Windows 10が次に実現する「PCではない未来のデバイス」とは?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/4 ページ)

» 2016年12月27日 14時00分 公開

Wake on Voiceによるスリープからの音声制御

 ロックスクリーンが出ている状態でもCortanaの制御が可能な仕組みは既にWindows 10に搭載されているが、現在のMicrosoftが目指しているのはその先だ。具体的にはスリープ状態であっても「Hey Cortana」と呼びかければ、いつでもマシンが復帰し、入力した音声コマンドを実行できる状態に持ち込むことが目標となる。これがWake on Voice(WoV)だ。

 WoVの機能は疑似的には簡単に実装できる。例えば、ディスプレイの電源を落として省電力動作モードに移行し、ユーザーから「Hey Cortana」と呼びかけられるまでずっと待機していればいい。ただ、標準状態ではディスプレイがオフの状態になってからしばらく後にスリープ状態へと移行してしまうため、ユーザーに了承をとったうえで「スリープ移行禁止」のモードを用意する。AC電源に接続されていることが前提となるが、デスクトップPCではアリな選択だろう。

 次に利用するのが、Intelプロセッサの「S0ix」ステートなどと表現される新しいタイプのスリープ状態だ。Windows OSでは、Windows 8以降に「InstantGo(Connected Standby)」の名称でタブレットPCや2in1に対応が進んでおり、CPUが通常の稼働状態を示す「S0」のステートでありながら超低消費電力での動作が可能で、かつ通常のスリープ状態と比較しても復帰が早い。

 InstantGoのメリットは、タブレットPCで使わないときは画面を消してバッテリーを極力消費しない省電力モードへと移行し、バックグラウンドでのネットワーク通信や情報のアップデートは行うといった、いわゆるスマートフォンやタブレットのような使い方がPCでも実現できることにもある。

 Microsoftではこの種の待機型スリープ状態を「Modern Standby」と表現しており、これにWoVを組み合わせる方策を検討している。S0ixのステートでは断続的ながら実質的にCPUが通常動作しているので、ソフトウェア的にWoVを実装するのは容易だ。このようにソフトウェアで音声認識によるキーワードを抽出する仕組みを「Software Keyword Spotter」と表現する。

Modern Standbyを組み合わせた将来のWoV

 ただし、スリープ状態からの復帰ラグなどの関係で、Software Keyword Spotterでは音声の取りこぼしが発生する可能性がある。そこでMicrosoftがPremiumと定義しているマイク環境を備えたデバイスでは100〜200ms(ミリ秒)程度の音声バッファを取得できる仕組みを用意するよう推奨している。

 そして次のステップとしては、CPUやチップセットが完全にスリープ状態にある、いわゆる「S3(スタンバイ)」の状態でもWoVが利用できるよう、専用ハードウェアの追加でサポートする「HW KWS」を実装していきたい意向だ。

 どのようなPCやデバイスでこのような仕組みが必要になるかは分からないが、いずれは「キーボードやタッチ操作を必要としないPC」が登場する世界も予想され、未来のPCへと一歩近づくことになるかもしれない。

 いや、未来のPC……と呼んでいいのかは分からないが、かつてPCだったデバイスが未来にどのような形状をもって家庭に鎮座しているのか、その答えの1つはAmazon Echoに見いだせるだろう。

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