Intelから、開発コードネーム「Kaby Lake」(ケイビィレイク)こと第7世代Coreプロセッサーの追加ラインアップが発表された。
この世代は、モバイルPC向けの一部モデル(TDP 4.5〜15W)のみが2016年8月に先行して発表されていたが、今回は、デスクトップ向けやハイエンドノートPC向けの高性能モデル、モバイル向けのグラフィックス機能強化版など多数のモデルが投入されている。その概要について解説しよう。
Intelは、定期的なサイクルで新しい世代のモデルを導入していく戦略をとっている。従来は「製造プロセスルールの微細化(TICK)」と「マイクロアーキテクチャの更新(TOCK)」を交互に行う「TICK TOCKモデル」を実践してきたが、2016年3月に公開した2015年度の年次報告書においては、マイクロアーキテクチャの更新の後に「最適化」を加えた3ステージの進化モデルへと変更することが明らかにされていた。
その初めての「最適化」ステージに相当するのがこの「Kaby Lake」だ。14nmプロセスルールを利用する三世代目のプロセッサーということになる。
Kaby Lake世代に共通する最大の特徴は、従来の14nmプロセスルールに改良を加えた「14nm+プロセスルール」を導入していることだ。
プロセスルールとは、CPUなどの半導体回路をシリコンウェハ上に製造する際の加工技術の世代のこと。世代が進むほどに加工単位を小さくできるようになり、同じ面積に多くのトランジスタなどを構築、配置できるようになり、配線も短くできる。
それにより、内部の演算器を増やしたり、キャッシュ容量を増やしたりする余裕ができ、CPU性能が向上する。さらに、配線長の短縮により電気抵抗も減るため、電子の移動速度が速まり、高速化や省電力化もしやすくなる。加工の最小単位から「22nm」「14nm」のように呼ばれ、この加工単位を小さくすることを「微細化」と呼ぶ。
ただ、近年のプロセスルールは、微細化に加えて、ゲートの電流リーク対策(トランジスタのスイッチの部分がオフでも電流が流れてしまうこと)含めてさまざまな技術、材質の工夫によって電子の移動速度を速めている。歪みシリコン、HKMG(High-K Metal Gate)、3Dトランジスタ(FinFET)といった要素がそれである。
つまり、微細化の度合いは同じであっても、高速化や省電力化に寄与する要素(プロセスパフォーマンス)の改良の余地は多く存在するということでもある。
Intelの14nm+プロセスルールでは、その微細化以外の部分を改良することで、プロセスパフォーマンスを12%向上させている。つまり、消費電力を維持したままクロックを上げる、あるいはクロックを維持したまま消費電力を下げる余地が12%できることを示す。地味だが、これは侮れない改良だ。
内蔵GPUも進化した。基本のマイクロアーキテクチャーは前世代を引き継ぎつつ、メディアエンジンが新しくなった。
メディアエンジンとは、動画のエンコード/デコード、高画質化等に関する部分で、EUと(Execution Unit)と呼ばれる基本の演算器とは別に専用回路として用意されているものだ。
この世代はこの部分の設計をリニューアルした。「Video Decode Engine」「Video Processing Engine」。これにより、電力効率、スループットともに向上しているという。
また、10bitのH.265/HEVCのハードウェアデコード/エンコード、VP9のハードウェアエンコードができるようになった。
ディスプレイ出力機能は、4Kコンテンツの著作権保護機能であるHDCP 2.2に対応。追加チップを実装することでHDMI 2.0aでの出力に対応し、HDR出力が可能になった(従来は追加チップ実装でもHDMI 2.0まで)。
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