ここまで見てきたのは客の万引を防ぐ、もしくは行われても発覚しやすくするための対策だが、実のところ量販店を最も悩ませるのは身内による犯行、つまり「従業員による万引」だったりする。上記のような対策を行っていても製品が突然消えて頭を悩ませていたところ、実は一部の従業員の仕業だった……というパターンだ。
もちろん従業員による万引は、発覚すれば謹慎や減俸といったレベルではなく、即解雇につながる。これはバイトや契約社員にとどまらず、正社員でも同様だ。しかしながら少なからず発生しているのが現状であり、店側としてもそれを意識した対策を取らざるを得ない。
対策の例としては、メンバーを交代しての定期的な在庫チェックのほか、高額な製品については営業時間内のみ売場に移動させる、一定以上の権限を持つスタッフしか触れないようにする、といった方法が一般的だ。もちろん入退店管理なども欠かせないし、防犯カメラによるチェックについても、来店客に対するそれと同レベルで行われる。
もっとも、これらは身内に対して行う施策ということで、管理が甘くなってしまうのは致し方ないところだ。従業員通用口でのチェックは従業員同士ではなく、警備員によって行われるが、毎日顔を合わせているとどうしても身内ならではのルーズさが出てくる。かといって空港の危険物チェック並みの機材を導入するというのも、コストの観点からは現実離れしておりあり得ない。
では限りなく決定打に近い対策はないのかというと、なくはない。例えば「従業員の定期的なローテーション」がそれである。つまり、ある従業員が異動で店からいなくなった後、万引被害が激減した……というケースがあれば、その従業員自身が怪しい、ということになる。またマネジャークラスになると、万引のほかにも、売上の粉飾など不正行為のチェックとしても機能する。
家電量販チェーンでは、顔なじみの店員がある日突然異動によっていなくなるというのもざらだが、その中にはこうした意図も含まれていることを知っておくと、納得もいくのではないだろうか。
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