ゼロから分かる初めての仮想環境――ASUSTOR NASで仮想ストレージを構築する仕事で使うNAS 第6回(1/6 ページ)

» 2015年06月23日 11時50分 公開
[瓜生聖ITmedia]

仮想化の利点

 仮想化技術という言葉を聞いたことのない人は少ないかもしれない。現在広く普及したクラウドコンピューティングの一端を担っているのも、この仮想化技術だ。仮想化によって、OSはハードウェアを直接叩くのではなく、ハードウェアの上のレイヤーであるハイパーバイザとやり取りをする。そのため、オーバヘッドが発生するというデメリットはあるものの、それを補って余りある利点が多数ある。以下は仮想化のメリットの例だ。

  • 1台の物理マシン上で複数の仮想マシンが動作

 一般的な利用においては、コンピューターは常に全力で稼働しているわけではない。それと同時に、いくらヒマなマシンが複数あっても1台にまとめられない場合もある。例えば、検証用にさまざまなバージョンのOSを用意するときなどがそうだ。

 仮想化技術を使えば1台の物理マシン上で複数の仮想マシンを同時に動作させることができる。計算資源という意味だけでなく、物理マシンを減らすことによる占有面積、消費電力の削減といった観点からもリソースの有効活用につながる。

  • マシンのデータ化

 物理マシンだとディスクの内容を複製することはできても、マシンそのものを複製することはできない(当然だが)。しかし、仮想マシンの場合はマシンの構成自体もデータとして扱われるため、簡単に複製できる。

 また、マシンそのものをデータとして扱えるということは、ネット経由で送ることも可能ということだ。実際、OSやアプリケーション、アプライアンスをセットアップした状態の仮想マシンを配布しているところも多数ある。

  • ハードウェアの環境に依存しない

 仮想環境のプラットフォームであるハイパーバイザがハードウェアの差異を吸収するため、その上で動作する仮想マシンはハードウェアを問わない。そのため、物理マシンを交換してもハイパーバイザさえきちんと動作すれば、仮想マシンは以前と変わらずに動作する。

  • ライブマイグレーションのサポート

 ライブマイグレーションとは、仮想マシンを停止させることなく別の物理マシンに移動させることを指す。ハードウェアを交換するような場合であっても、あらかじめ仮想マシンが動作できる物理マシンを用意しておけば、仮想マシンは利用者にまったく意識させることなく動作し続ける。

 最後のライブマイグレーションには1つ注意点がある。それは、マイグレーション(移行)にかかる時間は仮想マシンとストレージで大きく異なるということだ。たかだか数Gバイトのメモリ+αの仮想マシンと、数百Gバイトのストレージでは、コピーされるデータの量に大きな違いがある。

 そのため、仮想マシンを動かすハイパーバイザ用の物理マシンとストレージは別に用意することが望ましい。物理マシンを替えてもストレージはそのまま継続利用する、あるいはその逆といった運用をすることで効率を上げることができる。そこでASUSTOR NASの出番、というわけだ。

仮想化環境の導入

 仮想化環境を実現する方法は大きく分けて2つある。1つはホスト型と呼ばれるもので、OS上に仮想環境を動かすプログラムを走らせる。この場合、元のOSをホストOS、その上の仮想マシン上のOSをゲストOSと呼ぶ。

 Windows上で動作するVirtual PCやVMware Playerなどがこれに分類される。手軽な半面、ホストOSが通常のOSであるために24時間/365日の運用などには向いていない。さまざまなOSの一時的利用や、サンドボックス的な使い方が一般的だろう。

 もう1つがハイパーバイザ型と呼ばれるもの。これはホストOSがなく、代わりにハイパーバイザという制御プログラムをインストールするもので、ESXi、Hyper-Vなどが該当する。仮想環境に特化したリソース管理が可能である、ハードウェアを直接制御するためオーバヘッドが少ないなど、仮想化技術のメリットを最大限享受することができる方式だ。24時間/365日運用するサーバ系で広く利用されている。

 今回は無償で入手でき、かつ、GUIによる操作が容易なハイパーバイザ「VMware vSphere Hypervisor」を導入する。原稿執筆時点でのバージョンは6.0.0だ。

 導入にあたっては以下のハードウェアが必要となる。

  • VMware vSphere Hypervisor用PC
  • VMware vSphere Client用PC
  • ストレージ用ASUSTOR NAS

 VMware vSphere Hypervisor用PCはハイパーバイザが動作するためのマシンだ。原稿執筆時点での最小システム要件は、CPUが2コア1CPU以上、メモリが4Gバイト以上、ストレージが4Gバイト以上、ネットワークが1Gbpsだ。また、管理ツールvSphere ClientをインストールするWindows機も必要になる。こちらは管理のみに使用するので常時起動しておく必要はない。

 ハードウェアの準備ができたらさっそく導入を進めていこう。

VMware vSphere Hypervisorの構成

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