「VR(Virtual Reality)」がテクノロジー系展示会を乗っ取った日VRに関係しない業界はない(3/3 ページ)

» 2016年04月22日 06時00分 公開
[山口恵祐ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

GDC/VRDC 2016 〜ビジネス用途にも〜

テクニカルジャーナリストの西川善司氏 テクニカルジャーナリストの西川善司氏

 米国サンフランシスコで行われたゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2016(GDC 2016)」に参加したのは、テクニカルジャーナリストの西川善司氏です。西川氏はVRのベンチマークソフト「VR Score」が登場したことに触れています。

 「VRが普及してくると、関連したビジネスが発展するが、ついにVRのベンチマークソフトが出てきた。普通は(ソフトウェアによって)両眼のレンダリング処理を計ると想像するが、これはライセンスを購入すると左右のレンダリング遅延時間や、残光時間などが計測できるハードウェアが利用できます。つまり実際に目に見える感覚をベンチマークできる。これによって、例えばOculus互換のHMDが出てきたときに、ハードウェアの性能を図る指標になるのでは」(西川氏)

VRScore The Essential VR Testing Tool VRScore The Essential VR Testing Tool

NVIDIAのVR戦略について

 「NVIDIAは、VRを一般ユーザー向けのコンテンツとして重要視しているが、そちらが失敗したときのためとまでは言わないまでも、フェイルセーフとしてプロ用途をうたっています。建築の現場ではスケール感や光の当たり方が重要で、VR HMDをプロ用のデザインレビュー用に使おうと言っているのです。例えばNYと東京のデザイン事務所が、デザインレビューを行うときにVR HMDをかぶれば、同時に実物大のクルマを見ている状態でプレビューできる。これがVRのもう一つの使い方になる。仕事の道具として発展するのではないか」(西川氏)

SXSW 2016でKDDIはどこでもドアを実現した?

KDDIの上月勝博氏 KDDIの上月勝博氏

 「South by Southwest(SXSW)」は、米国オースティンで開催されるクリエイター向けビジネスイベントで、元は音楽祭・映画祭だったというユニークな歴史を持ちます。2016年からは、ARとVRに関連するセッションが設けられました。参加したKDDIの上月勝博氏は、「国内からの出展は多くないが、年々増えている印象。内容はVRが一番目立っていて、他にはAI、Robotics、Storytelling(VR)」と評価しています。

 VRについては「サムスンのGear VRのようなカジュアルなVRと、HTC ViveといったハイエンドなVRの2極化が顕著」としており、さらにVRによるインターネットの変化について、今後「情報のインターネット」から「体験のインターネット」に移行していくのではとしています。

 KDDIはVR空間でコミュニケーションができるデモをSXSW 2016に出展しており、上月氏も出展側として参加していました。「VRに関して新参者であるKDDIは何をしようかというときに、全方位映像やゲームは“餅は餅屋”なので、KDDIは(通信キャリアらしく)コミュニケーションにこだわりました」(上月氏)

KDDI VR Communication Demo for SXSW 2016

 KDDIが出展したのは、3D空間でアバターを使ったコミュニケーションツールでした。VR空間で他のアバターとコミュニケーションができ、他人のルームに移るときはどこでもドアのようなインタフェースが表示され、実際にドアを開けて移動できます。

 このデモに対するフィードバックとして、「コミュニケーションをテーマとしたデモはほとんど存在せず、コンセプトそのものを評価」「ドアを使った空間移動の分かりやすさ」「アバター(日本っぽい)が好評」「電話の着信など、さまざまなシーンを要素として含めた構成」が好評だったといいます。KDDIが通信キャリアということもあり、要望としては「VR機器を分割で買えるようなもの、課金システムへの対応」「モバイルでの利用」といった期待が寄せられたとのことです。


 このように、書き切れないほどVRの現状について濃縮された2時間でした。次回は4月28日、出演者にテクノブラッドの栗原俊幸氏、FOVEの小島由香さんを迎える「Tokyo VR Meetup #04 VR×ネカフェ・アミューズメント施設の可能性」が予定されています。興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。

→・VR系イベント情報:「アケマス」「戦場の絆」の小山氏も出演! 「Tokyo VR Meetup」などVRの“今”が分かるイベント開催

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  5. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
  10. MetaがMR/VRヘッドセット界の“Android”を目指す 「Quest」シリーズのOSを他社に開放、ASUSやLenovoが独自の新ハードを開発中 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー