米Microsoftは、10.8型Windowsタブレット「Surface 3」の生産を2016年内に終了する。2015年5月に米国で、同年6月に日本で発売されたSurfaceブランドのエントリーモデルは販売開始から約1年半でラインアップから外れることとなった。
Windows関連動向に詳しいブラッド・サムス氏がThurrott.comへ最初に投稿した記事によれば、米Microsoftは公式コメントとして「Surface 3がリリースされて既に1年が経過しており、現時点で在庫も限定的であり、2016年末までに生産を完全終了する」と事実を認めたという。
IntelのCoreプロセッサを採用したパワフルなWindowsタブレット(2in1)である「Surface Pro」シリーズの人気には及ばないものの、Surface 3はより薄く軽いボディーや抑えた価格で多くのユーザーに受け入れられており、一定の認知度は得ている。その後継機となる「Surface 4(仮)」の姿も見えてこない時点での生産終了宣言は、いささか奇異にも映るだろう。
しかし、以前説明したように、Intelの戦略変更でローエンドに近いAtomプロセッサはシリーズの終了が決定しており、これがSurface 3の存続に影響を与えているとみられる。
具体的に言うと、Intelはスマートフォンやタブレット向け製品を大幅に縮小し、「Atom x3」シリーズに属するSoC「SoFIA」の「SoFIA 3GX」「SoFIA LTE」「SoFIA LTE2」、さらに「Atom x5/x7」シリーズの後継として投入される計画だった開発中のSoC「Broxton」をキャンセルすることに決めた(SoFIAとBroxtonは開発コード名)。
Surface 3が採用するプロセッサはAtom x7-Z8700(開発コード名:Cherry Trail)だが、その後継プロセッサであるBroxtonが出なくなったことで、SurfaceシリーズはAtomプロセッサの進化に合わせて継続的にモデルチェンジしていくことが困難になったわけだ。
これはSurfaceに限らず、低価格Windowsタブレット市場全体に与える影響が大きい。安価なx86/x64プロセッサであるAtomシリーズの供給がストップし、100〜200ドルで買えるような低価格Windowsタブレットは消滅に向かう可能性が考えられる。
Surfaceシリーズを振り返ると、初代の「Surface(RT)」はNVIDIA Tegra 3、2代目の「Surface 2」はNVIDIA Tegra 4と、初期はARM系の省電力プロセッサを採用していた。これらはARMアーキテクチャで動作するWindows OS「Windows RT」のリファレンスモデル的な存在だったが、結局はWindows RTの終了とともにフェードアウトを余儀なくされた。
その後に出てきたSurface 3はプロセッサをAtom x7-Z8700に切り替え、フルのWindows(現在はPC向けWindows 10)が動作するタブレットに生まれ変わったが、今度は自社のOSではなく、他社のプロセッサの開発中止が存続に影響を与えている。
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