薄型軽量ボディに目を奪われがちだが、実は液晶ディスプレイこそが最大のポイントだろう。10.1型ワイド(アスペクト比16:10)の画面サイズ、1920×1200ピクセル(WUXGA)の表示解像度は先代機から据え置きだが、その画質は格段に向上したといえる。
専用カラーフィルターにより色域(表示できる色の範囲)を広げた「トリルミナスディスプレイ for mobile」に、新たなバックライトシステム「Live Colour LED」を組み合わせることで、高彩度の表現力に磨きをかけているのだ。従来のバックライトは青色LEDに黄色の蛍光体を透して、光の三原色(赤/緑/青)を表現していたが、Live Colour LEDでは青色LEDに赤と緑の蛍光体を透すことで、発光効率を高め、特に赤と緑の色域を拡張している。
その効果は実物を見れば明らかだ。先代のXperia Tablet ZもsRGBに近い色域を確保していて高彩度な表示だったが、それと比べてもかなり色鮮やかさが勝っている。特に夕焼けや花などを表示させたときの赤の発色で顕著だが、海の青、森の緑、そしてエメラルドグリーンなども色乗りが違う。Androidのホーム画面でさえ、クッキリとして高級感が増して見えるほどだ。
試しにエックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1Pro」を使って、ディスプレイの表示を検証してみた。Windows PCの外部ディスプレイとして利用できるアプリを導入し、PC用ソフトウェア「i1Profiler」からi1Proをコントロールすることで、タブレットの内蔵ディスプレイを計測している。
計測結果は、輝度が400カンデラ/平方メートル弱と明るく、色温度が7200K程度とやや高めだった。ガンマ補正カーブを見ると、明部で少しRGBの線が上に引き上げられている(実際は入力信号に対して、少し暗めに出力することを意味する)が、黒からグレーの中間階調まではRGBの線がそろって直線を描いており、階調の再現性もなかなかのものだ。
Xperia Z2 Tabletの特徴が最も現れたのは、やはり色域の計測結果だ。i1Proで作成したタブレットのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで開き、色域を確認したところ、Xperia Tablet Zを大きく上回っていた。
通常PC USERのレビューでタブレットやPCの色域を示す場合、sRGB規格の色域を薄いグレーで表示し、その上にカラーで測定対象の色域を重ねるのだが、Xperia Z2 Tabletで同じようにすると、グレーの表示がまったく見えなくなってしまう。つまり、sRGBの色域を完全に超えているのだ。
逆にXperia Z2 Tabletをグレーで敷いて、sRGBをカラーで表示すると、色域の広さがよく分かる。先代の測定結果と比べても全体に広いが、特に緑、赤、シアンの色域が広い。
同様に、sRGBより色域が広いAdobe RGBの規格とも発色を比較してみた。青や黄色の色域はXperia Z2 Tabletのほうが広い一方、緑、シアンではAdobe RGBに及ばない。とはいえ、タブレットやノートPCではsRGBを完全にカバーできる色域がある液晶ディスプレイ自体が珍しいため、この広色域は大きな差異化要因だ。
誤解がないように断っておくと、カラーマネジメントに対応したビュワー機能などはないため、sRGBやAdobeRGBのカラープロファイルを持った写真データなどを正確に色再現できるわけではない。これはiPadやAndroidタブレット全般に当てはまることだ。しかし、Xperia Z2 Tabletでは高彩度の被写体を撮影した写真で比較的イメージに近い絵が得られることが期待できる。
さらにXperia Z2 Tabletには、映像高画質エンジン「X-Reality for mobile」が導入されており、低解像度や低ビットレートの映像を超解像技術でキレイに表示したり、映像シーンをリアルタイムに分析して、輪郭や色調整を行なうといった機能がある。これにより、液晶パネル本来の出力よりさらに鮮明な表示が可能だ。
Xperia Z2 Tabletの画素密度は約224ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)と、昨今の高精細ディスプレイ搭載タブレットに比べて特に高いわけではない。しかし、通常の視聴距離で画素をほとんど認識できないくらい表示は細かく、X-Reality for mobileの効果も相まって、解像度のスペックで受ける印象より色鮮やかでシャープな表示に見えるはずだ。
非常に画素密度が高い液晶ディスプレイは、薄型軽量ボディや長時間のバッテリー駆動を達成するうえでマイナス要因になるため、ここはトータルバランスも考慮したスペックといえる。
「OptiContrast Panel」も引き続き採用している。これは液晶パネルとカバーガラスの間にクリアな樹脂を流し込み、空気層をなくす、いわゆるダイレクトボンディングの技術だ。外光の反射を抑え、暗いシーンでの白ぼやけを防ぎ、深い黒色を表現できる効果がある。
カバーガラスとタッチセンサー層を一体化した「Direct Touch」も健在だ。これによりガラス層とタッチセンサー層を薄型化でき、OptiContrast Panelと合わせて、液晶ディスプレイ表面からタッチセンサーまでの距離が短くなるため、視差が低減し、タッチ操作の精度が高まる。実際、タッチ操作の感度と精度は良好だ。
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