iPhoneは極めてパーソナルなツール、ということで、ここまではあえて感想に個人差がありそうなポイントばかりをあげてしまった。ここに追い打ちをかけるのが、iPhone 6とiPhone 6 Plusをきっちりと分け隔てる機能的な違いだ。
iPhone 6 Plusには、実はiPhone 6にはない新機能がかなりある。大きなくくりで言うと「動画撮影時の手ぶれ補正」と「横向き利用」だ。
「(映画レベルの)手ぶれ補正」については語るよりも撮影したサンプルを見てもらったほうがいいだろう。さすがにソニー製のカムコーダーほどまでではないにしても、歩きながらでも驚くほどきれいな動画が撮れる。
小さいようで、日常使いに大きな差を生み出すのが「横向き利用」だ。iPhone 6 Plusは、iPhoneシリーズでは初めてホーム画面が横向きに回転する(画面表示を「拡大」モードにしていると回転しない)。
iPadシリーズもホーム画面は回転したが、あちらは回転後、ドックが画面の下に表示される仕様。それに対してiPhone 6 Plusはドックは同じ場所に残したまま、アイコンだけが回転する仕様になっている。なんでこうなったかは明白、iPadは画面の横縦比が4:3だが、iPhoneは16:9と圧倒的に横長なので、このほうが画面が有効に使えるのだ。
この横長画面を生かして、「メール」や「メモ」、「リマインダー」などのアプリでは、iPad同様に画面を左右に分け、左半分に一覧表示、右半分に選択した項目の中身を表示する仕様になっている。
こうした表示スタイルはiPadでは利用できるが、同時発売のiPhone 6では利用することができない。iPhone 6 Plusはこのように“いい感じ”でiPhoneとiPadの「いいとこ取り」をしているのだ。
さらに、これまで地味な存在だった「株価」や「天気」のアプリも結構、注目に値する。両アプリともiPhone 6 Plus版は新しくなり、「株価」では画面右半分に選択銘柄に関するニュースが、「天気」では日の出、日の入り時刻や降水確率が表示される。
これもiPhone 6 Plusだけの「Plus α(プラス・アルファ)」の機能のようだ(執筆時点では確認できていないが、もしかしたらiOS 8に更新したiPadでも利用できるかもしれない)。
こうしたマニアックな特典も考慮すると、今度が初めてのiPhoneでないユーザーには、急に「iPhone 6 Plus」が魅力的な存在に見えてくるはずだ。
あの大きな画面ならば、6〜8人テーブルで少し離れて座った人に写真を見せるのにも十分だし、iPhoneとiPadのいいところどりをした機能もバランスがよいことを考えると、iPhone 6 PlusはiPad mini最大のライバルとなりうるだろう。
アップルは他社に競合を作られるよりは社内に競合をつくることで双方の製品を高めていこうとする会社。iPhone 6 Plusというかなり強力なライバルの登場で、「iPad mini」という製品が今後どうなるのか。もし存続するなら、次はどのような進化を見せるかはかなり楽しみなところだ。
iPhone 6も発表された先週のAppleスペシャルイベント。基調講演会場向かいのスペースには、たった1日のために巨大な白い建物が建築されていた。iPhone 6、iPhone 6 PlusそしてApple Watchを体験するための会場だ。
イベントが始まるまで、「この白い壁は何かを隠す貼り紙で、新製品発表後はガラス張りの建物が現れる」などといったウワサも飛び交っていたが、結局、会場の壁は白いままだった。
その後、iPhone 6シリーズのパッケージを見てすぐに思い出したのがあの建物。あれは今回発表された一連の製品の基調色、ティム・クック現CEOが、iPhoneを真っ白(まっさら)な状態から再スタートさせる意気込みを象徴していたのかもしれない。そう考えるとApple Watchの箱も……?
ちなみにApple Watchのデモ画面には「蝶」のアニメーションが使われていた。「蝶」も変化を表す象徴であることはご存じの通り。
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