Dell Precision Media Dayでは、アンディ・ローズ氏へのグループインタビューの機会も設けられた。
ローズ氏は7カ月前にワークステーション事業部のトップであるエグゼクティブディレクターに就任したが、以前にはデータセンター事業部、インフラストラクチャ事業のエグゼクティブディレクターを歴任しており、エンタープライズ向けの大規模インフラ設計、仮想化、クラウドコンピューティング事業を成功させている。仮想化のメガトレンドを予測し、そのノウハウをワークステーションへ持ち込むために就任したという側面もあるようだ。
インタビューでは同イベントで紹介された仮想化やデモクラタイズといったメガトレンドの内容を強調するとともに、「就任以来の7カ月でどんなことを注力して行ってきたか」という質問に対し、特に重点的に投資したこととして、以下の5つを挙げた。
まず新製品開発への投資の成果としては、2013年に発表した薄型軽量モバイルワークステーションのPrecision M3800を例として挙げ、「このような製品を提供できることは他社に対する大きなアドバンテージだ」と自信を見せる。
エンジニアをデスクから解放できるメリットを強調しつつ、業界全体でモバイル化のニーズが高まっていることを紹介し、「ハイパフォーマンスを犠牲にすることなく可能な限り小型フォームファクターのワークステーションを開発することで、Dellはそのニーズに応えていきたい」と述べた。
さらに「なぜDellだけがこういった製品を作れるのか」という問いに対しては、Intel、AMD、NVIDIAといったチップベンダーと設計段階での緊密な協力関係があること、プロレベルのGPU(NVIDIA Quadro、AMD Fire Proなど)に対する放熱、薄型軽量化ボディの機構、両方に対して高いエンジニアリング能力を持っていることを理由に挙げた。
2つめのパフォーマンスエンジニアとは、アプリケーションに対するパフォーマンス面での最適化を行なうエンジニアを意味している。
ワークステーションで利用される2D/3DのCADツール、クリエイティブツールのパフォーマンス、エンジニアが実際に感じるパフォーマンスは、汎用のベンチマークテストツールでは十分に測定できない。アプリケーションそれぞれにハードウェア/ソフトウェアの最適なチューニングが必要だ。「Dellのワークステーションは他社よりもISVのソフトウェアを快適に動作させられる。そのための投資だ」と説明した。
これに関して、Dellはシステムメンテナンスやアプリケーションごとに性能の最適化が行える独自ツール「DPPO(Dell Precision Performance Optimizer)」を提供している。イベント中、この開発ラボの見学、ノウハウの説明を受けたが、地道なテストの繰り返しで徹底した最適化を行っており、最適化によるパフォーマンスの向上幅も数%といったような微々たるものではなく、使用感にはっきり影響することが示された。
営業部門を世界中で大幅増強している点については、彼らは単なる営業ではなく、顧客の導入への不安、疑問点などさまざまな問題を解決できる高度な専門知識を有したテクニカルエキスパートともいうべきスタッフであることを強調した。
そのほか、Autodesk、SolidWorks、Dassault Systemes CATIAなど、ISVへのマーケティング分野、開発分野の両面で直接投資を行っているほか、資料の積極的な提供、研修の実施、デモ用機器の提供など、チャネルパートナー(販売代理店)に対するケアも強化しているという。
そして、これらの戦略の成果として、Dellの成長が市場全体の成長率を上回っていることを紹介した。同社としては、収益の伸び、顧客満足度という2つの指標を特に重視しているが、どちらも伸びているという。
これほどまでにDellがワークステーション事業に注力する理由として、ワークステーション事業の収益性が高いことを挙げた。その理由は、パフォーマンス、信頼性、アプリケーションへの最適化など、顧客の求める付加価値を上乗せして提供できるからだと説明する。
ただし、汎用(はんよう)のPC事業を辞めるという選択肢はないようだ。「PC事業も決して収益性は悪くない。仮想化、クラウドコンピューティングにより、データ入力デバイスと演算するデバイスの境界が曖昧になってきている中で、エンドユーザーが使うタブレットのようなデバイスからデータセンターで使うものまで、網羅して提供できることが重要であり、それができることがDellのアドバンテージの1つでもある」とローズ氏は述べた。
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