「Apple Watch」が4月24日に発売されたとき、遠く欧州の出張先にいた筆者は、入手した人たちがこぞって絶賛するレビューやブログを、実のところ冷めた目線でしか見ることができずにいた。
4月27日に帰国すれば手元には製品が届いているのだが、そもそも「腕時計」という形のデバイスが、情報化時代の新しいインフラとなったスマートフォンのコンパニオンとして正しい選択なのか否か、懐疑的な気持ちが燻(くすぶ)っていたからだ。
以前にも本誌のコラムで述べたように、スマートウォッチは腕時計という道具を通じて、スマートフォンに届くさまざまな情報を通知する道具だ。簡単なアクションも返すことはできるし、スマートフォンに収められている情報を一時的に保持することもできるが、基本的には情報が届いたことを知るための道具である。
そうした機能を盛り込む機器としては、存在感を主張し、趣味性やファッション性が問われる腕時計よりも、もっと存在感が小さいもののほうがよいのではないか? と、実際にApple Watchのハンズオンイベントに参加した後にも疑問が残っていた。
しかし、実際に入手したApple Watchを使用してみると、よい意味で期待を大きく外れた体験を得た。「スマートウォッチ」というジャンルの中で見ると、Apple Watchの完成度は、エレクトロニクス製品としても、純粋な腕時計としても群を抜いている。現時点でのライバルとの差を考えると、そう簡単に追い抜けないのでは? と思うほど圧倒的な差だ。
しかし、一方で「本当に腕時計がスマートフォンのコンパニオンとして正しいか」という疑問への答えが、この初代Apple Watchで出たとも思わない。他を圧する完成度で登場したものの、これをもって「スマートウォッチというジャンルが確立する」とまでは確信できていない。
現時点で最も優れたスマートウォッチではあるが、では他のスマートウォッチに対し、「できること」が多いかと言えばあまり変わらない。すなわち圧倒しているのは「体験レベル」であって、スマートウォッチというカテゴリそのものを前に進めるものになるかどうかは見方が分かれると思う。
ハードウェアとしてのApple Watchに関しては、すでに多くのレビューが各所に掲載されており、製品そのものの紹介もアップル自身のWebサイトで行われ、ストアなどでも体験できる。今さら基本のおさらいは不要だろう。
この記事では実際に使い始めて、強く感じた印象に絞ってレビューを進めることにしたい。
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