「MADOSMA Q601」で感じた「Windows 10 Mobile」の3つの課題

» 2016年09月30日 18時35分 公開
[井上翔,ITmedia]

 Windows 10 Mobileを搭載するスマートフォンが日本市場に登場して、10カ月が経過した。Microsoft純正端末である「Lumia」シリーズが不在の中、エントリーモデルからハイエンドモデルまで、複数のメーカーによってラインアップは広がっている。

 その反面、実際にWindows 10 Mobileスマホを使っているユーザーはあまり見かけない。筆者の実感としては「iPhone、iPhone、iPhone、Android……」という感じで、Windows 10 Mobileスマホを使っている人を見かけるのは1カ月に1度あるかないかというレベルだ。

 なぜ、品ぞろえが厚くなっても、Windows 10 Mobileスマホを使う人はそこまで増えないのだろうか。「MADOSMA Q601」(マウスコンピューター製)を数カ月間使ってきて感じた実感をもとに、Windows 10 Mobileスマホの普及に当たっての課題を探ってみようと思う。

MADOSMA Q601 マウスコンピューターの「MADOSMA Q601」

課題1:「個人向け」アプリ

 日本市場において、Windows 10 Mobileスマホはビジネス(法人)ユースでの利便性を強力に訴求している。事実、Windows 10 MobileはMicrosoftの法人向けソリューション(Office 365、SharePoint、Skype for Businessなど)を使う上での親和性は非常に高く、デバイスポリシーの設定もやりやすい。

 転じてパーソナル(個人)ユースを考えると、アプリの充実が大きな課題となる。

 「Twitter」「Facebook」といったSNSアプリ、「LINE」「Skype」といった主要なコミュニケーションアプリはWindows 10 Mobile向けにも用意されている。フォトアプリ「Instagram」も、Windows 10 Mobileに対応している。

 これらのアプリのWindows 10 Mobile版といえば、以前はiPhone(iOS)版やAndroid版と比べて機能面での制約も多かったが、バージョンアップを重ねるにつれてそれも少なくなり、中には同じように使えるものも出てきた。

TwitterアプリFacebookアプリInstagramアプリ Windows 10 Mobile版の「Twitter」(写真=左)、「Facebook」(写真=中)、「Instagram」(写真=右)の各Windows 10 Mobile版。特に、Instagramは他のプラットフォーム版と同じ感覚で使える

 では、課題はどこにあるのかというと、それ以外のアプリ、特にサードパーティーの音楽・動画サービス用アプリ、電子マンガアプリやゲームアプリにある。

 通勤・通学時にスマホを使って何かをしている人は多い。観察してみると、音楽や音声教材を聴いたり、マンガを読んだり、ゲームで遊んだりと、“暇つぶし”“息抜き”あるいは“自己研さん”の時間に当てている。この時間を過ごすアプリが、Windows 10 Mobileには足りないのだ。

 日本において、スマホアプリの広告でApp Store(iOS)やGoogle Play(Android)のバッジはよく見かける。しかし、Windows 10(Mobile)のそれはめったにない。携帯電話・スマホの普及を加速したのが個人だと考えると、個人が喜ぶアプリの拡充は急務といえる。

App Storeの無料ゲームランキングGoogle Playの無料ゲームランキングストアの無料ゲームランキング App Store(写真=左)、Google Play(写真=中)とWindows 10 Mobileのストア(写真=右)の無料ゲームランキング。iOSとAndroidには共通するゲームも多いが、Windows 10 Mobileでは他2者にはあるゲームがないことも多い。特に国内ゲームメーカーが開発したものはほとんどない

課題2:日本語(文字)入力

 Windows 10 Mobileは、多言語表示・多言語入力に対応している。日本で販売されている機種は、日本語表示・日本語入力ソフトがプリインストールされている。

 Windows 10 Mobileは「Windows」ということもあり、自分の好きな日本語入力ソフトをインストールできる――と思いきや、OS標準以外の文字入力アプリを選ぶことができないのだ。

