Appleと日本の特別な関係:林信行がApple幹部に聞く(3/3 ページ)

» 2016年02月08日 18時21分 公開
[林信行,ITmedia]
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日本は特別な市場、Macのシェアも5年で2倍

林 今日はそのMacの話が主題なんですよね。

クロール そうです。Macを取り囲む状況はここ10年ほどで大きく変わりました。ビジネスとしてもかなり好調です。実際、Macの売り上げは10年間にわたってパソコン業界の平均を常に上回り続けています。

 かつてはMacはクリエイティブな人のためのツールというイメージが強かったのですが、今は違います。Macはいたるところで見かけるパソコンになりました。

林 特に世界中のスターバックスですね(笑)

クロール そうですね(笑)。それもありますが、空港のラウンジから、事務系の仕事をするオフィスなども含め10年前と比べるとその広がりには驚かされます。そしてここ日本でも5年前と比べて市場シェアが2倍に倍増しています。

林 確かに最近、日本でも本当によく見かけるようになったと思ったら実際に数字もそれを示していたんですね。

クロール 日本はAppleにとっては常に特別な市場でした。これは単にiPhoneのシェアが圧倒的に高い、といった話ではなく、そもそもAppleという会社がその歴史を振り返っても日本を特別な市場として扱ってきた、ということです。

 例えば、今や世界中に展開している直営店、Apple Storeも、米国外の第1号店は銀座に作ったApple Store Ginzaでした。

2003年11月のアップルストア銀座。雨の中、5000人を超えるファンが並んだ

林 確かにその通りです。オープニングの時にはスティーブ・ジョブズ自らが来店してお店の特徴を紹介してくれていたのを思い出します。

クロール それよりさらにずっと前、Macが登場し、AppleらがDTP(デスクトップパブリッシング)というパソコンを使った出版物作りを始めた時も、Postscriptという重要技術で早くから日本語の対応を行いました。いや、さらにさかのぼれば、Macは1986年から日本語の文字をサポートし始めていました。

林 懐かしいですね。私は当時、高校生でしたが、その前年にキヤノンが発表した幻の日本語Macの発表会に高校生でありながら招待され、学ラン姿で見に行きました。

クロール そうなんですね。それから時間が経ちますが、2001年にリリースしたMac OS Xでは美しいヒラギノフォントを搭載して日本語表現を進化させました。

林 それ以前の日本のパソコンは漢字が9000種類ほどしか扱えず、難しい旧字体の名前などは簡略して書かないと、文字化けしたりと色々と問題がありましたが、そうなんですよね、異体字などを含めた日本のほとんどの漢字をパソコンで使えるようにする標準化では、Appleが重要な旗振り役になり、OSとして形にしたのも最初でした。

 日本人が1980年代の16ビットパソコンで失った日本語表現を21世紀に入ってAppleが復興してくれた、と言ってもいいかもしれません。

クロール Mac OS Xには単語などを簡単に調べられる辞書が内蔵されていますが、これも英語以外の言語では日本語の辞書が最初に搭載されています。

林 そうでした。今OS Xには、その辞書を使ったスクリーンセーバーが入っていますが、これがいつも、それまで知らなかったステキな日本語表現を教えてくれるので愛用しています。

クロール また、iPhoneの登場に合わせて日本の携帯電話で使われた絵文字を採用し始め、その後、これをUnicodeという規格に盛り込むように働きかけて、日本だけでなく海外にも広げました。

林 その点も本当に素晴らしかったと思うと同時に、情けなくも感じています。日本の企業はライバル会社と仲が悪過ぎて標準化に取り組みづらい面があります。

 HD-DVDとBlu-rayも結局、分裂してしまったし、電話会社もお互い憎み合っているからせっかく自ら生み出した絵文字を日本だけに閉じこもった、いや、それぞれの会社の携帯電話同士でしか使えない規格にしてしまいました。

 そうした状況でAppleとGoogleが手を組んで国際的なUnicode標準として定めたら世界的なヒットになり、つい最近では絵文字の映画までできた、と聞いてその広がりように驚いています。

EL Capitanで追加された新フォントのクレー(硬筆体)。美しい日本語の文字表現を味わえる

クロール それに加えて、最新版のOS X El Capitanではライブ変換という機能を搭載しました。文字を打ち込むとスペースキーを押さずに勝手に漢字に変換されていく様はまるで「魔法」のようです。

林 そうですね。ただ、文字入力の部分は、もう少し改善の余地があるかもしれません。ライブ変換は確かに便利なのですが、たまに文章の入力中に変な漢字が挿入されると、気が散ることがありますし、長い文章をあとから振り返ってみると、確定していたと思った漢字があとからさらに他の字に変わって意図せぬ変換になっている時があります。

 確定済みの文章に後から、送りがななどの単語の一部を入力するときに変な漢字に変換されてしまうのも厄介です。iOS版の文字入力ももう少し改善して欲しいです。

クロール そうした点はこれからもそうした声に耳を傾けて改善していこうと思っているので、貴重な意見助かります。

林 いずれにしてもAppleにとって今でも日本が特別な市場だと分かって安心しました。2016年は横浜にラボができるようですし、ますます日本語関連の機能を進化させ続けてくれることを期待しています。



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