米国サンフランシスコで行われたゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2016(GDC 2016)」に参加したのは、テクニカルジャーナリストの西川善司氏です。西川氏はVRのベンチマークソフト「VR Score」が登場したことに触れています。
「VRが普及してくると、関連したビジネスが発展するが、ついにVRのベンチマークソフトが出てきた。普通は(ソフトウェアによって)両眼のレンダリング処理を計ると想像するが、これはライセンスを購入すると左右のレンダリング遅延時間や、残光時間などが計測できるハードウェアが利用できます。つまり実際に目に見える感覚をベンチマークできる。これによって、例えばOculus互換のHMDが出てきたときに、ハードウェアの性能を図る指標になるのでは」(西川氏)
「NVIDIAは、VRを一般ユーザー向けのコンテンツとして重要視しているが、そちらが失敗したときのためとまでは言わないまでも、フェイルセーフとしてプロ用途をうたっています。建築の現場ではスケール感や光の当たり方が重要で、VR HMDをプロ用のデザインレビュー用に使おうと言っているのです。例えばNYと東京のデザイン事務所が、デザインレビューを行うときにVR HMDをかぶれば、同時に実物大のクルマを見ている状態でプレビューできる。これがVRのもう一つの使い方になる。仕事の道具として発展するのではないか」(西川氏)
「South by Southwest(SXSW)」は、米国オースティンで開催されるクリエイター向けビジネスイベントで、元は音楽祭・映画祭だったというユニークな歴史を持ちます。2016年からは、ARとVRに関連するセッションが設けられました。参加したKDDIの上月勝博氏は、「国内からの出展は多くないが、年々増えている印象。内容はVRが一番目立っていて、他にはAI、Robotics、Storytelling(VR)」と評価しています。
VRについては「サムスンのGear VRのようなカジュアルなVRと、HTC ViveといったハイエンドなVRの2極化が顕著」としており、さらにVRによるインターネットの変化について、今後「情報のインターネット」から「体験のインターネット」に移行していくのではとしています。
KDDIはVR空間でコミュニケーションができるデモをSXSW 2016に出展しており、上月氏も出展側として参加していました。「VRに関して新参者であるKDDIは何をしようかというときに、全方位映像やゲームは“餅は餅屋”なので、KDDIは(通信キャリアらしく)コミュニケーションにこだわりました」(上月氏)
KDDIが出展したのは、3D空間でアバターを使ったコミュニケーションツールでした。VR空間で他のアバターとコミュニケーションができ、他人のルームに移るときはどこでもドアのようなインタフェースが表示され、実際にドアを開けて移動できます。
このデモに対するフィードバックとして、「コミュニケーションをテーマとしたデモはほとんど存在せず、コンセプトそのものを評価」「ドアを使った空間移動の分かりやすさ」「アバター(日本っぽい)が好評」「電話の着信など、さまざまなシーンを要素として含めた構成」が好評だったといいます。KDDIが通信キャリアということもあり、要望としては「VR機器を分割で買えるようなもの、課金システムへの対応」「モバイルでの利用」といった期待が寄せられたとのことです。
このように、書き切れないほどVRの現状について濃縮された2時間でした。次回は4月28日、出演者にテクノブラッドの栗原俊幸氏、FOVEの小島由香さんを迎える「Tokyo VR Meetup #04 VR×ネカフェ・アミューズメント施設の可能性」が予定されています。興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。
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