前述のように、本製品はスピーカーとキーボードが別々のBluetoothデバイスとして認識されるので、ペアリングは別々に行う必要がある。電源ボタンは、スピーカー内蔵の本体部とキーボード部分を分離させた面に配置されており、ここでまず電源を入れたのち、ペアリングを実行することになる。
気を付けたいのが、本製品はマルチペアリングをサポートしないことだ。Rolly Keyboard 2は最大3台までのマルチペアリングをサポートしていたが、本製品はそうではないため、接続先が変わる度にペアリングを再度行う必要がある。しかも本製品はスピーカーとキーボード、実質2つのBluetooth機器として認識されるため、ペアリングの手間も2倍かかり、それゆえ接続先の頻繁な変更には向かない。
本製品はiOS、Android、Windowsの3つのOSに対応するのがウリの1つだが、こうした事情から、現実的には1台のデバイスと組み合わせて継続使用することを前提にした方がよい。もし、接続先を頻繁に切り替えながら使えるモバイルキーボードを探しているのなら、本製品は候補から外した方がよいだろう。
なお本製品は自重が増していることもあり、大型のタブレットをスタンドに立てかけても安定性は非常に高いのだが、スタンドの左右の間隔が8〜9センチ程度と広いため、一般的な5型クラスまでのスマートフォンだと、本体を縦向きにしてスタンドに立てることができず、横向きにセットせざるを得なくなる。使い方によっては弱点になるので、注意してほしい。
本製品のキー数は64。Rolly Keyboard 2に比べると各列にキーが1つずつ少ないのだが、主な理由は各列右端にあった「PageUp/Down」などのキーが省かれたことによるものだ。Enterキーの右側にこれらのキーが配置されているのはなじみにくかったため、このレイアウト自体は悪くないと感じる。
さて、その文字入力の使い勝手についてだが、慣れるまではかなり苦労するというのが、実際に1週間ほど使ってみた感想だ。これはキー配置などの問題ではなく、キーそのものの構造に原因がある。
というのもこの製品、パンタグラフキーを採用しており、キーストロークがそこそこ深いのはよいのだが、キーを押し込むとキートップがキーの周辺よりも深く沈むという、一般的なキーボードにはあまりない特徴がある。そのため、キーを押し込んだ状態では指先がくぼみにはまったような状態になり、次のキーに指を移動させようとするとキー周囲に指が引っ掛かるのだ。特に素早く入力しようとすると、この問題に必ず直面する。
これを回避するには、キーを押した後に指をいったん離し、キーが元の高さに戻ってから次のキーに指を移すようにすればよいのだが、そうなると1文字ずつ目視で確認しながら入力するのと大差ないスピードになってしまう。慣れないうちは、入力したい文章が頭の中にたくさんたまっているのにアウトプットが追い付かない状態に陥りがちで、かなりのストレスだ。
本製品はキーピッチが約16ミリとこの種のキーボードとしては余裕があるうえ、iOSとAndroidについてはキートップの印字と入力文字がほぼ完全に一致(deleteキーのみ実際にはBackSpaceとして機能する)していることから、使い勝手そのものは悪くない。それだけに、こうしたハードウェア部分がネックになり、入力スピードが上がりにくいのは、非常にもったいない印象だ。
本製品は、実売1万円台のRolly Keyboard 2を大きく下回る、4999円(税込)という一見リーズナブルな価格設定も魅力の1つだが、マルチペアリング非対応、ややクセのあるキータッチなど、トータルでは価格相応といった印象が強い。
スピーカー搭載という他にないプラス要因と、これらのマイナス点を比較して、どこまで許容できるかが、購入の可否の決め手となりそうだ。
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