製品写真をよく見せるテクにだまされない方法牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2017年01月21日 07時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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 製品を購入し、ワクワクしながら開封したところ「思っていたのと違う」とがっかりするというのはよくある話だ。中でも、現物を見ずに写真頼みで通販サイトから購入すると「想像していたよりもサイズが大きい」「手に取ってみるとチャチで安っぽく見える」など、サイズや色味が予想と違ったというパターンはかなりの割合を占める。

 これらは実物と写真とのズレに起因するわけだが、単純に写りが悪いとか、色味がズレているといった場合のほかに、メーカー自らがホンモノ以上に見せるためのテクニックを駆使しているケースも少なくない。あからさまな虚偽だとクレームが付いて返品になりかねないため、「そのように見えなくもない」というギリギリの写真を用意し、ユーザーを誤認させているというわけだ。

 今回は、メーカーがニュースリリースや製品紹介ページ、カタログ、広告などでよく使う、製品をホンモノよりもよりよく見せる写真の「手口」の数々を見ていこう。

全く手のひらサイズじゃない

 一つは、製品のサイズを「大きく」、あるいは「小さく」見せる手口だ。

 携帯性の高さをアピールする製品であればサイズは少しでも小さいほうがいいし、ボリュームをアピールする製品であれば少しでも大きいほうがよい。こうした場合に、写真をうまく使って実物以上に大きく、小さく見せるよう、印象をコントロールするというわけだ。

 一般的に、写真上でサイズの大小を表現するためには、硬貨やCD/DVD、ペットボトルなど、どこにでもあって世の中でサイズが認知されている品が、比較のために用いられる。ここでメーカーが用いるのは、サイズの基準があるように見えて実はない対象を、製品と並べるという手口だ。

 典型的なのは手の上に乗せて「手のひらサイズ」をアピールするケースだ。手のサイズがもともと大きい人をモデルとして起用することで、相対的に製品のサイズを小さく見せようとする。手のサイズには明確な基準があるわけではないので、虚偽にあたることはなく、それゆえ多用される手口の一つだ。ほかにもノートPC用のバッグやスマートフォンのように、外見は似ていながら複数のサイズがある製品もよく使われる。写真の印象で判断せず、仕様表などで実際のサイズを調べてから購入すべきだ。

 また、そもそも比較対象と並べた写真を撮らず、文言ベースで強調するケースもよくある。つまり「わずか○○センチ」「たったの○○ミリ」と説明文でのみコンパクトさをアピールしているケースだ。「わずか」「たったの」「極薄」などといった文言でサイズについての先入観を植え付けられがちだが、冷静にサイズを比べるとそう際立って小さいわけではなかった……ということは多い。写真が一切なく、こうした文言だけが強調される場合は、疑ってかかったほうがよいだろう。

思ったより配線がゴチャゴチャしている

 もう一つは、製品をすっきりシンプルに見せる手口だ。実際に使うとなるとかなりゴチャゴチャしてしまい美観を損ねがちだが、使用例の写真ではやたらとすっきりして見える、というものだ。

 IT関連の製品でよく使われるのが、本来なら接続されているはずのケーブルを省略して見せるというワザだ。ACアダプターから延びるケーブル、LANケーブル、USBケーブルなどの配線を省略するか、見えないようにして撮影することで、ゴチャゴチャ感をなくし、見た目をスッキリさせるわけである。いざ自分で買って接続してみると「えっ、こんなに配線が複雑なの?」と驚くことになる。

 もっとも、電源ケーブルが接続されていないのに画面が表示されていたり、電源ステータスを表すLEDが点灯していたりすると、あからさまな虚偽としてクレームが付くのは必至だ。それゆえ、使用例写真ではケーブルが隠れるよう正面からのみ撮影し、背面から撮るのはセットアップの過程を説明するための、まだケーブルを接続していない(という名目の)カットだけといった具合に、撮り分けをされることが多い。

 こうした手口は何もIT関連の製品だけではない。例えばカレーライスのCMで、すくったはずのスプーンの裏側にルーが一切付着していなかったり、モデルルームにある本棚で同一サイズの本ばかりがずらりと並んでいたりすることがある。あれも美観を強調したいがゆえの施策と言える。

 ただしそれらは、フォーカスしたい製品をより引き立たせようとした結果の産物だ。これに対して製品の一部であるケーブル類を省略するのは、あまりフェアとは言えないだろう。製品写真を見てすっきり置けそうと思っても即決せず、実際の配線がどうなるか調べた方が無難だ。

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