「PlayStation VR」がついに発売されました。
筆者は2014年3月に発表された開発コード名「Project Morpheus」の時代から幾度も体験してきましたが、いよいよ2016年10月に製品版となるPlayStation VRが発売され、今までVR(仮想現実) HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に関心がなかったような幅広いユーザー層からも注目を集めるようになりました。
しかし、PlayStation VRが数あるVR HMD製品の中でどういった立ち位置にいるのか、ご存じない方も多いことでしょう。今回の記事では、他のVR HMD製品と比べたPlayStation VRのメリットとデメリット、今後の展望について書いていきます。
これまでのVR HMD市場は、「性能は高いが、環境の構築に高い費用が掛かる」ハイエンド製品と、「環境の構築は楽だが、性能は低い」ローエンド製品の2つに大きく分かれていました。
前者は「Oculus Rift」や「HTC Vive」のようなPC向けの高性能VR HMDを差します。価格が9〜11万円程度するうえに、ミドルレンジ以上の最新世代GPUを要求するため、こうしたゲーミングPCを所持していない方が新規に環境を構築しようとすると、どんなに安くても20万円程度はかかってしまいます。
後者は、スマートフォンに装着して使う簡易的なVR HMDが代表的です。ただし、こうした製品にはヘッドバンドすら付いてないものがあり、またスマートフォンの性能がゲーミングPCや家庭用ゲーム機に比べると著しく低いことから、体験の質についてはまだ課題が残っています。
ここで、SamsungとOculusによるスマートフォン用VR HMD「Gear VR」があるではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かにGear VRは、スマートフォン向けのVR HMDではかなりの高品質ですが、対応機種がGalaxyの一部モデルに限定されてしまいます。
また、Googleが2016年6月の開発者会議「Google I/O」で発表したVR HMD「Daydream View」は、汎用(はんよう)スマートフォンでも高品質のVR体験ができることをうたっていますが、実際はハイエンド端末のみの対応となっており、PlayStation 4と同等かそれ以上の価格帯になります。
スマートフォン用VR HMDの場合、現行のプラットフォームでは専用の外部デバイスを用意しないと頭部位置のトラッキングができないため、現実世界と仮想世界で体の位置や視界がズレやすいことも、ハイエンドVR HMDと比べた問題点として挙げられます。
そんな中登場したPlayStation VRは、2つの間を埋める「ハイエンドに迫る性能を持ち、メインストリームの消費者に手が届く価格帯」の製品と言えます。
フルHD解像度でリフレッシュレート120Hzという高速応答の有機ELパネルを搭載し、しっかり位置トラッキングにも対応しています。動作に必要なハードウェアはゲーミングPCやハイエンドスマートフォンではなく、市販の家庭用ゲーム機である「PlayStation 4」のみで動作するため、合計9万円以下で高品位なVR体感を味わえる環境が整えられます。
ソフトウェアの面でも国内外の大手ゲーム会社が開発したタイトルが発売日に複数登場し、今後長時間遊べる大作のリリースも予定されているため、遊ぶコンテンツがなくて困ることはそうそうないと思います。
価格帯や対象年齢層こそ大きく違いますが、ハイエンドのパーソナルコンピュータ(当時の呼び方はマイコン)と、テレビのRF端子につなぐ単純な機構の家庭用ゲーム機が多く発売されていた1980年初頭に登場し、不動の地位を築いた「ファミリーコンピュータ」のポジションにかなり近いと考えています。
「そろそろVRの体感をしてみたい」「取りあえず家庭に1台欲しい」という方におすすめできるポジションを既に確立していると言えます。
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