けない、思うように編集できないといった場合がある。これは業務用ソフトがWindowsを中心に発展してきた関係上、致し方ないのが実情だ。Microsoft Officeを含め、Windowsベースの業務用ソフトが必須の場合、基本的にこうした問題が少ないWindowsタブレットを導入するという手もある。
暗号化やVPNなど、法人用途には欠かせないセキュリティや通信系機能の有無も要注意だ。これらに関しては機種決定時に吟味する問題で、購入してから初めて気がついたという問題ではないので、本稿では取り扱わないが、製品によってはサポートしていない場合がある。あらかじめ要件をリストアップした上で製品の選定を行い、一斉導入前にあらかじめ限られた台数でテストを行う必要はあるだろう。
以上、一般的なノートPCと比較した場合のタブレットのメリット、デメリットを考察した。次回は、ここからさらに一歩踏み込んで、現在市販されている3種類のタブレット製品、すなわちiOS、Android、Windowsについて、それぞれの特徴について見ていくことにしたい。
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