Windows 8.1 Update 2は結局どうなったのか?――見えてきた次期OS「Threshold」への道鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1 Update」(1/2 ページ)

» 2014年08月18日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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短期間で変化したMicrosoftのOSアップデート戦略

 Windowsタブレットの小型化とWindows Phoneの大画面化で、これまで別々に存在していたMicrosoftのOSプラットフォームが互いにオーバーラップし、その領域が次第に曖昧になっていくというトレンドを前回紹介した。同社は「One Microsoft」戦略に基づいてOSコアの統一を進め、この単一のOSコアを複数の市場や用途に向けた形で展開していく「バリエーション戦略」を推進するようだ。

 これを実現するのが、2015年前半ごろの登場がウワサされる開発コード名「Threshold(スレッショルド)」こと、次期Windowsのタイミングとみられる。今回はこのThreshold登場までのWindowsアップデートに関するロードマップを追いかけていこう。

2012年10月26日に一般販売が開始された「Windows 8」。賛否両論の新OSが登場してから2年近くが経過した。その後、2013年10月のWindows 8.1、2014年4月のWindows 8.1 Updateとアップデートを重ね、着実によくなってきているが、今後はどうなるのか……

 実際にMicrosoftがそのような計画を持っていたかは不明だが、少なくとも「Windows 8」を2012年10月26日、「Windows 8.1」を2013年10月18日にリリースしたときのMicrosoftは、「OSのアップデートを1年単位で細かく提供していく」という意図を持っていた節がある。

 意識していたのは、AppleのOS Xだ。1年ないし1年半程度でのアップデートを繰り返し、さらに最新の「OS X Mavericks」ではOSそのものを無料で提供し始めた。

 これに対して、MicrosoftもWindows 8.1はWindows 8のユーザーに対して無料で提供している。もっとも、内容的には大きな変化というより機能の追加や問題点の修正といった従来の「サービスパック(Service Pack)」に近い位置付けであり、「言い方を変えただけ」とも言える。

 こうした年次のリリースサイクルは今後も続いていくように思われたが、どうやら早くもその状況は変化しつつあるらしい。

 以前にもこの連載で解説したが、Microsoftは従来のService Packという概念を見直しつつあり、サポート適用範囲もその枠組みを変えつつある。

 例えば、Windowsでは当該バージョンのリリースから最初の5年が「メインストリームサポート」期間、次の5年が「延長サポート」期間となり、「5年+5年=10年」のサポートサイクルが基本だ。これは現在も変わらない。ただし、サポートの継続には「最新のService Packが導入されていること」が求められ、「次のService Packが提供されてから24カ月(2年間)で前のService Packのサポートが終了する」というルールがある。

 Windows 8とWindows 8.1をこのルールに当てはめると、サポート開始日を決めるのが「Windows 8リリース」のタイミングであり、サポート継続の条件を満たすのが「Windows 8.1の導入」となる。つまり、Windows 8.1は「Windows 8のService Pack」に位置付けられるわけだ。

 ちなみにWindows 8のメインストリームサポートは2018年1月9日、延長サポートは2023年1月10日までとされている。Windows 8のユーザーは、Windows 8.1の公開(2013年10月18日)から2年以内にWindows 8.1へ移行することが必要だ。

Windows 8.1のサポートライフサイクルはWindows 8と同じとされているが、Windows 8.1 Update(画像はWindows RT 8.1 Update)を適用しないと、今後の最新アップデートが適用できない

 通常であれば、Windows 8.1に続くService Pack相当のアップデートが登場し、さらに2年間のOSアップデート移行猶予が与えられることになるわけだが、2014年4月8日に登場した「Windows 8.1 Update」はこのルールを変えてしまう。

 もし、Windows 8.1 UpdateがService Packと同じ位置付けであるならば、本来は2014年4月のさらに2年後までWindows 8の最新OSアップデートへの移行猶予期間が与えられるはずだった。しかし、実際はWindows 8.1 Updateが登場してから2年どころか2カ月以内に同アップデートを適用しない限り、Windows 8.1の一般ユーザーは最新アップデートの適用が止まってしまう。

 Windows 8そのものはサポート期間が継続しているにもかかわらず、Windows 8.1を導入したユーザーは最新アップデートであるWindows 8.1 Updateの導入を強要されることになるのだ。個人ユーザーではさほど問題にならない可能性が高いと思われるが、企業ユーザーにとってはOSの移行サイクルに悪影響を及ぼす措置となり得る。

 少なくとも「1年単位でのOS更新サイクル」「2年間のアップデート適用猶予」というサポートサイクルは崩れつつある印象だ。

 それでは、このWindows 8.1 Updateに続くものとしてウワサされている「Windows 8.1 Update 2」はどうなのだろうか?

「Windows 8.1 Update 2」は“存在しない”が“存在する”

 筆者は当初、Windows 8.1 Update提供の話を聞いたとき「MicrosoftはWindows 8.1以降、1年間隔よりさらに細かいサイクルでWindows OSのアップデートを行っていく」と考えていたが、これはある意味で正しく、ある意味で間違っていたようだ。

 本連載でも度々紹介している米ZDNetのMary Jo Foley氏が指摘しているように、「Microsoftが夏過ぎごろにWindows 8.1 Update 2を提供する」というウワサは各方面で持ち上がっていた。

 Jo Foley氏は内部情報として同アップデートの提供が「8月12日」に開始され、その内容は「多少の機能追加が施されたマイナーアップデート」と述べている。以前は「本格的なスタートメニューの追加」や「Modern UIアプリのウィンドウ上での動作」といった、Build 2014(4月に開催されたMicrosoftの開発者向けカンファレンス)でプレビューした機能が追加されるとウワサされていたが、同氏は「このWindows 8.1 Update 2では見送られた」と8月1日の記事で紹介している。

Microsoftは、Windows 8.1 Update 2の提供予定がないことを公式ブログで明らかにした

 しかし、Microsoftが8月5日になって発表したのは「Microsoft、Windows 8.1“Update 2”の提供予定はなし」というニュースで、8月12日に提供される定例アップデートの紹介だった。これを受けたJo Foley氏は「もともとは“Update 2”と呼ばれていたもの」と自身の記事中で説明しており、最終的に内部的な判断で「Update」の名称を止めたことを示唆している。

 とはいえ、いわゆる「Update」と「定例アップデート」では根本的に異なる点がある。MicrosoftのBrandon LeBlanc氏もBlog記事中で説明しているが、定例アップデートは「自動更新」の扱いで自動的にアップデートが行われるのに対し、UpdateはWindows 8.1 Updateがそうであったように「オプション」の扱いであり、配布当初は自動アップデートに含まれない(Windows 8.1は後日自動アップデートに含まれた)。

 Jo Foley氏は「Update 2が選択式アップデートであり、秋に提供されるというUpdate 3も同様」という説明をしていたが、少なくともMicrosoftではそのような仕掛けを用意しないようだ。

 あくまで自動更新の定例アップデートとして提供しつつ、内容的にはWindows 8.1 Updateのように小さいながらも新機能の追加やユーザーインタフェースの改善を進めていく方針となっている。「Update 2は(提供方法としては)存在しないが、(中身的には)存在する」というイメージだ。

 おそらくは、以前まで提供の可能性があった「Windows 8.1 Update 3」についても同様で、秋ごろか年末をターゲットに、今回の8月の定例アップデートに近い機能を追加してくる可能性がある。LeBlanc氏も、今後のWindows 8.1への定例アップデートによる機能の追加自体は否定しておらず、来年登場する見込みの「次期Windows」まではその方針なのだろう。

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