 Windows 10 Mobileの日本語入力は変換効率はそこそこで、「カーブ(斜め)フリック」も慣れれば快適だ。しかし、キーボードサイズやフリック感度の変更など、細かな設定がほとんどできないのだ。

 Androidでは当初からサードパーティー製の文字入力ソフトをサポートしている。iOSでも、iOS 8から一部制限があるもののサードパーティー製文字入力ソフトに対応している。より快適な文字入力環境の実現のために、Windows 10 Mobileでもサードパーティー製文字入力アプリを、それがムリでも文字入力ソフトのカスタマイズをもう少し柔軟にできるようにしてもらいたいのだが……。

日本語入力 Windows 10 Mobileでは、OS標準以外の文字入力アプリを許容しない

課題3:Continuum for Phone

 ミドルレンジ以上のWindows 10 Mobileスマホでは、OSのオプション機能である「Continuum for Phone」(以下「Continuum」)を訴求していることが多い。

 Continuumは、画面を外部に投影することでPC(デスクトップ)版Windows 10に近いユーザーインタフェース(UI)でアプリを操作できるということが大きなメリットだ。国内では、Miracast(Wi-Fi Direct)での投影に対応する機種が多いが、ハイエンド機種ではドック(ドッキングステーション)を使えばDisplayPort/HDMIでも投影できる。

ContinuumでAmazonビデオ 筆者は自宅でのContinuum中に「Microsoft Edge」を使って「Amazonビデオ」を視聴することが多い。もっとも、本来想定される使い方ではないことは公然の秘密だ

 とても便利な機能であるContinuumにも、使い勝手の面でいくつか課題を抱えている。その1つ目が、Continuum設定の初期画面だ。

 この画面では、Continuumをドック経由で使うかMiracast経由で使うかを選択する。ドック対応機種では、どちらも使えるので現行の画面でも問題はない。しかし、ドックに対応しないMADOSMA Q601でも同じ画面が表示されるのだ。これは、他のMiracastオンリーのContinuum対応機種でも同様で、率直なところ“不親切”だ。

 筆者は、OSの大幅更新である「Anniversary Update」でこの問題を解決すると思っていたが、そのもくろみは外れた。世界的に見て、「Miracastオンリー」なContinuum対応機種はあまりないために対応が忘れられているか、後回しにされているものと思われる。今後のWindows Updateで直るといいのだが……。

Miracastオンリーでも「有線ドック」の選択肢 MADOSMA Q601はMiracastによるContinuumにのみ対応している。しかし、設定の初期画面の表示はドック対応機種と「共通」であるため混乱しやすい

 2つ目は、Continuum時にアプリを2つ以上同時に表示できないことだ。PC版のWindows 10では1画面に複数ウィンドウを同時に表示できるが、Continuumではそれができないのだ。iOSでは、iPadシリーズの一部機種で2つのアプリを同時に表示することができるようになった。また、Androidでも、Android 7.0からOSの機能として2つのアプリを同時表示できるようになった。せめて、Windows 10 Mobileも、せめてContinuum中は2つのアプリを表示させてほしいのだが……。

シングルウィンドウ Continuumは2つ以上のアプリを同時に表示できない。せめて2アプリの同時表示ができれば、かなり使い勝手が向上するのだが……

 Windows 10 Mobileスマホの多くはハードウェアの出来は大変優秀で、OS自体の動作も非常に軽快だ。しかし、アプリ回りやOSの細かな“仕様”によって、とりわけ個人がWindows 10 Mobileを積極的に選ぶべき理由は損なわれていると見てもよい。

 先述の通り、携帯電話・スマホの普及を加速したのは“個人”だ。法人向けに活路を見いだしている日本のWindows 10 Mobileだが、個人ユーザーにも積極的に選んでもらえる状況にならないと、法人向けの普及もままならないだろう。

 しかし、MADOSMA Q601を始めとするWindows 10 Mobileスマホは、Microsoftが動かないと機能改善すらままならない面も多い。Microsoft(と、日本法人である日本マイクロソフト)は、他のプラットフォームにスマホを寡占されることを“よし”とするのかどうか、今後のアップデート動向に注目したいところだ。

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